「眠っているマルクスを久々に呼び起こそう。彼ならきっと人新世からの呼びかけにも応えてくれるはずだ (p138)」。この一文を読んで評者は、この本は要するに「マルクスの大霊言」なのだと思ってしまったのだが、あまりに手放しで絶賛するレビューばかりなのに驚いたので敢えて☆一つ。読む価値がないという意味ではないのだが,マルクスに立脚した近代資本主義批判が広く浸透せず、また実効性も持ちえていない現状の理由が本書の論の進め方に顕れてしまっているように思えるのだ。 1. まず著者は本書冒頭で「SDGsは大衆のアヘンである!」と、マルクスにならって声高に宣言したかったようだが、いきなり大きな見当違いをしている。最近、巷で皮相的な「SDGsビジネス本」や「SDGsビジネスモデル」が氾濫し、いわゆるグリーン・ウォッシュならぬ「SDGsウオッシュ」の様相を呈していて、アリバイ作りというかこうした便乗ビジネスには