雲が少なく、春とは思えない陽光が燦々と照らす中を、ひとりのフォーマルなスーツに身を包んだ妙齢の女性が通りを南から北へ向かって歩いていた。 場違いに元気な太陽をうざったそうに仰ぐと、ためた息を吐きながら懐に手を入れた。 夜型のミカには、真昼の日差しはまぶしすぎた。季節外れのサングラスをかけ、通りをさらに進んでいく。 やがて、前方にくすんだ壁の建物が見えてきた。廃ビルのように感じられるそれは、周囲のものとは異なって五階までしかない。 サングラスを右手で外しながら、ミカは迷わずそこに入った。 ぎぃ、と低い音を立てて、古ぼけた灰色をした金属製らしき扉が開く。 中はただ暗く、細い通路の奥に何があるのかは出入り口からは見通せない。 構わず、先へと進んでいく。周囲はコンクリートの壁に覆われているというのに、なぜか古い木材の匂いがする中を奥へ向かった。 突き当たりを左に折れると、そこに気配があった。 「省