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現代ファンタジーに関するoukastudioのブックマーク (32)

  • 牙 - kiva - - Chapter 6 episode: We Are Ready

    雲が少なく、春とは思えない陽光が燦々と照らす中を、ひとりのフォーマルなスーツに身を包んだ妙齢の女性が通りを南から北へ向かって歩いていた。 場違いに元気な太陽をうざったそうに仰ぐと、ためた息を吐きながら懐に手を入れた。 夜型のミカには、真昼の日差しはまぶしすぎた。季節外れのサングラスをかけ、通りをさらに進んでいく。 やがて、前方にくすんだ壁の建物が見えてきた。廃ビルのように感じられるそれは、周囲のものとは異なって五階までしかない。 サングラスを右手で外しながら、ミカは迷わずそこに入った。 ぎぃ、と低い音を立てて、古ぼけた灰色をした金属製らしき扉が開く。 中はただ暗く、細い通路の奥に何があるのかは出入り口からは見通せない。 構わず、先へと進んでいく。周囲はコンクリートの壁に覆われているというのに、なぜか古い木材の匂いがする中を奥へ向かった。 突き当たりを左に折れると、そこに気配があった。 「省

    牙 - kiva - - Chapter 6 episode: We Are Ready
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    oukastudio 2013/04/14
    雲が少なく、春とは思えない陽光が燦々と照らす中を、ひとりのフォーマルなスーツに身を包んだ妙齢の女性が通りを南から北へ向かって歩いていた。  場違いに元気な太陽をうざったそうに仰ぐと、ためた息を吐きなが
  • 牙 - kiva - - Chapter 5 episode: Guys, Start Your Engines

    昼休み、天のやわらかい光を浴びながら、二人の男がだらしなく寝そべっていた。 ほとんど微動だにせず、ただポカンと天上をゆっくりと動くわずかな雲を眺めている。ほとんど寝ているような状態だった。 そこへ歩み寄る細い影があった。その表情、足取りからは、わずかに怒りの波動が発せられている。 「やっぱりここにいた」 「めいか~」 「『めいか~』じゃない。堂々とサボって」 怒気をさらにふくらませ、上履きが床を叩く音が大きくなっていく。 「それ以上近づくと見えるぞ」 「いいよ、今日は下スパッツだし」 「最近の女は男のロマンをわかってねーな」 握りっぱなしだった携帯電話を手に、むくりと起き上がった。 「例のアレだろ? 合同合宿の――」 「そう、みんなで準備してるんだから、ちゃんと手伝わないと。もう、浩樹くんまで一緒になってサボるなんて思わなかった」 非難の目を向けられ、大柄な男は申し訳ないとばかりに頭をかい

    牙 - kiva - - Chapter 5 episode: Guys, Start Your Engines
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    oukastudio 2013/03/09
    昼休み、天のやわらかい光を浴びながら、二人の男がだらしなく寝そべっていた。  ほとんど微動だにせず、ただポカンと天上をゆっくりと動くわずかな雲を眺めている。ほとんど寝ているような状態だった。  そこへ歩
  • 牙 - kiva - - Chapter 5 episode: Come Back? 2

    「――ん?」 体をゆっくりと起こすと、前方で雛子がやわらかく微笑んでいた。 「蓮ちゃん」 「やはり、ここにいたか」 「来ると思ってたよ」 雛子も徹夜であるはずなのだが、まるでそれを感じさせないほど普段のとおりだった。 「眼鏡、外せたんだね」 「フッ、あんな物、俺にかかれば一撃だ」 「ふぅん」 「――それより、美柚の件だ」 「やっぱり気になる?」 「当たり前だ。あ、知的好奇心という意味で!」 「うん? 何?」 「いいから話せ!」 「強引だなぁ。美柚ちゃんは意外と押しが強いタイプが好きだからそれでいいんだけど」 「なんの話だ!? 美柚の奴、雛子の屋敷にいたそうだな。どういうことだ?」 「それは、私が聞きたいんだけどなぁ」 手すりにもたれかかって片足をブラブラさせている雛子に、はぐらかしている様子はなかった。 「少なくとも私たちが捜しはじめたときは、彼女は屋敷にいなかった」 「当たり前だ」 「霊

