はじめに みなさんにひとつお聞きしたいことがあります。もしあなたが医師ではなくなったとしても、あなたはおもしろい人間ですか。あるいは、自分の人生を楽しんで生きていますか。 自信を持って「そうだ」と言える人には、僕は伝えるべき言葉がありません。どうか、この国の医療を支える立派な医療人になっていただきたいと、心から思います。僕が何かの役に立てるとしたら、この質問に胸を痛めた人、あるいは、感情的に反発した人のどちらかです。 これまで、僕は自分がいずれ医師になることを鼻にかけて生きていました。今にして思えば、医学部に入学したこと以外に、誇れることがそう多くなかったからかも知れません。医師以外の人生は負け組だと、ごく最近まで、わりと真剣に、そう信じていました。 そして今、僕は編集者、ライターとして生活をしています。 メディアは移り変わりの大きな世界ですから、これまでのような人生の保証はありません。む