第4回は、あのカントを取り上げる。カントと聞けば恐らく大多数の方は、哲学界の王者というイメージを思い浮かべるだろう。 実際、新たな解釈を踏まえたイマヌエル・カント(1724-1804)の新訳は今なお刊行されており、現在でもアクチュアルな哲学者であり続けている巨大な存在だ。 しかしどんな人でも初めから大成していた訳はなく、実績・人脈・声望をかちえるまでには苦労を重ねているもの。それは哲学界のチャンピオン、カントとて例外ではない。 ドイツの地方都市ケーニヒスブルク(現ロシア領カリーニングラード)の一哲学研究者に過ぎなかった彼は、46歳でどうにか同地の大学の哲学教授の職位を得て、さらにその10年以上後に刊行した主著『純粋理性批判』でようやく世の中を驚倒させるに至るのである。 それまでの彼は、『天界の一般的自然史と理論』や『物理的単子論』といった自然科学や物理についての論文を多く著している。そして