    牙 - kiva - - Chapter 5 episode: Come Back? 2
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    oukastudio 2013/03/07
    「――ん?」  体をゆっくりと起こすと、前方で雛子がやわらかく微笑んでいた。 「蓮ちゃん」 「やはり、ここにいたか」 「来ると思ってたよ」  雛子も徹夜であるはずなのだが、まるでそれを感じさせないほど普段の
  • 牙 - kiva - - Chapter 5 episode: Come Back? 1

    朝の教室は半分気怠げな不思議な活気に満ち、特有の喧噪が教室の白い壁から跳ね返ってくる。 これから楽しい一日が始まるというのに、蓮のいる一画だけは暗雲が立ちこめていた。 「〈疲(ちか)〉れた……」 「おい、蓮が『ちかれた』って言ったぞ」 隣に来ていた圭が、蓮の頭をぐしゃぐしゃとやりながら呆れた声を上げた。 しかしその圭もまた、疲れがないわけではまったくなかった。美柚の姿が消えて以来、これまで徹夜で彼女の行方を探っていた。 にもかかわらず、手がかりはゼロ。がんばってもがんばっても何も成果がないというのが一番、応える。 「レンボーイ、おつかれボーイ」 「なんとでも言え……」 今ばかりは、光の言葉にも何も感じない。それほどまでに、蓮は心身ともに疲労困憊の極致にあった。 ――全部、俺のせいだ。 後悔の念が、まず胸をよぎる。 眼鏡の影響があるとはいえ、もう少しだけ自分が注意していたら、少なくともみすみ

    牙 - kiva - - Chapter 5 episode: Come Back? 1
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    oukastudio 2013/03/06
    朝の教室は半分気怠げな不思議な活気に満ち、特有の喧噪が教室の白い壁から跳ね返ってくる。  これから楽しい一日が始まるというのに、蓮のいる一画だけは暗雲が立ちこめていた。 「〈疲(ちか)〉れた……」 「おい
  • 牙 - kiva - - Chapter 5 episode: Decision

    学校の部室棟は教室棟とはまるで雰囲気が異なり、同じく空間に存在するとは思えないことがある。 そこにある文学部の部室はいつになく賑やかで、運動部とはまったく異なる、ある種独特の活気に満ちていた。 参加率が高いことで知られる同部は、狭い部屋の中に三学年十六人が集まり、いろいろな議論を交わしたり、互いがつくった短編などを批評し合ったりしていた。 そんな中、翔子と弥生は部屋にあった文庫を片手に無駄話に花を咲かせていた。 「あーあ、美柚と蓮くんは二人してどっか行っちゃうし、私は同性とだらだらか」 「仕方ないよ、用事があるみたいだったし」 当は事情を知っていたが、今話せることではなかった。 今日は、〝DIY部〟との掛け持ちで文学部にも所属している弥生に翔子が勝手についてきたのだった。 マンガ研究会――いわゆる〝マン研〟に所属する翔子は、来こことはまるで関係ないのだが、暇なときよく入り浸っていた。

    牙 - kiva - - Chapter 5 episode: Decision
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    oukastudio 2013/03/01
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  • 牙 - kiva - - Chapter 5 episode: Light and Shadow

    少し西日が射し込むアパートの一室は、手狭ではあるが日らしくすべての機能がコンパクトにまとめられていて、嫌いではなかった。 きれいに整えられたその部屋で、〈金色(こんじき)〉の髪をした少女は薄手のシャツにショートパンツというラフな格好で、真っ白な肌を惜しげもなくさらしていた。 取り込んだ洗濯物をしまい終わったところで、背後にふと人の気配を感じた。 「あ、エレナ」 振り返ると、そこにはフリルのたくさんついたかわいらしい服をまとった妹がいた。 だが、どこかいつもとは様子が異なる。表情がなく、常に肌身離さず持っているクマのぬいぐるみを下に落としていた。 やがて右目が蒼く、左目が紅く輝いた。 周囲がすうっと薄暗くなり、いつの間にか窓の外の景色さえ消えていた。 《――指示したことはどうなった?》 エレナの声音が変わると同時に、アイーシャからも表情が消えた。 《貴様らを遊ばせるためにそこへ派遣したので

