タグ

ブックマーク / yuiami.hatenablog.com (16)

  • 一日のどこかで、プロジェクトのことを考える - まとまり日記

    博士論文を抱えている人に話したアドバイスの中で、ちょっと反応がよかったものがあるのでメモ。 博士論文を書くのにはたいがい時間がかかる。一年から二年かかるというのはほとんど短い方の部類だ。そして博士論文を書くという段階に至った人は、「教える」ということが仕事が入ってくるので、たいてい忙しい。つまり博士論文を書く人は「時間のかかるプロジェクトを、忙しい中で遂行していく」というとても難しいことをこなさざるを得ないことになる。 そうした中で気をつけないといけないことのひとつは、博士論文とは直接関係ない仕事のせいで忙しくしている内に、プロジェクトの詳細を忘れてしまうことだ。わたしの場合でもいろんな仕事に何ヶ月もかまけていて、いざ博士論文のプロジェクトに割ける時間ができたときでも「えっと、今までは何をしていたっけ?」という状態になることが多かった。そうすると以前の状態にアタマが戻るまで何日もかかる。こ

    一日のどこかで、プロジェクトのことを考える - まとまり日記
  • Why We Cooperate - まとまり日記

    Why We Cooperate (Boston Review Books) 作者: Michael Tomasello,Carol Dweck,Joan Silk,Brian Skyrms,Elizabeth S. Spelke,Deborah Chasman出版社/メーカー: The MIT Press発売日: 2009/08/28メディア: ハードカバー購入: 4人 クリック: 75回この商品を含むブログ (7件) を見る を読んだ。ヒトを他の動物から分ける大きな特徴として個体同士の協力に着目するのは一つのトレンドだが*1、それに関する研究を簡潔に議論する。マイケル・トマセロが100ページあまり最近の研究を自らのものを中心に紹介し、シルクやスカームズといったこの分野の他の重鎮がそれにコメントをするという構成になっている。 協力の進化 トマセロが執筆した第一章では、ヒトが幼児期から個

    Why We Cooperate - まとまり日記
  • 創造的な人の特徴 - まとまり日記

    授業の関係でPaul Thagardの Hot Thought: Mechanisms and Applications of Emotional Cognition (A Bradford Book) 作者: Paul Thagard出版社/メーカー: A Bradford Book発売日: 2008/08/29メディア: ペーパーバック クリック: 9回この商品を含むブログを見るを読んでいたら、創造的な人の特徴を書いた表が出てきた。これはJeff ShragerとThagardが2001年にバージニア大学でで行われたWorkshop on Cognitive Studies of Science and Technologyで会員に創造的な人の特徴("7 habits of highly creative people")についてアンケートを採ったものをまとめたものだ。 1. 新しい脈

    創造的な人の特徴 - まとまり日記
  • 知能にかんする本四冊 - まとまり日記

    国際的な雑誌に論文が載るなら契約して魔法少女になってもよいと思っている今日この頃ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか*1。 さて最近知能にかんするを何冊か読んだので、簡単にメモします。 IQってホントは何なんだ? 作者: 村上宣寛出版社/メーカー: 日経BP社発売日: 2007/08/09メディア: 単行購入: 6人 クリック: 105回この商品を含むブログ (18件) を見る 知能にかんする入門書。砕けた語り口。ただし「いままでの心理学は知能研究に関してはゴミ」といっているところもあり、人によっては傲慢にうつるかもしれない。内容は、知能とは何かという定義の問題から、知能テストの歴史、知能はどのくらい遺伝するのかという問題、知能は年を取るごとに低下するのか、知能の予測力など知能に関して多くの人が関心があるトピックを概ね扱っている。記述にはきちんと文献注を付しており、研究による裏付け

