今年のノーベル物理学賞の対象となったのは、宇宙の成り立ちを根本から説明する研究だった。 ヒッグス博士らの理論は、昨年7月に国際チームの実験で裏づけられ、スピード受賞となる。この研究の出発点となったのは、2008年に同賞を受賞した南部陽一郎博士(92)の理論だった。 「ビッグバン」と呼ばれる宇宙誕生の瞬間、あらゆる素粒子は質量がなく、光の速度で飛び回っていた。その直後に宇宙は急膨張して冷え、ヒッグス博士らは、素粒子を動きにくくさせる海のような「場」が生まれたと考えた。飛び回っていた素粒子は、この影響でブレーキがかかって動きづらくなった。この動きにくさが質量の正体で、ブレーキのかかり具合によって、質量の大きさが決まった。 ヒッグス博士とアングレール博士がそれぞれ独自に理論を提唱してから半世紀近い間に、現代物理学の「標準理論」で予言された17種類の素粒子のうち、クォークやレプトンと呼ばれる