そしてその常套言語は、中野氏もそうですが、なんら実証的でも歴史データをフォローしてもいません。彼の批判もテミンがこんなことを言ってるという彼の本のたかだか一節を(後で述べますが誤解を生むような形で)引用したものです。テミンが怒ります。なぜならテミンにとって金融政策の転換にレジーム・チェンジの核を求めることこそが『大恐慌の教訓』の核心メッセージであります。テミンは『大恐慌の教訓』以前の立場から「転換」したというのが本人含めてまわりの評価です。以前のテミンは、中野氏と同様に金融政策は不十分で、財政政策や政治の転換の方が大きいとした立場から「転換」したからです。 アメリカにおいて、金本位制離脱による平価切下げを大恐慌からの脱出手段の一つとしてテミンが挙げているのは確かだが、テミンの「レジーム転換」(本書では、レジームを"Policy Regimes"としている)は、金融政策の転換という狭い範囲で