決して忘れることのできない2つの山岳事故を背負った男がいる。プロトレイルランナーの奥宮俊祐(39)だ。 2017年11月18日、奥宮が大会実行委員長を務め、埼玉県秩父・奥武蔵エリアで行われたトレイルランニングレース「FunTrails100k」で、滑落事故が起きた。制限時間33時間以内に105kmの山道を走るこの大会で、スタートから4時間後の朝9時過ぎ、約15km付近でその事故は発生した。 滑落場所は、秩父・大持山(1291m)にさしかかる直線的でなだらかな下りの稜線。事故の目撃者は「事故現場までの道のりをゆっくりと進んでいた50代の男性選手が立ち止まった。前屈みになっていた体勢から立ち上がろうとしたとき、後方へ尻餅をつくように倒れ、男性の背面にあった斜面に転落した」と証言した。 大会本部が110番通報し、県警のヘリコプターが出動して選手を救出したが、残念ながら搬送先の病院で死亡が確認され