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日経新聞にはこれまでもいろいろと苦情を申し上げてきましたが、さすがにこれは・・・ ジョブ型導入にためらい 「配転違法」の最高裁判決響く 一方的な配置転換を「違法」とした4月の最高裁判決の思わぬ余波が出ている。大手小売業がパート社員をジョブ型の正社員に格上げする計画を凍結。労務を専門にする弁護士のもとには、労務対応に悩む企業から相談が相次ぐ。ジョブ型社員の配置転換を進めやすくするための新たな制度が必要だという指摘もある。 いやいや、配置転換したいわけでしょ、職務や配置が限定された硬直的なジョブ型じゃなくって、職務や配置が無限定でいくらでも会社の命令で動かせる柔軟性が欲しいわけでしょ。 硬直性が嫌で柔軟性が欲しいくせに、なんで硬直的だと百万遍繰り返して舌がすり切れそうになっているジョブ型を導入するとかいうんですかね。 悩んでいる企業にしても、この記事を書いている記者にしても、そもそもジョブ型を
先日の都知事選の余波で、いろいろとめんどくさいことになっているようですが、まあそちら方面には立ち入る気は毛頭ありませんが、それに関連して2C1Pacificさんがこう呟いていたのに対しては、かなりの共感を感じたところです。 連合が共産党とは一緒にできないというのはよく分かるのだけど、民主党政権下で連合傘下労働組合員に良いことがあったとはちっとも思えないので、連合が旧民主党勢力を結集させて何したいのかさっぱり分からない。連合草創期・山岸章時代の「反自民・非共産勢力の結集!」なんて力もないでしょ。 連合系の国家公務員の労働組合(連合系が多数派でないところが多いと思うけど)が旧民主党系を支持するのに至ってはマゾヒストなのかと思ってしまう。いや、その人たち、わしらの給料、思いっきり下げたじゃん。 連合はもう政党政治から一歩引いた方がいいんじゃないですかね。総資本対総労働の時代でもないんで。 そもそ
もはやアメリカの英雄と化したかに見えるドナルド・トランプが、副大統領候補に選んだヴァンス上院議員というのは、ラストベルトの虐げられた白人労働者の声をこういう本にした人のようです。 トランプ氏、副大統領候補にバンス上院議員を選出…白人労働者層を描いた回想録がベストセラー オハイオ州出身のバンス氏は、2016年出版の回想録「ヒルビリー・エレジー」で、製造業が衰退した「ラストベルト」の一つである同州の貧困に苦しむ白人労働者層の姿を描いた。同年大統領選で、トランプ氏を白人労働者が熱狂的に支持した現象が理解できるとして、ベストセラーとなった。 ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち ニューヨーク生まれの富豪で、貧困や労働者階級と接点がないトランプが、大統領選で庶民の心を掴んだのを不思議に思う人もいる。だが、彼は、プロの市場調査より自分の直感を信じるマーケティングの天才だ。長年に
毎週送られてくる『労働新聞』。私の書評の番でないときは、だいたい「ふーん」といいながらめくっていくんですが、今回(7月8日号)には驚愕しました。「今週の視点」の「驚愕のアイデアが優勝飾る」という記事。 内閣府が全職員を対象に開いた賃上げに関する政策コンペで、「残業の業務を従業員が個人事業主としてこなし、手取り増を図る」という施策が優勝した。労働者性をめぐるこれまでの議論を完全に無視しており、実現可能性には疑問符がつく。厚生労働省にはぜひ「指揮命令が必要な業務だから労働者を雇う」という基本のキを、内閣府に教授してもらいたい。 あまりのことに、内閣府のサイトに飛んで行ってみたら、確かにありましたぞなもし。 「賃上げを幅広く実現するための政策アイデアコンテスト」を開催しました 今般、内閣府全職員を対象に、「賃上げを幅広く実現するための政策アイデアコンテスト」を開催しました。 今年の春闘で昨年以上
吉田誠さんが『立命館産業社会論集』に書かれた「戦後初期における先任権移植政策の展開と労使の対応」という論文は、とても面白い論点を提起しています。 https://www.ritsumei.ac.jp/ss/sansharonshu/assets/file/60-1_3-15.pdf 本稿ではまずGHQや労働省が戦後占領期における先任権の日本への移植の奨励をどのように進めてきたのかを時系列的に明らかにする。当初,GHQは黒子役に徹し,米国に通じた学者や労働省を通して先任権を含む米国的な労働協約の奨励を進めてきた。しかし,1948年末に経済九原則が本国より命令として出されたことを受けて,人員整理による労使紛争を避けるためにGHQが直接的に先任権の導入を奨励・指導する立場に転じた。また経営者団体は,二つの枠組みで先任権を受けいれる姿勢を示した。一つは,消極的な解雇基準としてであり,ドッジ・ライン
こんな呟きが流れてきたのですが、 そういう研究はきっとあるのだろうけど、日本の大学教員の雇用というのはいわゆる「ジョブ型雇用」なのかどうか、ということを考えていた。 ジョブ型の側面とメンバーシップ型の側面と自営業の側面がどれもあるんだろうけど、そんなことをいえばどの仕事もそうだろうという気もする。しかし大学教員業についていえばこの10年20年で変化してもいるはず。 いや、「そういう研究」というほどのものはありませんが、そこのところに触れたブログ記事は若干あります。 大学教授はジョブ型正社員か? 大学教授と言えば、その専門分野の学識で採用される真正高級のジョブ型正社員じゃないかとも思われるところですが、必ずしもそういうわけでもないということが、最近の裁判例で明らかになったようです。今年5月23日の東京地裁の判決、淑徳大学事件では、 http://www.courts.go.jp/app/fi