    牙 - kiva - - Chapter 5 episode: Light and Shadow
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    oukastudio 2013/02/28
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  • 牙 - kiva - - Chapter 5 episode: Safe House 5

    煙のようなものが晴れると、そこには自身の前面に魔法陣を展開した甲一がいた。 「甲一くん……?」 だが、少し様子がおかしい。 前方に掲げた両腕が肩口まで、青白い氷にすっかり覆われていた。 「こいつ……やばいですよ……」 顔をしかめ、その場に膝をついた。 「炎系の術じゃなかったみたいだね」 「見た目に騙されるほうが悪い」 「蓮くんだって気がつかなかったんでしょ」 「うるさい」 余計なことを言う雛子を黙らせ、敵に注意を戻す。 すでに五砲と思われる霊気の塊を部屋中に拡散させ、次の攻撃の準備を終えていた。 《これでお前たちを――何ッ!?》 「?」 相手の言動がおかしいだけでなく、いきなり付近の霊気が消え失せた。 まだそこにはいるようだが、動く気配はない。 《――ふん、どうもここには鼠が集まりやすいらしい》 「なんだと?」 《遊んでる場合ではなくなった。早めにけりを着ける》 「!」 相手が高さのあるこ

    牙 - kiva - - Chapter 5 episode: Safe House 5
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    oukastudio 2013/02/27
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  • 牙 - kiva - - Chapter 5 episode: Safe House 4

    それは雛子だけでなく、美柚たちも聞き慣れたものだった。 「あ、〈八房(やつふさ)〉」 見れば、庭園の黒い敷石の上で、真っ白な秋田犬が吠えている。 その目は敵意を強め、虚空を厳しく睨みつけている。 「この犬、まだ生きて――誰だ!?」 蓮が鋭く声を発すると、突然、周囲を暗闇が覆っていった。 あっという間に室内まで景色が消え、互いの姿以外、何も見えなくなる。 「ちっ」 舌打ちしつつ、蓮は急ぎ剣袋から刀を取り出した。相変わらず、鞘からは抜けそうにないが。 伝わってくる霊気の波動は、まぎれもなく刺すような敵意を含んでいた。 場にいる全員が身構え、周囲に緊張が走る。 実体は目に見えないが、霊気で近くに何かが来たことだけはわかる。 「――攻撃するぞ」 「待って、洋太! こういうときは、うかつに動かないほうがいい」 めいの言葉は正しかった。 互いの姿はなんとか認識できるものの、周りは一点の光さえない暗幕に

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    oukastudio 2013/02/22
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  • 牙 - kiva - - Chapter 5 episode: Safe House 3

    服についた汚れを払っている蓮は放っておいて、一同は今度こそ玄関から上にあがった。 「ああ、みんな。〝彼女〟についてって。私はあとから行くから」 「彼女って……人魂?」 「うん」 卒倒しそうになった美柚をめいが支え、空中をゆらゆらと揺れる人魂こと『はるひ』さんは、廊下を先へと進んでいった。 ぞろぞろと一同がそれに従う。その最後尾についた美柚は、後ろからぶつかってきた蓮を報復で蹴飛ばした。 まるで大名屋敷のような廊下をどんどんと奥へ進むと、やがて真っ白な障子戸で囲まれた居間に通された。 机さえないそこに皆が車座になっても、最初のうち誰も口を開こうとしなかった。場の空気が悪いのは、明らかに不機嫌な顔でいる蓮と洋太のせいであった。 「うん?」 ふと視線を感じ美柚が庭のほうを振り返ると、〈唐傘(からかさ)〉に一つ目のついた〝何か〟が、きれいな障子に半身を隠してじーっとこちらを見つめていた。 「見られ

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    oukastudio 2013/02/21
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  • 牙 - kiva - - Chapter 5 episode: Safe House 2

