集団免疫の歴史からは、新型コロナウイルスに打ち勝つためには有効なワクチンが必要である理由が見えてくる。上は1796年5月14日、8歳の少年ジェームズ・フィップスに初めて天然痘の予防接種を行うエドワード・ジェンナー(1749〜1823年)。油絵。(PAINTING BY ERNES BOARD, DEA PICTURE LIBRARY, GETTY IMAGES) エドワード・ジェンナーやルイ・パスツールら、疫病と闘った初期の研究者たちは、十分な数の人々がワクチンを接種すれば感染症を根絶できるのではないかと、うすうす感じていた。 20世紀初頭、この考え方に着目した獣医師たちが「集団免疫(herd immunity、群れの免疫の意)」という言葉を作った。1920年代にはマウスを使った研究を通して集団免疫の考え方は注目を集め、人口のごく一部が免疫を獲得すれば、感染症の流行を防げるという楽観的な見