BLACK LIVES MATTER運動が現代社会に突きつける暴力と不正義の歴史を、早くも1944年に本書『資本主義と奴隷制』で告発したエリック・ウィリアムズ。しかし、発表当初、彼の主張にまともに向き合う歴史学者は皆無でした。ただ一人、アメリカ人研究者ローウェル・ラガッツ博士を除いては。大学院生時代にそのラガッツ博士の講義を受け、ウィリアムズの著書の翻訳もされたイギリス史研究者の川北稔先生(大阪大学名誉教授)に、当時の状況と、本書の意義について、解説していただきました。 『資本主義と奴隷制』から世界システム論まで 植民地など、「周辺」とされる地域から世界の歴史をみようとする立場は、いわゆる世界システム論をはじめとして、いまではそれほど珍しくはない。そうした見方は、学問的にも市民権を得ているといえる。しかし、ほんの半世紀まえには、そうした立場は、まともな学問とはみられないものでもあった。先頭