2022年9月8日、英女王エリザベス2世が96歳で崩御した。その70年という在位期間は、英国史のなかでも世界史のなかでも異例の長さだ。その間には、15人もの首相が入れ替わり、政治的な混乱や経済危機があり、王室内のごたごたも発生した。そんななかでも女王は忍耐強く、その人柄や功績によって、英国のみならず世界で尊敬を集め続けていたことは、各報道からも明らかだ。 ところが、女王の在位期間を振り返る上で、決して明るいばかりではない、「一つの避けては通れない話題がある」と米紙「ワシントン・ポスト」は指摘する。エリザベス2世が即位した70年前、まだ英国は世界に広がる帝国であった。だが崩御した現在、かつての「大英帝国」は見る影もない。そしてその70年間には、新国王チャールズ3世をはじめ、今後の英王室が向き合わなければならない、抑圧の歴史もある。 「帝国」の終わりの始まり 「英国史における偉大な女性君主であ
英エリザベス女王の訃報を受け、その長い在位期間における功績をたたえ、死を悼む報道があふれている。だがその一方で、かつて大英帝国に侵略され植民地にされた国の人々からは複雑な声も聞かれる。 米紙「ワシントン・ポスト」のコラムニストで、ナイジェリアとガーナにルーツをもつカレン・アティアは、「私たちはエリザベス女王とイギリス帝国の醜い真実について話さなければならない」と題し、イギリスの植民地主義のもとアフリカや南アジアで何が行われたか、今こそ歴史に向き合うべきだと論じた。 もちろん、アフリカにも女王をはじめロイヤルファミリーに好意を持っている人たちはいる。だがそれでも「多くの人々にとって、女王はイギリスが犯した歴史的犯罪の加害者であり続けるのだ」とアティアは書く。 「略奪とレイプと虐殺の帝国の君主」 女王の死後すぐに最も辛らつな言葉を投げかけたのは、米カーネギーメロン大学教授でナイジェリア人のウジ
<スマホの登場は、固定電話、音楽再生プレーヤー、ビデオカメラにとどまらず、多くのエレクトロニクス製品をジャンルごと消滅させた> 今年も9月となり、すっかり恒例となったアップル社による新型iPhoneの発表会が行われました。2007年に初期型が発表されてから15年が経過し、ほぼ毎年のようにハードのアップデートを繰り返した結果、今回発表されたモデルは「iPhone 14」です。 このスマホというカテゴリですが、仮に1970~90年代の人が、現代にタイムスリップして来たら、「極めて高性能な小さな箱型のエレクトロニクス製品が、全世界で大量に売れている」のを見て、それが「日本製ではない」ことに驚くに違いありません。と言いますか、アメリカで設計されて、台湾企業の管理のもと中国で最終的に組立てられた、などと言われても瞬時には信じないでしょう。当時は、最終消費者向けのエレクトロニクス製品といえば、多くのジ
反転攻勢でハルキウ州のロシア軍を追い立てるウクライナ軍の戦車(9月12日) Armed Forces of Ukraine/ REUTERS <ウクライナ軍の攻撃から全速力で逃げるロシア戦車から、次々と乗員が転がり出て、最後は無人になった戦車が自走して衝突するという驚くべきヒット動画。他にもウクライナ軍や政府の公式アカウントがリベンジ動画を量産中> <無人になったロシア戦車の悲劇> Amazing video of a Russian T-72 fleeing Ukrainian troops, discarding men and then crashing into a tree. pic.twitter.com/0hqrQtJ09S — Cᴀʟɪʙʀᴇ Oʙsᴄᴜʀᴀ (@CalibreObscura) September 9, 2022
今年11月の米中間選挙を控えて大量の政治広告が放映され、せっかくのテレビを見る楽しみを奪われた――。マリア・ジョーンズさんは、そんな思いを持つ米国人の1人だ。写真はジョーンズさんがテレビで見て記録した政治広告のリスト。アリゾナ州ピオリアで8月撮影。ジョーンズさん提供(2022年 ロイター) 今年11月の米中間選挙を控えて大量の政治広告が放映され、せっかくのテレビを見る楽しみを奪われた――。マリア・ジョーンズさん(53)は、そんな思いを持つ米国人の1人だ。 自身が数えたところ、ここ数カ月間で流れた政治広告は、多い日で1日当たり25本だったという。ジョーンズさんが暮らすのは、アリゾナ州フェニックス郊外にあり州最大の人口を抱えるマリコパ郡。 同州は州レベルや国政レベルの選挙でしばしば激戦が展開される。今度の上院議員と州知事の選挙も伯仲した争いで、連邦議会の勢力図だけでなく米国民主主義の将来を左右
