秋草俊一郎著 『アメリカのナボコフ 塗りかえられた自画像』 ニューヨーク・タイムズに百年前のこの週にナボコフが革命後のロシアを後に亡命生活に入ったという記事、Vladimir Nabokov, Literary Refugeeがあった。というわけで、ということではないが、ナボコフについてのこの本を。 熱心なファンでなくとも、文学にある程度の関心がある人ならナボコフの大まかな略歴を知っていることだろう。そしてそれは、略歴としては確かにその通りではあるのだろうが、ではそれに付随するパブリックイメージについてはどうだろうか。 ナボコフは鱗翅目研究者でもあり(「蝶のコレクター」といった趣味の領域に留まるものではない)、半ズボン姿で捕虫網を手にしているナボコフの写真を見たことがある人は多いだろう。もちろんナボコフは現実にも捕虫網を手に蝶の採取に勤しんだが、同時に広く流布したその写真にはある意図もこ