※拙稿「パブリシティ権に関する一考察(1) ―その客体について―」(東京情報大学研究論集5巻2号所収)の続編(完結)である。章番号および注番号は,前編からの引き続きである。 5 パブリシティ権の侵害態様 パブリシティ権の侵害に関し,前章までではいかなる情報がパブリシティ権の客体となりうるかを検討してきたが,他方いかなる行為がパブリシティ権侵害たりえるかについても併せて検討されねばなるまい。そこでまず,第1章であげたパブリシティ権に関する従来の裁判例(マーク・レスター事件およびおニャン子クラブ事件)において,いかなる行為がパブリシティ権侵害(不法行為)と判断されたかを具体的に見ていこう。 マーク・レスター事件判決は,第1章に引用したように,著名人がその氏名・肖像につき有する経済的利益が「当然に不法行為法によって保護されるべき」であると述べたうえで,「原告マーク・レスターは……本件映画への出演