私は、必ずしも少子化対策を行う必要があるとは思わない。しかし、少子化を解決する必要があるということであれば、そのために最もふさわしい政策を考えるべきだろう。少子化の最大の原因が、育児に関する機会費用が高すぎるということであれば、その機会費用を低下させる政策に焦点をあてるべきである。その際、次世代育成支援として、育児のために企業に有給休暇や配置転換を義務付けるという案が、少子化対策として提案されることがある。しかし、仮に育児のためにそのような要求をする労働者が女性に偏っていたとするならば、企業の労働需要は女性から男性にシフトしてしまうことになる。この政策は、意図とは逆に女性の活躍の場を減らしてしまう可能性がある。そのため企業に偏った規制を行うことは、必ずしもうまく少子化対策として機能しない。さまざまな提案の中で、八代尚宏氏が『週刊東洋経済』(05.9.3)で提唱する育児保険は検討に値する。育