数々の著名な服飾デザイナーが新作を発表するパリコレクション、通称「パリコレ」。毎年3月と10月の年2回パリで開かれ、その年の流行を左右するため世界のコレクションでも参加ブランド数が多く、注目度も高い。そのパリコレに1999年から新しい生地を次々と披露して著名デザイナーが注目する日本の中小企業がある。広島県福山市に拠点を置く美希刺繍工芸である。 有名ブランドのロゴも刺しゅう 山陽新幹線の福山駅からJR福塩線で約20分の万能倉(まなぐら)駅。かつて繊維の街として栄えた面影を残す紡績工場の広大な敷地に隣接した単線の駅から、徒歩数分のところに美希刺繍工芸の本社がある。 従業員は15人、売上高は2006年9月期で1億1000万円。平屋の事務所の奥にある工場に通されると、所狭しと並べられた工業用の刺しゅう機のダダダッという大きな音が鳴り響く。刺しゅう機が縫っているのは、誰もが知っている海外有名ブランド