クエンティン・タランティーノの映画では、よく「演じる」ということが重要なテーマとなる。デビュー作「レザボア・ドッグス」の囮捜査官しかり、「パルプ・フィクション」のギャングに八百長試合を持ちかけられて裏切るボクサーしかり、「ジャッキー・ブラウン」の主要な登場人物間で展開されるコンゲームしかり、「イングロリアス・バスターズ」のナチの饗宴に潜入するためにドイツ人のふりをするユダヤ人しかり。それぞれのキャラクターは、その「演技」の嘘がバレることが生死の問題に繋がりかねない、文字通り「一世一代の名演」を求められる。 このテーマは、タランティーノの新作「ジャンゴ 繋がれざる者」にも共通している。 時は南北戦争勃発の二年前。奴隷の身から救われ、ふとしたことから賞金稼ぎの手助けをすることになった黒人の男:ジャンゴ(ジェイミー・フォックス)。ジャンゴはドイツ人にして賞金稼ぎの元歯医者:シュルツ(クリストフ・