原爆の惨禍を伝える「被爆建物」をどのように守っていけばいいのか。進む老朽化、多額の費用がかかる維持や補修……。広島市の原爆ドームからほど近いベーカリーの建物も解体を視野に入れた検討を始めた。原爆投下から68年余り。後世へつなぐための模索が続いている。 「アンデルセンといえばこの建物。この雰囲気を残してほしい」。世界遺産の原爆ドームから南東に500メートルほど離れた繁華街に立つベーカリー「広島アンデルセン」。今月初め、建物内のレストランで食事をした会社員の稲田由美子さん(43)=広島市=はそう話した。解体も視野に入れた検討が始まったことに、複雑な思いを抱く人たちは少なくない。 アンデルセングループの前身のタカキベーカリーが1967年、被爆時は帝国銀行広島支店だった建物を購入。爆心地から半径5キロ圏内に現存する被爆建物として登録され、86件ある中でも原爆ドーム、平和記念公園レストハウスに次いで