「食」は人にとってなくてはならないものですが、「食」の科学は、科学の世界の中で必ずしも重要な学問分野として捉えられていないように感じます。 「食品学」や「栄養学」を生業にしている私でも、「物理学」や「分子生物学」の方がより“ 高尚”に見えます。おそらく多くの方がそう感じるのではないでしょうか。 また、芸術の分野でも「食」の芸術、料理の美的表現は、絵画や音楽などを中心としたこれまでの古典的な芸術界からほとんど仲間外れにされてきたのではないかと思います。 生命にとって不可欠な料理には、重要なサイエンスがたくさん潜んでいますし、料理のおいしさは、他のアート作品に負けずとも劣らない感動を呼び起こすのに、なぜこうも食は、科学や芸術の両方から軽んじられているのか? 食品科学者や芸術家ともいえる料理人への世間のリスペクトが低いのはいったいなんなのか? 「食」の研究者の一人であり、料理人にひときわ敬意を払