    「あー、来た来た」 笑顔になった雛子の視線の先には、えんじ色の制服をまとった四人が内門をくぐるところだった。 しかし、薄茶色の髪をした男だけが、なぜかじたばたともがいている。 圭が首を傾げた。 「なんであいつ、結界で引っかかってんだ?」 「ふんっ、日頃の行いが悪いんだ」 『お前が言うな』という台詞とともに頭を小突かれた蓮であったが、反省の色はまるでない。 一同が見つめる中、〝魔法少女〟の術によって結界に穴を空け、ようやくこちらへ近づいてきた。 ポニーテイルのセーラー服姿をした女の子の浮かべる笑みに、圭がこころをときめかせた。 「おー、めいチャン」 「あ、駄目、圭くん」 ハグしようとする圭を手で制し、しなやかな所作でするりとよけた。 「テメエ、圭ィ……」 隣にいた洋太が激昂したことは言うまでもない。 「んだよ、〝ポチ〟には関係ねえだろ」 「ムカツクんだよ」 「それは嫉妬か? 男のやきもちは見

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    oukastudio 2013/02/19
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  • 牙 - kiva - - Chapter 5 episode: Another Edge

    「もう、洋太。早くしなよ」 「うっせえな、めい。急ぐ必要ねーだろ」 えんじ色の学生服とセーラー服をまとった二人が、やり合いながら街中の歩道を進んでいく。 その後ろを、やけに長身の男とやけに巨乳の女が付き従う。 「ヒナ先輩に怒られるよ」 「あっ、そ、それはマズイ……! 急ぐぞ、おめえら!」 薄茶色をした短めの髪を逆立て、耳にカフスをつけた〝いかにも〟な風貌の洋太が、焦った様子で周囲に声をかけた。 裏腹に、少し呆れた顔の女子生徒がため息混じりに言った。 「今だったらギリギリ間に合うよ。めいが急ぎすぎなんだよ」 「カナの時間感覚は、いつもプラス二〇分だから」 「えー、何ソレ」 めいの背後にいる佳奈が、唇をとがらせた。 「つか、おめえのそのカッコ、なんとかなんねーのか」 「えー、なんで?」 佳奈は、長い豊かな髪が波打ち、出るところは出たスタイル抜群の〝いい女〟だ。 スカートの丈がやけに短いのはとも

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    oukastudio 2013/02/17
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  • 牙 - kiva - - Chapter 5 episode: Revival

    春だというのに過ぎゆく風は冷たく、救いを求める内面の泉を徐々に凍らせていく。 「俺のこころは、冬に逆戻り――」 校舎屋上の手すりにもたれかかった〝変態〟こと華院 蓮は、半泣きになりながらブツブツと独り言をつぶやいていた。 「寒くて、寒くて、寒くて。もう、誰も信じられない――」 あまりに痛々しく、見ていられなくなった他の生徒たちは、ひとり、ふたりと姿を消していった。 陽気のいい日の昼休みだというのに、校舎の屋上は閑散としていた。それがさらに寂寥感を助長する。 「俺は風になりたい。風のように自由に、なんのしがらみもなく――」 誰もかかわり合いになりたくないほど自分の世界に完全に入ってしまった蓮に、あえて近づく影があった。 「何、ポエミーになってんだよ、蓮」 「空はこんなに青いのに、俺のこころはネイビーブルー――」 「重傷だな……」 幼なじみ――腐れ縁――の圭ですら引いてしまうほど、今の蓮は〔飛

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    oukastudio 2013/02/11
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  • 牙 - kiva - - Chapter 4 episode: Fluctuation

    いつもは静寂に包まれたリビングが、今日は常になく慌ただしい空気に包まれていた。 それというのも、ロミオが苛立たしげにスプーンでカップを叩き、ミカが分厚く古めかしいをひっきりなしにめくっているせいでもあった。 「麗奈が、またへまをやらかしたらしいね」 「原因も詳細もまだわからない。だが、定時連絡が途絶えたのは確かだ」 「霊力の感知は?」 と、スーツ姿の省。 「できない。おそらく場所は例の学園タウンだろうが、あそこは全体が結界に包まれている。しかも、ご丁寧に校舎ごと部屋ごとに個別に術がかけてあるところもある。外からでは無理だ」 「僕が行ってこようか?」 「駄目だ、ロミオ。状況がよくわかっていない段階でへたに動くと、我々まで不測の事態に陥りかねない。今は待て」 「だから、僕が様子を見てくるって言ってるんだよ。どっちにしろ、学校に行かなきゃいけないし」 「そう思うんだったら好きにしろ。お前の操霊

