その声は、ある朝突然、ロックンロールに乗ってやってきた。初夏。春先からダイエットを兼ねて続けていた自転車通勤を暑さで挫折した僕は、毎朝、江ノ電に揺られていた。小さな路線なので読書にはむかない。だから音楽、iPod、インナーイヤーヘッドフォンにひとりごと。 僕はひとりごとが多い。電車のなかで、インナーイヤーヘッドフォン、稲妻のようにつぶやき、それから、カウル型、と添えてみたりもする。プレイヤーの電源が切れていてもインナーイヤーヘッドフォン。インナーイの接触面が、とか、ヘッドフォの調整が、なんて、呟きながら抜き差しをしていると、この人サウンドに一家言あるにちがいない、と尊敬されつつ、耳掃除ができるから。そんな朝にロックンロールに乗ってその声は僕の背中のほうからやってきた。 最初にカシャカシャ、ぼんやりとした音。耳を澄ますとドラムとギターが徐々に鮮明になって、エイトビート。ボリュームはとても小さ