★★★★★ 「決められない政治」が問題になる日本で、意思決定は企業にとっても切実な問題だ。正しい答はわかっていることも多いが、実際に正しい決定ができるかどうかは別問題である。本書はこの分野の第一人者が意思決定をやさしく解説した入門書で、「おもしろ行動経済学」みたいな本を何冊も読むより、本書をちゃんと読んだほうがよい。 「人間は合理的じゃないから経済学は非現実的だ」という類の批判はいやというほど聞かされるが、それに代わる現実的な理論を提示した人はほとんどいない。その数少ない例外がカーネマンのプロスペクト理論だが、本書はこうした新しい意思決定理論のユニークな入門書である。数式はほとんどなく、身近な意思決定を題材にした例題がたくさんあって読みやすいが、テーマは著者の研究書と同じく、メカニカルな合理主義に代わる現実的な意思決定理論を構築しようということだ。 その出発点は、プロスペクト理論で実験的に