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    oukastudio 2013/02/09
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  • 牙 - kiva - - Chapter 4 episode: Slender Fencer 4

    蓮は、居住まいを正して女に注意を戻した。 「失せろ、女。今は見逃してやったが、次はないと思え」 『何を偉そうに』と返したいところだったが、最前の一連のことを経験した今、声は出なかった。 そこで、麗奈は作戦を変えることにした。 いつの間にか、例の薬の入った瓶は相手の男の足元に転がっている。 「――――」 無詠唱のまま術式を組み上げる。 そして、相手に悟られないように発動させた。 瓶が浮かび、音もなくこちらへ向かってくる。 「!?」 あわてたのは蓮だった。 知らぬ間に肝心の瓶を離してしまい、あまつさえ今、目の前で女のほうへ飛んでいくではないか。 獲物を軽くキャッチした麗奈は、迷うことなく倉庫の出入り口へ向かった。 「ま、待て、この女……!」 急ぎ追いかけようとするものの、壊れた棚の脚につまずき、盛大に音を立てて転んだ。 しかも、別の棚が倒れ込んできて、ダンボールの山の中に埋もれてしまった。 も

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    oukastudio 2013/02/07
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  • 牙 - kiva - - Chapter 4 episode: Slender Fencer 3

    相手が術を使うことを想定しておくべきだった。今さら後悔しても遅いが。 足を取られて動けないところへ、無数の鉄片が迫ってきた。 それらは直前で止まり、空中でゆっくりと回転している。 「鏡の世界でしばらく眠っていなさい」 「くっ……!」 ――こいつ、強い。 どういう鍛え方をしたものか、戦い慣れしている。 てっきり激昂してがむしゃらに攻めてくるものと思っていたのだが、用意周到に術を展開してみせた。 「…………」 現状、抵抗のしようがない。体はずぶずぶと沈み込んでいき、もはや肩までしか見えない。 「さあ、瓶を返してもらいましょうか」 勝ちを確信した女が、横柄な態度で歩み寄ってくる。 「それ以上近づくな!」 「まだ抵抗する気?」 「違う、俺の頭の位置を考えろ」 「頭……?」 もはや水面にのみ込まれようとしている。 その低い位置にある目の先には―― はっとした少女は、スカートを押さえて飛びのいた。 「

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    oukastudio 2013/02/06
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  • 牙 - kiva - - Chapter 4 episode: Slender Fencer 2

    予測される衝撃と痛み。 しかし、それは一向に訪れなかった。 「…………?」 ガードのために掲げた腕をゆっくりと下ろすと、すべての鉄片が直前で止まっていた。 「動かないで」 余裕を持った女の声が、真ん前から聞こえてくる。 この状況では、抗うべくもなかった。 「ちっ……!」 「相手の武器の特徴を見極めないまま突っ込むなんて、あんたばか?」 「勉強は苦手だ」 「あ、ごめん……」 敵に気をつかわれて、余計に蓮はしゅんとなった。 「……お前、ここで何をしている。その液体をどうするつもりだ?」 「なんだっていいでしょ。私が答えなきゃいけない理由はない」 「だいたい、なんで他の学校の生徒がここにいる?」 「だから――」 「答えろ」 「あんた、自分の立場わかってる……?」 一方的な物言いに呆れてしまう。 霊器であるはずの鉄片が、じり、とわずかに動いた。 「やりたければやれ。どうせお前にはできないだろうが」

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    oukastudio 2013/02/05
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  • 牙 - kiva - - Chapter 4 episode: Slender Fencer 1

