イスラム教武装組織がイラク北部の大半を制圧するまで、原油価格が今後とも安定的に推移するかどうかのカギは概ねイラクが握っていた。拡大を続ける同国の輸出が(大量の低コスト原油を供給し)、他国の油田の枯渇がもたらす供給減少を補う、と期待されていたからだ。国際エネルギー機関(IEA)は、イラクの原油生産が現在の日量250万バレルから2015年には同440万バレルに、2020年までには600万バレル近くに増加すると見積っている。他の予測はもっと楽観的だ。 だが1980年以降、戦争や制裁、国内情勢の混乱が続き、OPEC(石油輸出国機構)第2位の産油国であるイラクは、その潜在力を発揮することができずにきた。イラク北部からの輸出を再開する可能性――パイプラインは3月に襲撃され使用困難に陥っている――や、南部地域への投資や近代化が軌道に乗る可能性は、日に日に薄れていくようだ。 6月18日に激しい戦闘が起り、