料亭「鈴音」での土曜の自動車メーカーの宴会は終了した。続いて4階のお客である柴田の食事会も終わろうとしている。片山は女将の良子に頼まれた通り、マーガレットの咲く庭に出て、花を切り始めた。 料亭の庭に咲くマーガレットとコスモス 片山は「鈴音」の外に出ると料亭の右側に回り庭に出た。20メートル四方の庭には白のマーガレットとピンクのコスモスが所狭しと咲き乱れている。片山は一瞬、深呼吸した。ゆっくりと庭に入ると手にしていたハサミで、マーガレットを切り始めた。 「片山ちゃん」 鶴子の声が聞こえてきた。 「そろそろ引き上げるよ。今日は直帰するから」 「お疲れさまです。自分はもう少しいます」 「女将さんから花を頼まれたのかい」 「ええ。10本ほどマーガレットを切ってきてって」 片山が目の前のマーガレットを見渡す。 「たまに。渡すんよ。お客さんに」 「そうですか」 「珍しいやろ。こんな場所で花が咲いてるん