前回は中国のシェアリングサービスを論じることで、制度設計が人々の行動習慣にどのような影響をもたらし得るかを論じた。本連載でも最近中国について論じる機会が増えてきたが、それほどまでに特殊なIT事情を有する中国は、やはり注目に値する。 とはいえ中国は、世界をつなげてひとつにする「世界共通のインターネット」から離脱しようという意図がみえる。またグーグル検索においてもこの「世界共通」は複雑な問題を抱えている。 そもそもインターネットは当初こそ軍事利用的な発想で生まれたが、一般的な普及にあっては世界中の人々がひとつにつながることで、対立から融和への道を示そうという思想的な側面が存在していた。この思想は現在に至り、多くの問題を抱えている。そこで今回は、インターネットが1つであることの困難やその問題について考察したい。 国内から外国へのアクセスがますます困難な中国 中国の積極的な「世界共通のインターネッ
地図を広げて、わが国の領域を眺めると、最東端の南鳥島から西へ、小笠原諸島、大東諸島、尖閣諸島などが点在しているが、これらの島々のおかげで、経済的主権のおよぶ排他的経済水域は大きく広がっている。領海と排他的経済水域を併せた面積は世界第6位である。 一体、これらの島々は、いつから、どのような背景で、わが国に編入されたのだろうか。 実は、筆者は今から40年以上前、沖縄本島の東に位置する大東諸島に滞在し、地理学のフィールドワークを行ったことがある。台風情報でおなじみの南大東島を主な研究対象とした。3カ月間、聞き取り調査を行ったが、訪ねた農家の方々の名字が「菊池さん」や「細田さん」など、沖縄姓とは異なる本土姓の方がおられるのに気づいた。沖縄県の離島になぜ本土姓が存在するのか。これらの人々は、明治後期に八丈島から2000キロメートル余りの航海を経て、南大東島に上陸した人々の子孫であった。 伊豆諸島の八
最近の欧州におけるテロの続発は、過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いが「新しい危険な段階に入った」(米ワシントン・ポスト)ことを示すものだ。しかし、実はIS壊滅後の方がずっと厄介で、恐ろしい状況になる見通しなのだ。「かつて見たことのないような大勢のテロリストがシリアからあふれ出すだろう」という警告に世界はどう対処するのか。 桁違いの拡散に 米紙などによると、この警告は7月27日、米連邦捜査局(FBI)のコミー長官によって発せられた。長官によると、米主導の有志国連合は最終的にISを壊滅することになるが、IS戦闘員のすべてを殺害、もしくは捕虜にすることはできず、多数がシリアから逃亡し、欧州に、そして米国にも舞戻って来る可能性が高い。 その結果、欧米でのテロの発生はISの壊滅の前と比べて減るどころか、増加するという最悪の状況になりかねない、という。シリアやイラクでのISの壊滅が欧米の治安の安
「絶対に名は出さないでくれ」 台湾のシラスウナギ(ウナギの稚魚、以下シラス)輸出業者は我々取材班にそう告げた。なぜ名を出すことを頑(かたく)なに拒むのか──。それは彼に「罪」の自覚があるからである。 日本人の好物であるウナギを巡って、台湾、香港、日本を舞台に壮大な「不正」が行われている。今回、取材班はその舞台である台湾、香港へと飛び、関係者らを取材した。 取材のアポイントメントを入れるのにはかなり骨が折れた。当たり前だが話すメリットなどなく、誰も話したがらないからだ。だが、様々なコネクションを使って、交渉を続けた結果、匿名を条件に複数の人物が取材を受けてくれた。 2011年12月、台湾の桃園国際空港で香港行きの航空機に搭乗予定の乗客のスーツケースから押収された2万匹のシラス(写真・TAIWAN FISHERIES AGENCY)
邦人7人が犠牲になった1日夜のダッカの飲食店襲撃テロに関連し、バングラデシュ当局は10人に上る最重要容疑者を手配したが、その中に京都の大学の教師として教鞭を取っていたバングラデシュ人が含まれていたことが判明した。これが事実とすれば、日本にも現実問題としてテロの脅威が忍び寄っていたことになり、政府、警察庁も重大な関心を寄せている。 解雇の立命館准教授か この情報は19日付の米紙ニューヨーク・タイムズが最初に報じた。その報道などによると、バングラデシュ当局は今月、ダッカの飲食店襲撃に関して、最重要容疑者10人のリストを公表したが、その中に3人の外国居住者が含まれ、うち1人は「京都の大学の経営学部の大学教授」としている。 同紙によると、この人物は「モハマド・サイフラ・オジャキ」容疑者。テロの訓練や過激派組織「イスラム国」(IS)のための新兵徴募の手助けをした容疑で手配されており、バングラデシュ国
