石川直宏ほど、バンディエラという言葉が似合う選手はJリーグを見渡してもそうはいない。存在そのものがクラブの宝なのだ。 たくさんの人たちから、思いを託される男である。 FC東京に関わる人々にとって、石川直宏という選手は特別な存在だ。サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で14年からFC東京担当を務めてきて、今年で3年目。直接、日々の石川の姿を目にする中で、彼が愛される理由がわかってきた。 誰にでも分け隔てなく接する好感。雨の日も風の日も、練習場にかけつけたサポーターに対してファンサービスを行う実直さ。そして視線を合わせる誰に対しても、爽やかな笑顔を見せるのである。 それでいて、一度ピッチに立てば思い切り疾走し、相手ゴールに向かって行く迫力。柔和な素顔と、気持ちが前面に出るプレー。この最高のマッチングこそが、石川が愛される理由なのである。 石川の頭によぎった、引退の二文字。 その石川が昨年8月、3