広元と実朝とのやりとりの背景には、こんな事情がありました。とはいえ、実朝がついに子を為さなかった、という史実に照らして考えると、なかなか意味深なやり取りにも思えます(『吾妻鏡』の作文である可能性も否定できませんが)。 そこで、実朝が子を為さなかったのは、本人の性的能力または性的嗜好によるものではないか、と考える歴史学者も少なくありません。今回のドラマでは、泰時に対する秘めた想いという、まさかのBL的展開が話題になりましたが、まったく荒唐無稽な創作ではないのです。 ただ、もう少し別な考え方もできるように思います。 というのも、政子は当初、足利氏の娘を実朝にめあわせようとしました。ところが、実朝は京の貴族の娘を望んだため、坊門姫を迎えることとなった、という事情があるのです。これは、有力武士と婚姻関係を結んだ場合、政争に発展することを実朝が怖れたため、と考えてよいでしょう。この坊門姫が鎌倉に来た