以下は預言者パウルの半生の数場面につづく物語である。
岩波新書から『ぼんやりの時間』という本が出ていると聞きました。親近感のわくタイトルなので、読んでみたいと思っています。 でも「ぼんやりの時間」って、そもそもどんな時間なのでしょうね。おそらく以下のような時間なのではないかと私は考えました。 『私家版・ぼんやりの時間』 ぼんやりの朝は早い。意外と早い。 ぼんやり(以下BY)は朝の五時半にはぱちりと目が覚めて、ひとりでに自分の部屋から起き出してくる。起き出して何をしているのかというと、リビングのテレビでぼんやりと、早朝から再放送している『一休さん』を見るのだった。ぼんやりするためなら早起きも辞さない、それがBYだ。『一休さん』を観るBYは(桔梗屋の弥生さんと新右衛門さんが出てくる回はたのしいな)と思った。 早起きしているにもかかわらず、BYはいつも遅刻ぎりぎりに登校する。自分でも不思議だった。 歴史の授業は遣唐使のところだった。けれどもBYは授
両親がお見合いなら、親戚もあらかたお見合いでした。そうですわたしは、らららお見合いの子。由緒正しきお見合い一族の末裔。 子どもの頃に「なんでお父さんと結婚したの?」と母にたずねたところ「お見合いしたときに、まあこの人ならいいかなって思って」という、非常に率直でかざり気のない回答が返ってきた。その前には東大出の高給取りとお見合いをしたことがあったそうだけど、二言目には「お母さん」とのたまうマザコンぽい人だったので、速攻断わったという。どこのどなた様かは存じませんが、マザコンぽくていらしてくださり大変助かりました。おかげで私はこの世に生を受けることができ、中田カフェのまねをして家で卵かけごはんを食べることもできるのです。 そんなわけで、お見合い結婚がストリートのリアル、恋愛結婚はどこか遠くの世界の物語、それは、夕方再放送の東京ラブストーリーでリカとカンチが見た夢……と思っていたものだから、クラ
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こんにちは。ブログ「空中キャンプ」を書いている伊藤聡ともうします。2004年1月にこのブログをスタートさせていらい6年、とてもうれしいことに、まとまったかたちで文章を発表する機会をいただきました。来年の1月19日(予定)に、ソフトバンク新書から、わたしの初めての著書、『生きる技術は名作に学べ』が発売になります。 出版のきっかけは、ソフトバンク クリエイティブのメールマガジン「週刊ビジスタニュース」に何度か寄稿したことでした。そこでつながりのできたソフトバンクの上林編集者から、今回の話をいただき、企画について打ちあわせを重ねながら、過去の世界の名作を自由に読み解くというこの本の執筆がスタートしました。十冊の海外小説を取り上げ、いっけん古めかしく見えるそれらの名作から、生きる技術を発見していこうという趣旨です。 『赤と黒』を書いたのはスタンダールだと知っていても、じっさいに『赤と黒』を読んだこ
きたる12月6日(日)に開催される第9回文学フリマに、文芸同人誌『UMA-SHIKA』第2号で参戦しています。 『UMA-SHIKA』第1号はマンガで参加したので、最初は編集長から「今回もマンガでどうですか」というオッファーをいただいたのですが、「せっかくの文学フリマなので、ここはいっちょう小説を書きたい!」とわがままを言って書かせてもらいました。感謝! 私が書いた小説のタイトルは『ヨアンナと教授』です。いま話題の森ガールが登場する小説……と言ったら、同人のみなさんに嘘つき呼ばわりされましたが、嘘ではありません! ふとしたきっかけから夢を見ずにはいられなくなってしまった人を書きました。 『UMA-SHIKA』第2号には、8人がそれぞれ短編を寄せていますが、どれもかなり個性的でジャンルもバラエティに富んでます。私もゲラで全部読みましたが、すごく楽しいですよ! 小説家の小説がおもしろいのは当た
某日 『あの日、欲望の大地で』を観る。すごい邦題だなあ。でもこれはけっこう好きな映画でした。コーマックマッカーシーの小説『すべての美しい馬』や『越境』を読んでも思ったけど、アメリカ人はメキシコ人に自分たちが失った純粋さを見てるんだろか。メキシコ人から何か反論はあるんだろうか。 某日 マリオ・バルガス・リョサの『フリアとシナリオライター』を読む。これはかなり愉快で楽しい小説で、通勤電車で読んでてニヤニヤしてしまいました。あと、リョサ先生は一度その写真を見ると、あまりのむんむんぶりに「リョサ様」と呼んでお慕いしてはばからなくなってしまいます(今はこの写真よりも多少おじいちゃんになってるケド)。リョサ様、来年はノーベル文学賞取れるとイイネ。 フリアとシナリオライター (文学の冒険シリーズ)posted with amazlet at 09.10.24マリオ バルガス=リョサ 国書刊行会 売り上げ
第六夜 「森へ行ってはいけませんよ。森にはカツマカズヨが出ますからね」と、母が言う。自分はもう大きいので、カツマカズヨなんて少しも怖くないが、黙って聞いている。「お父さまが無事お戻りになるまでに、何かあったら困りますからね」母はそう付け加えた。 窓からは遠くに森が見える。今日のような冷え切った日の晩、森の方からときおり「ウィン…ウィン…」と不気味な音が響いてくる。村の人間に言わせれば、それは森の奥深くでカツマカズヨが啼いているからなのである。けれども、カツマカズヨの姿を見た者はまだ誰もいなかった。 月に一度、伯父が訪ねてくる。今日がその日だった。 女子供だけで家を守るのは大変でしょう、あなたはよくやってくれていますよ。伯父はそう母に声を掛け、ミカンや米などが入ったダンボール箱を玄関先に置く。自分にはきまって五百円の小遣いをくれる。 「伯父さまにお小遣いをいただいてよかったわね。それで遊んで
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