TiroleのThe Theory of Corporate Financeは契約理論を用いてコーポレートファイナンスの諸問題を説いた極上のテキストです。本書は1,2章までは簡単なイントロダクションで、3章以降で用いられる本書のモデルの導入になっています。1章のうち多くの人の引き合いに出されるのが、1.8 "Shareholder Value or Stakeholder Society?"です(Supplemental Sectionでも論じています)。 このセクションにおける結論は、「会社が株主価値の最大化のために事業を行い、他のステークホルダーの利益は契約や流動的な労働市場を通じて保護するのが、不完全ながらも最善である」、というものです。これは、しばしば政治的意思決定の方法において民主主義が最悪でありながらも最善であるという結論に類似しています。 1.ステークホルダー主義の問題点 こ