本稿は、今次のウクライナ戦争が古典的な戦争概念と大きく離れた非在来型の闘争……「新しい戦争」と言えるのかどうかを検討するものである。結論から言えば、ウクライナ戦争には非在来的要素が多々含まれるものの、戦場における大規模な暴力行使が闘争の趨勢を決するという点で、この戦争は古典的な戦争と見ることができる。 この点を明らかにするため、本稿では、①テクノロジー、②非軍事手段、③戦争様態の3つの側面からこの戦争のありようを検討した。そのうえで、この戦争はなぜ古典的なのか、日本の安全保障が汲み取るべき教訓は何か、といった点についても論じた。 テクノロジーが変える戦場:UAVを一例として ウクライナ戦争には、2020年代初頭時点において想定しうる軍事テクノロジーがほとんど投入されている、と言ってよいだろう。 代表例は無人航空機(UAV)、いわゆるドローンである。中でも小型の戦術UAVはロシア・ウクライナ
スティーヴ・ローゼンバーグ・ロシア編集長、モスクワ 1週間のニュースを伝えるロシア国営テレビの看板番組は通常、政府の成果を強調する。 だが、この前の日曜日(11日)の放送は、珍しく告白で始まった。 「(ウクライナでの)特別作戦の前線では、これまでで最も厳しい1週間になった」。司会者のドミトリー・キセレフ氏が、沈痛な面持ちで述べた。 「特にハルキウの戦線では、数で勝る敵軍の猛攻を受け、(ロシア)部隊はそれまで解放していた町から撤退を余儀なくされた」 「解放」とは「制圧」のことだ。ロシアは数カ月前にそれらの地域を占拠したが、ウクライナ軍が電光石火の反攻を実施。ロシア軍は、ウクライナ北東部でかなりの支配地を失った。 しかし、ロシアの国営メディアは平静を装っている。ハルキウ州で起きたことを、公式には「撤退」と呼んでいない。 政府発行紙ロシースカヤ・ガゼータの最新号は、「ロシア部隊がバラクリヤ、クプ
The ruins of a hospital in the Donetsk region on Sept. 12. Photographer: JUAN BARRETO/AFP ウクライナ・ハルキウ州の要衝イジュームからロシア軍が撤退を急いでいた10日、モスクワでは花火が上がった。もちろん敗走を祝ったのではない。「モスクワの日」の祝賀イベントの一部だったのだが、これほどプーチン政権が敗北を全く予期していなかったことを示す例もないだろう。日常通りを装いつつ、侵略戦争を遂行しようという試みは、最初から失敗する運命にあった。 ウクライナ軍は数日のうちに、ロシア軍をハルキウ州から撤退させた。奪還した面積で言えば約2500平方キロメートルで、ロシア軍が先週までに掌握した国土の12万5000平方キロメートルに比べるとまだ小さく、大きな勝利には映らないかもしれない。それでもウクライナと西側諸国が喜ぶの
","naka5":"<!-- BFF501 PC記事下(中⑤企画)パーツ=1541 -->","naka6":"<!-- BFF486 PC記事下(中⑥デジ編)パーツ=8826 --><div class=\"naka6-banner\" style=\"margin:0 0 15px;\">\n<p style=\"display:block;margin:0 auto;\"><a href=\"https://www.asahi.com/special/bucha/?iref=kiji_bottom_banner\" style=\"display:block;\"><img src=\"https://www.asahicom.jp/special/bucha/images/banner/bucha-tokusyubanner_660x100.jpg\" alt=\"ウクライナ侵攻
公開初日に記録的な視聴者数を記録し、批評家にも絶賛されているシリーズ、『ザ・オールド・マン~元CIAの葛藤』……タイトルの通り、“オールド・マン(老いた男)”となった元スパイが葛藤するドラマだ。好評を受けて、早くもシーズン2の製作が決定したという。 とにかくこれは、“渋い”……! 渋みを楽しむという意味では、これを超えるドラマ作品は近年なかなか見つけ難いのではないか。何しろ、70代となったジェフ・ブリッジス、70代中盤のジョン・リスゴーという、年配の名優二人が前面に出る作品なのだ。ここでは、そんな“渋い”『ザ・オールド・マン~元CIAの葛藤』の魅力を深掘りしてみたい。 本シリーズは、強力な俳優陣以外にも話題となる理由がある。最初の2つのエピソードを監督しているのは、近年の『スパイダーマン』映画シリーズが大きな成功を収め、サスペンス『COP CAR/コップ・カー』(2015年)を撮りあげてい
やまや・たけし/1976年東京都生まれ。システムエンジニアを経て2002年よりライターとして活動。中国をはじめとするアジア諸国のIT事情を専門とし、幅広いメディアで執筆活動を行っている。執筆の他、講演や調査なども行う。著書に『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立』(星海社新書)など。 DOL特別レポート 内外の政治や経済、産業、社会問題に及ぶ幅広いテーマを斬新な視点で分析する、取材レポートおよび識者・専門家による特別寄稿。 バックナンバー一覧 「便利蜂」という中国の新興コンビニをご存じだろうか。顧客対応と従業員管理の両面でITをフル活用しているのが特徴だ。顧客対応では、商品のQRコードを読み込むだけで決済が完了するなど先進的な仕組みを採用している。だが従業員管理においては、ミスをした店員に対してAIが「減給処分」を下すなど非情な対応を行っているようだ。これに反発した関係者
