まず献本いただいた著者にお詫びもかねて。 本来、夏の甲子園が終わる前に紹介予定だったこの一冊。感想が遅れに遅れて申し訳ない。 だけど、この本ならばいつ読まれても、その価値が損なわれることはないと断言できる。 『ひゃくはち』 は、他のどの作品にも似ていない、すばらしい野球小説だ。 この小説には、三つの裏切りがある。 一つめは、主人公が補欠であること。 経験者とはいえ一般入試で神奈川の強豪校の野球部に入った主人公は、最初は練習にもついていけず、試合ではエラーもするし、サインも間違える。 センバツ甲子園前のメンバー発表では、他のエリート部員と違って当落線上にいる。 平凡な主人公がさまざまな苦難を乗り越え驚異的な成長を遂げる、という「奇跡」はこの本では起こらない。 二つめは、野球部員が「普通」の高校生であること。 タバコは吸うし酒も飲む。たまの休日には合コンもする。セックスもする。 高校球児がそん