波音は、たいていは控えめに心を和らげるリズムを奏で、夫人が子どもたちとすわっていると、「守ってあげるよ、支えてあげるよ」と自然の歌う古い子守唄のようにも響くのだが、また別の時、たとえば夫人が何かの仕事からふとわれにかえった時などは、そんな優しい調子ではなく、激しく太鼓を打ち鳴らすように生命の律動を容赦なく刻みつけ、この島もやがては崩れ海に没し去ることを教えるとともに、あれこれ仕事に追われるうちに彼女の人生も虹のように消え去ることを、あらためて思い起こさせもするのだった。 ーーヴァージニア・ウルフ『灯台へ』 私はここにいた 「灯台」という存在が好きだ。実際に灯台に足を運んだことはほとんどない。おそらく私は建造物としての灯台ではなく、灯台が持つ独特の雰囲気、象徴としての灯台に惹かれているのだろう。「私はここにいる」「そちらはどうか」と光を放つストイックさ、孤独の距離感が、星や人の営みに似ている