    知能にかんする本四冊 - まとまり日記
  • 科学哲学には何が期待されていて何ができていないのか - まとまり日記

    『ダーウィンと進化論の哲学 (科学哲学の展開)』について評論家の山形浩生さんから厳しい書評をいただいた(リンク)。 すでに他の方が指摘されている通り、あの書評には個々の論文について指摘された「問題点」について事実誤認や的はずれのところがある。他の論文についてその著者のかたに譲るとして、わたしの論文について言うと、やまがたさんの一つのポイントは議論が哲学的ではないということだ。 わたしにとってこれは意外な点だった。というのは論文の謝辞で示唆したとおり、あのプロジェクトは元々留学中のゼミで発表したものが素材になっており、それがああいった形で論文になるには仲間の哲学者からの「おまえこのプロジェクト面白いよ」という励ましが必要だったからである。また、前のエントリで紹介したように「哲学=別の手段による科学の継続」、つまり哲学は「自然についてのわれわれの知識の増大」という目標を科学と共有しているという

    科学哲学には何が期待されていて何ができていないのか - まとまり日記
  • 別の手段をもってする科学の継続 - まとまり日記

    UCLのHasok ChangがThe Philosophers' Magazineのインタビューで、科学哲学の意義について語っている。 Inventing Temperature: Measurement and Scientific Progress (Oxford Studies in the Philosophy of Science) 作者: Hasok Chang出版社/メーカー: Oxford University Press発売日: 2007/09/28メディア: ペーパーバック クリック: 3回この商品を含むブログ (1件) を見る チャンは60年代のポパーとクーンとの間で生じた、科学における批判の意義についての論争を導入にして自分の見解を述べる。この論争でポパーは、「批判はあらゆる理性的思考の神髄である」と主張したのに対して、クーンは「批判的言説を放棄することこそが非科

    別の手段をもってする科学の継続 - まとまり日記
  • ぼくはこんな本を読んできた(ここ一ヶ月で) - まとまり日記

    引っ越し後日語のを読む機会が増えたので、ここ最近読んだの感想を三〜十行で。 脳はあり合わせの材料から生まれた―それでもヒトの「アタマ」がうまく機能するわけ 作者: ゲアリーマーカス,鍛原多惠子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2009/01/01メディア: 単行購入: 7人 クリック: 72回この商品を含むブログ (25件) を見る 認知心理学における二重過程論に基づいた心の働きに関する啓蒙書。これによれば、ヒトの心は二つのプロセスがいわば「接ぎ木」されてできたシステムである。一方の反射型のプロセスは他の動物と共通するような祖先型のシステムで、感情やわれわれがさまざまな偏見やバイアスに影響されるとき働いているとされるシステム。もう一方の熟慮型のシステムはヒトの進化の中で独自に発展したシステムで、バイアスにとらわれずに問題への解決策を熟考するときに働くシステム。たとえば外国人につ

    ぼくはこんな本を読んできた(ここ一ヶ月で) - まとまり日記
  • 棄権しても世の中は変えられる - まとまり日記

    選挙がちかくなると、「棄権していては、世の中は変わらない」とか「棄権は現状肯定にすぎない」という意見がよく聞かれる。これは間違っていると思う。 というのは投票率(棄権率)はマスコミの関心事であり、政府も投票率を向上させようとするインセンティブをもっているからだ。例えば期日前投票という制度ができた背後には、投票率を増やしたいという政府の意図があるわけで、いわばこの制度は過去の選挙で棄権した人々によってできたといってもよい。だから、いまの選挙では投票がしにくく、期日前投票制度の拡充を求めるなら、棄権することは(それが十分集まれば)世の中を変える力をもつ。 また「棄権は現状肯定にすぎない」という意見もおかしい。この意見は二つの仕方で解釈されるが、そのどちらも間違っている。一つは「棄権は、権力側から全くの現状肯定と解される」という読み方で、もう一つは「棄権はあなたが現状をまったく肯定していることを