Russians Secretly Selling Crimea Homes as Counteroffensive Looms: Ukraine <ウクライナ軍の反転攻勢を見て次はクリミアの番だと恐れたロシア人は、慌てて家族を逃そうとしている> ロシアが併合した南部クリミア半島を、ウクライナ軍がまもなく反攻の標的にするという報道を受け、ロシア系住民は逃げ出しはじめている。 ウクライナ南部から黒海に突き出たクリミア半島は、ウクライナとの長年の紛争のあげく、2014年にロシアに併合された。ウクライナはそれ以来、併合を強く非難しており、ほとんどの国が今も同地域をウクライナ領と認めている。 ウクライナ軍は9月8日、北東部ハルキウの重要戦略拠点からロシア軍を追い出し、領土奪還に成功した。ウクライナ軍指導者たちはさらにクリミア半島奪還を目指し、同様の作戦を遂行するとほのめかしている。 ウクライナ国防
“なんで死ななあかんかったかなぁ” 今年7月、滋賀県近江八幡市で大雨の日に亡くなった女性の遺族は訴えました。 女性が亡くなったのは、線路の下をくぐる「アンダーパス」と呼ばれる地下歩道。ふだんは便利なアンダーパスですが、大雨の際には車だけでなく、歩行者にとっても極めて危険な場所になることがわかりました。 (大津放送局記者 光成壮 稲田慎太郎) 私たちが知らせを受けたのは、今年7月19日。 近江八幡市のJR安土駅の近くの歩道で女性が亡くなっているのが見つかったという、警察発表でした。 目立った外傷や着衣の乱れはなく、犯罪による被害ではなさそうです。 その後、わかった死因は「溺死」。女性は、線路をくぐる地下歩道、アンダーパスで溺れたというのです。 その日、近畿地方は大気の状態が非常に不安定となり、各地で大雨でした。 現場の近江八幡市には非常に激しい雨が降り、記録的短時間大雨情報も発表。 これまで
タイムスタンプ(クリックで該当時間にジャンプします) 第1部開始 00:05:18 第2部開始 01:21:37 ■ 【稲垣諭さんからのメッセージ】 詩人の茨木のり子さんの詩作品の中に次のようなものがあります。 《問い(人類)》 人類は もうどうしようもない老いぼれでしょうか それとも まだとびきりの若さでしょうか 誰にも 答えられそうにない 問い ものすべて始まりがあれば終わりがある わたしたちは いまいったいどのあたり? 颯颯(さつさつ)の 初夏(はつなつ)の風よ というものです。僕はこの詩がとても好きで、最後の「初夏の風」が吹くように、人類の絶滅(終わり)を思考する可能性があるのではないか、そんなきっかけを与えてくれた作品でもあります。しかもそこに「やさしさ」が滲むように。 このことは、戸谷さんがお書きになっているテクノロジーや官僚制の「スマートさ」と人類の起源がどのようなものかとい
(医学書院・2200円) 老い「あるべき自分」からの解放 著者は特別養護老人ホーム「よりあいの森」「在宅所よりあい」などの統括所長。長年にわたって、お年寄りのケアに携わってきた。 村瀨が大切にしているのは、チューニングすることやピントが合うことである。お年寄りは時に家にたどり着くことができず、住み慣れたはずの町を徘徊(はいかい)する。なぜ道が分からなくなるかというと、新しい建物や道ができることで、体の記憶と風景のピントが合わなくなるからだ。逆に、昔から見慣れた看板などが目に入ると、体感によって家までの道が開示され、帰ることができる。大切なのは、実感とのチューニングなのだ。 これは介護の現場の人間関係にも言える。排せつや入浴などは、介助者とお年寄りが体を委ねあうことで成立する。互いが互いの体を通じて、一つの行為を成立させていく。その繰り返しによって二人の体が慣れ始め、同調する。この時、「ふた
パンデミックの終息視野に コロナ死者、初期以来の低水準―WHO 2022年09月15日04時42分 テドロス世界保健機関(WHO)事務局長=12日、テルアビブ(AFP時事) 【ベルリン時事】世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は14日の記者会見で、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の「終息が視野に入った」との認識を示した。世界で先週に報告された死者数は、流行初期の2020年3月以来の低水準になったという。 【グラフ】新型コロナウイルス 世界各国の状況 WHOの統計によると、9月5~11日の世界の死者数は約1万1000人。世界的に7~8月よりも死者数が減少傾向にある。ピークだった昨年1月には、1週間で10万人超が死亡した。 テドロス氏は「パンデミックを終わらせるのに、われわれはかつてないほど良い位置にいる。まだ到達してはいないが、終息が視野に入った」と語った。 一方で、「走
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