毎月のように、新しい子育て本、教育本が書店に並ぶ。教育熱心な親、子育てに悩む親がそれだけ多いということなのだろう。教育に関してはさまざまな考え方があり、どのような考え方を選ぶかは各家庭の裁量だ。ただ、一つの考え方に固執するよりも、他種多様な手段・方法・考え方を知って選択肢を持っておきたい。正解はないが、結果はあるのが子育て。あなたは親としてどう子どもと向き合いたいだろうか。この連載では、教育関連本を出版した著者の方たちにインタビューしていく。 あなたが子どもの頃、家のリビングはどんな様子だっただろうか。『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』(すばる舎)は、そのタイトルの通り、リビングに「三種の神器」を置くことを奨励する教育本だ。インターネット全盛の今、分厚い辞書や図鑑を買いそろえる家は減りつつあるかもしれない。しかし著者である小川大介氏は、これこそが子どもの好奇
習近平が打ち出した人民解放軍30万人削減計画について、Diplomat誌のティエッツィ編集員が、その目的が軍の効率化・近代化にあると中国当局が公式に認めていること、また、陸から海空重視への転換には抵抗もあり得ることを、9月8日付同誌ウェブサイトで報告しています。 すなわち、習近平は、第二次大戦終結70周年記念の大規模軍事パレードの直前(9月3日)の演説で、人民解放軍30万人削減を発表した。習は、兵員削減を人民解放軍の「世界平和維持の高貴な使命を実行」へのコミットメントの一環と位置付けたが、軍事アナリストたちは、この動きは中国の軍事力近代化を推進する一環としての人民解放軍の再編であるとの見方で一致している。 9月3日の兵員削減の発表は、1980年代以来なされてきた削減と再編の長い歴史に沿ったものである。人民解放軍の規模は、1985年に10万人、1997年に50万人、2003年に20万人、そし
本書を一読して、これほどまでに多くの日本の技術者が中国を中心とした海外に渡っているのか、ということを知り驚いた。中国の技術水準の向上などのニュースに接する時などに関連して言及されるために、こうした日本人技術者の存在は知ってはいたが、これほど多いとは。2000人とも3000人ともあるいは5000人いるかもしれないが、本当は何人ぐらいいるのかおそらく真相は誰にもわからないだろう。だがそれがどんな数字であっても、相当大きな数である。 しかも多くが日本のメーカーでばりばり働いていた仕事熱心な技術者である。そうした人たちの頭脳や技術を借りれば中国メーカーにも当然、恩恵は大きいはずである。 日本企業が時間とカネをかけて営々と築いてきた技術に追いつくために手っ取り早いのが人材を引き抜くことである。彼らに高額な報酬を支払ったとしてもペイするからこそ、中国企業は日本の人材を活用するのである。人材を買うことで
「イスラム国」に戦闘員として渡航計画を企てていたとして、10月6日に北海道大学の男子学生が警視庁公安部から事情聴取を受け、東京都杉並区の宿泊先などの家宅捜索を受けた。小誌は、この学生の渡航支援を行ったとして、同じく事情聴取と家宅捜索を受けた中田考氏に9月24日の段階で接触していた。9月に現地を訪れたばかりの中田氏が語る「イスラム国」とは――。 Wedge編集部(以下、――)なぜ「イスラム国」へ行ったのか。 中田 考(なかた・こう)氏 カリフメディアミクス代表取締役社長、同志社大学高等研究教育機構客員教授、イスラム学者(c)Takashi Suga 中田考氏(以下、中田)9月上旬に「イスラム国」に招かれ、シリア国内の彼らが支配する地域へ行ってきた。「(編集部注:8月にシリアでイスラム国に拘束されたとみられる)湯川遥菜氏の裁判をしたい。公正に裁きたいと思うのだが、英語も通じず、話にならないので
島田紳助氏は10数年前、テレビでの発言を右翼に咎められ、テレビ局に街宣車を集中される攻撃を受けた。耳をふさいで知らぬ振りはできない。大音量の糾弾は現に局の業務を妨げている。営業妨害として警察に取締りを要請すれば、右翼の神経をさらに逆なでするようで、怖い。 紳助氏はこのとき、芸能界から引退しようかとまで思い悩んだという。たまたま元ボクシング世界チャンピオン、渡辺二郎氏(07年に恐喝未遂で起訴、上告中)が山口組系の有力組織である山健組系(当時)極心連合会の橋本弘文会長を紹介し、橋本会長が右翼と交渉して攻撃は止んだ。これにより紳助氏は橋本会長に深く感謝し、以後、心服するようになった――。 相場1000万円以上の礼金が 無料だった理由 紳助氏と橋本会長を結んだきっかけは右翼の攻撃だったようだが、現在、右翼の大半は暴力団系である。暴力団が右翼を別働隊として使うことはもちろん可能だし、現に暴力団がこう
大学の教員をしていると、企業に関する様々な話、噂を従業員、就職サービス提供企業関係者などから聞くことがある。総選挙前にブラック企業として週刊誌に取り上げられた「ワタミ」についての話が聞こえてくることもあった。そのワタミが再生可能エネルギーに進出している。昨年の秋田での風力発電事業に続き最近では北海道のメガソーラー(大規模太陽光発電)に参画した。 企業として環境問題を考え再生可能エネルギーに取り組むのは悪いことではない。しかし、再生可能エネルギーと何の関係もない居酒屋を中核事業とする企業が風力発電、太陽光発電に乗り出すのは何故だろうか。イメージをよくするためだろうか。ただ、必ずしもそうは見ていない人もいる。「ブラックソーラー」と揶揄する人もいるようだ。 「ワタミ」のホームページでは、地球温暖化問題に取り組むために二酸化炭素を08年比20年度50%削減(売上当たり)することを目標としており、そ
