「今月をどう乗り切ろう」。地方の国立大でポスドク(任期付き博士研究員)をする男性(30)は不安に駆られていた。2020年に博士号を取得。所属大学の教員が主導する研究班で働いてきたが報酬は月7万円ほど。別の研究プロジェクトでは数カ月間を無給で過ごした。苦しい月はクレジットカードで支出を先送りし親に援助を求めた。今年、常勤研究員になったが、任期は1年弱で収入は月約20万円。奨学金約400万円の返済
バブル崩壊後の採用が少ない時期に、辛酸をなめた就職氷河期世代。彼らはそれぞれの業界、職場で長く苦闘を続けてきたが、制度改正や合理化によって労働環境の劣化は一層進んでいる。疲弊する現場の今を追った。 × × 遅刻しないよう、朝は早めの5時に起き、自宅のある埼玉県東部から2時間以上かけて神奈川県西部にある私立大学に向かう。1時間半のフランス語の授業を2コマ終えると、休む間もなく千葉県北部の私立大学へ。電車の中で昼食のおにぎりを詰め込み、2時間後にはまた教壇に立つ。文学や芸術の授業を午後6時に終え、帰宅する頃にはくたくただ。「毎日違う大学に行っています。一つの職場で集中したいですが、仕事があるだけましですね」。約15年間、非常勤講師を続けてきた川本昌平さん(50歳、仮名)は淡々と日々のスケジュールを教えてくれた。現在は六つの大学で講師を掛け持ちする。細いレンズのめがねにアーガイル柄のセータ
去年の9月7日早朝、移転を間近に控えた九州大学の研究室から火の手が上がった。焼け跡からガソリンの携行缶やライターとともに見つかったのは男性の遺体。自殺したとみられている。46歳だった男性は九州大学の博士課程に在籍していたが、8年前にその籍を失っていた。それでも他の大学などで非常勤講師を続けながら研究室に居座り続けており、仕事が無くなった後は引越しのアルバイトなどで食いつないでいたという。 明日はわが身。他人事じゃないー。亡くなった男性の境遇と自分を重ねずにはいられないと話すのが、九州大学専門研究員の脇崇晴さん、40歳。独身だ。専門は哲学で、3年前に博士号を取得したが、研究職に就くことができず、アルバイト生活を続けている。「思い詰めそうになったら、“落ち着け”って自分に言い聞かせて」。
8年近く放っておいたブログが、今でも残っていたことに自分でも驚いていますが、久しぶりに記事を書きます。 朝日新聞(大阪本社版)2019年4月18日朝刊に「若手で受賞 でも20超す大学不採用――研究者は追い込まれていった」という記事が掲載されました。一面と、さらに続きが33面にも出る大きな記事です。執筆者は小宮山亮磨記者です。じつはそれ以前にネット版にも掲載されていました(多少違いがあるようですが)。概要は以下で読めます。 https://www.asahi.com/articles/ASM461CLKM45ULBJ01M.html 私の名前が出るところから、何人かの方から私宛にも問い合わせをいただきましたので、私の意見を表明するほうがよいと考えました。小宮山記者には事前に本稿を送り、誠意あるご返事をいただきました。私としては、決してケンカを売るつもりではなく、あくまでも私の意見を述べ、議論
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