    棄権しても世の中は変えられる - まとまり日記
  • プライアーの哲学論文の書き方(4) - まとまり日記

    何かオリンピックが終わったあとのほうが寒いような気がします。 さて、プライアーのガイドラインの翻訳もこれで終わりです。 哲学の論文とは何をするものなのか 論文を書くときの三つの段階 初期段階[ここまで→こちら] ドラフトを書く[前半・後半] 書き直すこと、そして書き直し続けること[きょうはここから] 細かい点[この翻訳では省略] どのように採点されるか[ここまで] 3. 書き直すこと、書き直し続けること さてあなたは、論文の完全なドラフトを書きおわった。一日か二日、そのドラフトを脇に置こう。 そのあとでドラフトに戻って読み直すのだ。以下のようなことを、一つ一つの文について自分に問いかけよう。 「この文は当に意味が通っているか?」「これはまったくわかりにくいな!」「これは大げさに聞こえるな」「これってどういう意味?」「この二つの文をつなぐのはなに?」「これってたんなる繰り返しじゃない?」な

    プライアーの哲学論文の書き方(4) - まとまり日記
  • プライアーの哲学論文の書き方(3) - まとまり日記

    ドラフトを書く、後半です。一回目はこちら。二回目はこちら。[追記: そして第四回(最終回)]。 なお、前に英語での書きもののためのエッセイを紹介したエントリがありますので、そちらもよければ見てください。 学者のための文章読 英語論文の書き方 哲学の論文とは何をするものなのか 論文を書くときの三つの段階 初期段階 ドラフトを書く[きょうはここの後半] 書き直すこと、そして書き直し続けること 細かい点[この翻訳では省略] どのように採点されるか 他人の考えを提示して評価する もし哲学者Xの考えを議論する予定なら、彼の議論あるいは中心的な前提を把握することからはじめること。このための助けとして哲学の論文をどうやって読むかについてのわたしのコツを参照しなさい。 そして自分自身に尋ねるのだ。「Xの議論はよいものだろうか? 彼の前提はクリアに書かれているだろうか? そうした前提には信憑性があるか? 

    プライアーの哲学論文の書き方(3) - まとまり日記
  • プライアーの哲学論文の書き方(2) - まとまり日記

    知の祭典からの逃避二回目です(第一回目はこちら)。[追記:三回目はこちら。そして第四回(最終回)。]。今回はドラフトの書き方の前半。目次はこちら: 哲学の論文とは何をするものなのか 論文を書くときの三つの段階 初期段階 ドラフトを書く[きょうはこの項の前半] 書き直すこと、そして書き直し続けること 細かい点[この翻訳では省略] どのように採点されるか 2. ドラフトを書く 自分が行う議論について考え、論文のアウトラインを書き終えたなら、腰を据えて完全なドラフトを作成する準備ができたことになる。 文章は単純に 文学的な優美さを目指してはいけない。単純で直接的な文章を書かないといけない。一文や段落は短く。なじみのある単語をつかうように。単純な言葉でいけるところで大げさな言葉を使うなら、あなたは笑いものだ。こうした[哲学の]問題は十分に深く難しいもので、もったいぶったあるいは冗長なことばでもって

    プライアーの哲学論文の書き方(2) - まとまり日記
  • プライアーの哲学論文の書き方(1) - まとまり日記

    わたしの住んでいるところではおとついからスポーツの祭典が始まっているわけだが、わたしの周りではその前から知の祭典、つまり採点の祭典が執り行われている。 この知の祭典には、スポーツの祭典とは異なり、祭典の参加者がだんだん飽きてくるという特徴があり、祭典から逃げるものが多数あらわれる。かくいうわたしも祭典から逃げてきたものであり、ここではこの逃避を利用して、こちらで哲学のペーパーの書き方を説明するときに必ずといってよいほど参照される、ジム・プライアーのガイドラインを翻訳したい。 長いので、何回かに分けていきます(なお、すでにこちらに部分訳があります)。気分がおもむくままに(フリーダムに)訳していきますが、誤訳などありましたら、コメント欄などで指摘してください。 [追記:二回目はこちら。三回目はこちら。そして第四回(最終回)。 ] 哲学論文を書くためのガイドライン ------- ジム・プライア