若手農家二人による「ぼくたちの農業」対談の第2回。「農業を守れ!」という世間の声に、彼らが抱く違和感とは――。 *第1回はこちら 競争がおもしろい農家を育てる 久松:「ボランティア農家」がタダみたいな値段で投げ売りして、専業農家がやっていけなくなるようなことって、ほかの業種では起きないですよね。オムレツをタダでふるまう洋食屋がほかの店を潰す、そんなことはない。それは、洋食屋は家賃を払っているからですよね。農地は固定資産税や相続税で優遇されているから、それができてしまう。そこは問題だと思っています。 小川さんも街の中で農業をやっているから賛同してもらえるかもしれないけど、ぼくは農地法撤廃論者なんです。いきなり撤廃とはいかないだろうけど、徐々に適正な競争環境ができてくれば、ボランティアの農家は退出していくはずなんです。 みんなが小川さんみたいなちゃんとした農業をやっているならば、国策としての生
イオンが女性管理職の比率を、2020年をめどに50%に引き上げる方針を表明した。他にも女性管理職を増やそうとしている企業は多い。少子高齢化で人口が減っていくのだから、女性を活用しなければならないのは当然だ。 国際的に遅れる 日本の女性の昇進 管理職に占める女性の比率を国際的に見ると、図に示すように、日本は10.6%で主要国の30%から40%に比べて極端に低い。日本より低いのは韓国の10.1%くらいである。しかも、図にあるように韓国の比率が急激に伸びていることを考えると、すぐに抜かれそうである。 なぜ女性管理職比率が低いのか。よく言われるのは、女性の勤続年数が短いことと学歴が相対的に低いことである。学歴で昇進を決めて良いと考えている訳ではないが、確かに、女性の4年制大学進学率は、1999年(現在、卒業して10年たっている)で29.4%。男性の46.5%に比べて17.1%も差があった(現在でも
前回はアノニマスの活動と、サイバー空間における国際法制定が如何に困難であるかを論じた(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2802を参照)。前回の連載で重要な点は、サイバー空間の諸技術が、人をアノニマスの活動に駆り立てるということであった。技術や制度があればこそ、人はそれまで自分が思ってもみなかった活動が実行可能であることに気づく。このことは逆にいえば、我々は自分が思うほどには自らの主体性や意志に敏感ではない、ということだ。 そこで今回は、サイバー空間において人をある意志や選択へ導く技術を、権力の問題を通して考察する。 実行までにコストがかかる“古典的”な権力 部下に命令して書類を作成させる。生徒に命令して宿題を課す。これら日常的な出来事として権力が上司から部下、先生から生徒へ行使されていることがわかる。アメリカの政治学者ロバート・A・ダール(1915~)
2011年の世界の水産物総生産量が、FAO(国連食糧農業機関)から発表されました(図1)(世界水産物生産量推移のグラフも参照)。数量は、前年比6%増の1億7,800万トンとなり、10年連続で過去最高を更新しています。漁業生産は4年ぶりに前年を上回り、養殖は1961年以来成長を続けています。 これが成長を続けている世界の水産業の実態です。国別では、漁業・養殖共に中国が首位。日本は、漁業で前年の5位から7位へ、養殖で9位から12位に順位を落とし、水揚げ量は年々減少しています。そこには、残念ながら1972年から1988年までの実に17年間もの間世界最大の漁獲量を誇っていた姿はありません。 また、農林水産省によると2012年の漁業就業者数(岩手、宮城、福島の3県を除く)は、17万3,660人で、前年より4,210人(2.4%)減少しています。特に60歳以上の漁業者が占める割合は、前年より0.9%増
「中国の男性は家事もしてくれるし、女性に優しい人が多いから、中国の女性はそれが当たり前だと思っているのです。文化を超えての結婚生活は、大変なことです」。 私の友人で、日本国内にある中国系企業に勤める中国人女性は、日本人の夫のために母国の女性たちならするはずのない料理を毎日のようにしている。 中国では、女性が強く、意見もはっきり述べる。しかも、共働き世帯ばかりだから、家庭内の仕事は男女平等。料理についていえば、むしろ夫がするのが当たり前だ。男性人口が女性人口を上回るため、中国では男性の生涯未婚率が高い。女性にふられないようにと、一生懸命に料理や洗濯や掃除などをやる男性が多いそうだ。 それでも、私の友人は日本の文化にあわせてわざわざやっている。「家事については夫に自分でするようになんとか仕向けているのですが」とも答えるが。 国際結婚による夫婦生活が長い知人からは、「理解できないところを無理にわ
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