    「ここか」 長い旅路の末にようやくたどり着いた約束の地。 蓮は額の汗を無雑作にぬぐって、両開きの戸を見つめた。 なんだかんだで、恐ろしく時間がかかってしまった。もう次の授業が始まっている頃合いだろうが、そんなこと構いやしなかった。 気分転換に少し遠回りしただけ。そう、そういうことだ。 痛々しいほどに現実を否定する蓮は、少し呼吸を整えてから戸に手をかけた。 ――うん? ほんのわずかな違和感。 ――よく考えたら、なぜ鍵が開いている? 少しだけ戸を引いてみると、難なく動いた。鍵がかかっていた形跡はまるでない。 それだけではなかった。内部から明らかに気配を感じる。 「…………」 わずかに空いた隙間から、中をうかがう。 初め、何もいないかのように思われた。しかし、しばらくじっと様子を見ていると、倉庫の隅に影を見つけた。 ――女、か。 シルエットからして女性のようだ。暗がりの中、ひっきりなしに箱やら棚

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    oukastudio 2013/02/04
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  • 牙 - kiva - - Chapter 4 episode: My Hope

    「道に迷っちゃった……」 少し癖のある黒髪の少女は、広すぎる校内でさまよい歩いていた。 黒のセーラー服というシンプルな制服を身にまとった彼女は、まったく方向感覚が掴めないらしく、同じところで右往左往していた。 人に道を尋ねようにも、今はもう授業中なのか、それとも場所が悪いのか、周囲に人の姿はない。 途方に暮れて立ち止まったとき、ふと不自然な気配を感じた。 否、これは明確な霊気。 ――下へ向かってる? 急速に動くそれは、自分の下方をどんどん移動しているようだった。 ――地下なのかな? 階下へ向かいたいのだが、もう一度周囲を見回しても標識や案内図のような物はなかった。 ――急がないと。 もたもたしている暇はない。ここに〝彼女〟が再び来ていることはわかっているのだ。 急がなければ、また間に合わなくなってしまう。 焦った少女は余計に動き回り、余計に目的の場所から離れていく。方向音痴な人間にありがち

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  • 牙 - kiva - - Chapter 4 episode: Dangerous Classroom 2

    喧噪は、廊下でも変わりがなかった。あちらこちらで生徒がグループをつくり、無駄話に花を咲かせている。 ――ふんっ、暇人どもめ。 あからさまな嘲りを含んだ視線で周囲を見回してから、蓮は歩きだそうとした。 その行く手に、巨大な影が立ちはだかった。 「待て、華院 蓮」 「待たん」 「待てと言っている」 長い腕が伸びてきて、蓮の首根っこを見事に掴んだ。その途端、哀れな子狐は両腕をだらんとさせ、なすすべなく立ち往生した。 「なんだ、夏目 戒。俺は、貴様と違って忙しい」 「教師を貴様と呼ぶな。俺だって忙しい。だから、今すぐ地下の倉庫へ行って〝B-1-1-6〟と書かれた筒を持ってくるんだ」 「なんで俺がそんなことを。断る」 「堂々と拒絶するな。行かないと後悔するぞ」 「俺は、そんな言葉とは無縁だ」 「そうか」 「そうだ」 「そうかそうか」 「そうだ」 なぜかあっさりと蓮を解放した。 さっさと立ち去ろうとす

    牙 - kiva - - Chapter 4 episode: Dangerous Classroom 2
  • 牙 - kiva - - Chapter 4 episode: Dangerous Classroom 1

    休み時間の教室はひたすらにやかましく、あちらこちらで無意味ともいえる会話がひっきりなしに交わされていた。 「レンレーン……麻生と遊ぼう……」 「ひとりで遊べ」 「あ、そう」 「…………」 今日はもう帰ろうとサボる言い訳を考えていた蓮に、いつものように光がねちっこくまとわりついていた。 「絡みつく刃……影が……陰る……」 「何を言ってる」 と返したところで、はっとした。 ――また〝予言〟か? こいつの言葉は九九%意味がないが、ときおり謎めいたことを口にする。しかも、それが後に起こることと奇妙に符合するものだから、無視したいのに無視できない。 「光、お前――」 当は何を、と言いかけた蓮は途中で声を詰まらせた。 「きゃっ」 背中から軽い衝撃とかわいらしい声。 振り返ると、金髪の美少女がそこにいた。 アイーシャの胸の感触を確かに得たことはおくびにも出さず、蓮は彼女のほうに向き直った。 「お前か」

    牙 - kiva - - Chapter 4 episode: Dangerous Classroom 1