    プライアーの哲学論文の書き方(1) - まとまり日記
  • 事業仕分けメモ - まとまり日記

    各所で話題の事業仕分けメモ。 事業仕分けの全体像を見るには、事業仕分けを考え出した構想日のスライドを見るのがわかりやすい。これをみると事業仕分けは民主党政権になってからぱっと出てきたのではなく、自民党時代からやっていたことがわかる。 「行政の事業仕分け」について(pdfファイル) 以前の科学技術関係の事業仕分けの結果は33ページにある。これをみると、以前の査定でもスパコンはクロ(今のままなら不要)の判断が大勢だったが、座長判断でシロとなっていたことがわかる。そうなると、説明が不十分という意見にも妥当性がある(説明に進歩がないのでは?)。 また、自民党で事業仕分けに熱心な河野太郎議員のブログをみると、「科学技術予算を若手研究者の失業対策につかうな」という意見も、前からでていた。 日に世界のトップレベルの研究拠点を作るという触れ込みのグローバルCOEという文科省の予算があった。その名目には

    事業仕分けメモ - まとまり日記
  • 輸入学問の功罪 - まとまり日記

    輸入学問の功罪―この翻訳わかりますか? (ちくま新書) 作者: 鈴木直出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2007/01メディア: 単行購入: 1人 クリック: 51回この商品を含むブログ (51件) を見るを読んだ。 このは、カントやマルクスといったドイツ系の哲学書の翻訳が一般読者にまったく理解できないものになっていることを告発しつつ、その背景を、市場から乖離した教養主義に求めたもの。 著者は第一章で、哲学書の翻訳が一般読者にきわめて読みにくいものになっていることを、『資論』の翻訳を例にして示す。著者は、1924年に刊行された高畠素之の翻訳とそれより二十年遅れて出版された向坂逸郎の翻訳(岩波文庫)を比較し、向坂訳が一般読者にとってきわめて読みにくいものになっているのにたいし、それより二十年前に出された高畠訳のほうが読みやすさという点では上回っていることを例示する。この可読性の低さ

  • 哲学に明晰さはどうして大切か - まとまり日記

    イギリスの哲学者Nigel Warburtonが、哲学において明晰な文章を書くのがどうして大切かについて述べている。その中の一節から。 Q: あなたのウェブサイト "the Virtual Philosopher" の最上段にはジョン・サールからの引用がありますね。「明快に言えないのなら、理解していることにならない。」 明快さとはどういうことでしょうか、そしてどうしてそれが哲学で重要なのでしょうか? NW: 明快さとは、他人が自分のいっていることを理解できるように、自分の考えを表現することです。明快さは誤読を受けるリスクを最小限にします。明快さは不明瞭さと対比されます。不明瞭さがあると、あなたの考えを理解できない人が読み手の中に少数であってもでてきます。わたしは上のサールからの引用が好きです。私はロバート・ハインラインからの次の引用も好きです:「不明瞭さは無能さが逃げ込む避難所である。」 

    哲学に明晰さはどうして大切か - まとまり日記
  • 分析哲学を理解するには意外と訓練がいる - まとまり日記

    科学や不平等について書かれた某の訳文についての議論を見た(訳を批判するのが主題ではないので、訳書にはリンクしません)。そこでの指摘を見る限り、訳の問題には、予備校でやるような英文読解の問題もあったが、哲学のカルチャーや術語の重みがうまく理解されていないからくるものもあったようだ。 これは、哲学の専門家でない人が哲学のを訳すときによく出てくる問題で(上のを訳した方は心理学者のようだ)、いくつかの例が思い浮かぶ。 マイヤーので、essentialism(質主義)が「実在論」と訳されたことがあった(マイヤーは個々の種に関しては質主義に反対するが、種カテゴリーについては実在論者なので、このように訳すとマイヤーの主張を完全に取り違えてしまうおそれがある)し、 またマイヤーの別の訳書では、scientific realism(科学的実在論)が「科学的現実主義」と訳されたこともある(当該の

    分析哲学を理解するには意外と訓練がいる - まとまり日記
    optical_frog
    optical_frog 2009/06/22
    "real{-ism/-ity}" の訳し方はよく間違われるみたいですね.いや,ぼくももちろん門外漢ですけど.
  • 1