去る5月13日に、文部科学省の中央教育審議会が「審議のまとめ」というのを公表し、教師の職務は特殊だから給特法は合理性がある云々と述べて色々と批判を浴びています。 https://www.mext.go.jp/content/20240524-mxt_zaimu-000035904_1.pdf https://www.mext.go.jp/content/20240524-mxt_zaimu-000035904_2.pdf その批判で「定額働かせ放題」というのがけしかるとかけしからんとかいう話があり、文部科学省の国会答弁によると、立派な給特法を、こともあろうに極悪非道の高度プロフェッショナル制度を形容する「定額働かせ放題」と呼ぶのがけしからんとのことで、あれだけ高給の労働者を手厚い健康管理で守りながら、未だに適用労働者が600人あまりしかいないという情けない制度と一緒にされるのは、確かに不本
先日の「高齢者の定義は・・・55歳だった!?」という記事に対して、 高齢者の定義は・・・55歳だった!? なんと日本国の実定法上、「高年齢者」というのは55歳以上の人のことをいうんですね。 これは、55歳定年が一般的であった1970年代に作られた規定が、そのまま半世紀にわたってそのまま維持され続けているために、こうなっているんですが、おそらく現代的な感覚からすれば違和感ありまくりでしょう。 ちなみに、同省令には続いて、 45歳になったら中高年という規定もあって、こちらはそうかなという気もしますが(若者だと思っている人もいるようですが)、でも45歳からたった10年で55歳になったら高齢者というのは可哀想すぎますね。 こういうブコメがつきましたが 44歳まではなんというのだろう。中高年でないなら青年? 実は、高年齢者雇用安定法と対になる法律として青少年雇用促進法というのがあるんですが、 青少年
例によって焦げすーもさんが、 未だに「職位が下の者から上の者に対する『パワハラ』もあり得る」とした理論構成が分からない。 職場の『いじめ・いやがらせ』という広範な概念で捉えればよかっただけなのでは? とつぶやいていますが、いやそれ、まさに入口では「いじめ・嫌がらせ」といっていたものが、なぜか出口では「パワハラ」になってしまったかつての円卓会議での議論の推移を見ていて、まさにそのときにそう思っていた件なんですが。 職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告(案) こちらは先週末ですが、職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループの報告(案)がアップされています。 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001yzy9-att/2r9852000001yzzq.pdf 個人的には、職場のいじめ・嫌がらせを「パ
政府の経済財政諮問会議で、民間議員が高齢者の定義を65歳から70歳にせよと主張したという話が駆け巡っています。大体みんな社会保障、年金関係の文脈で騒いでいるようですが、原資料を見ると、そういう風にならないように、わざと「社会保障の強靱化」の方ではなく、「女性活躍・子育て両立支援、全世代型リスキリング、予防・健康づくり」の方の、リスキリングの項目に書き込んでいたようですね。 誰もが活躍できるウェルビーイングの高い社会の実現に向けて① (女性活躍・子育て両立支援、全世代型リスキリング、予防・健康づくり) 〇全世代リスキリングの推進:高齢者の健康寿命が延びる中で、高齢者の定義を5歳延ばすことを検討すべき。その上で、いつでもチャレンジできるよう、DXや将来の人材ニーズを踏まえ、就業につながる教育・訓練の実施と、新たな給付等を活用した受講者の生活保障の充実を、利用状況を検証しつつ一体的に進める。その
もう既に日本でも報道されていますが、昨日EUの閣僚理事会がAI規則案を正式に採択しました。 Artificial intelligence (AI) act: Council gives final green light to the first worldwide rules on AI これについては、規則案提案の際に労働関係に重点を置いてごく簡単に紹介したことがあります。 JILPTリサーチアイ 第60回 EUの新AI規則案と雇用労働問題 去る4月21日、EUの行政府たる欧州委員会は新たな立法提案として「人工知能に関する規則案」(COM(2021)206) [注1] を提案した。同提案は早速世界中で大反響を巻き起こしているが、本稿では必ずしも日本のマスコミ報道で焦点が当てられていない雇用労働関係の問題について紹介し、政労使の関係者に注意を促したい。・・・・ ヨーロッパで検討進むAI
久しぶりに東大労判の順番が回ってきまして、アダルトビデオプロダクション労働者供給事件(東京高判令和4年10月12日)(判例タイムズ1516号142頁)というのを評釈してきました。 妙な判決を取り上げるものだとお思いになるかも知れませんが、いやこれがいろんな論点がごちゃごちゃ入り交じってなんとも面白いのです。 労働判例研究会 2024/5/17 濱口桂一郎 アダルトビデオ女優の労働者性とアダルトビデオプロダクションの労働者供給事業該当性 アダルトビデオプロダクション労働者供給事件(東京高判令和4年10月12日) (判例タイムズ1516号142頁) Ⅰ 事実 1 当事者 X:アダルトビデオプロダクション 被告人Y1:アダルトビデオプロダクションXの実質的支配者として、Xの運営資金の管理等を行う 被告人Y2:Xのマネージャーとして、アダルトビデオ女優のスケジュール管理等の業務に従事 Z:Xの
むかし学生時代に読んでいたはずですが、何しろ40年以上前なのですっかり中身を忘れていましたが、たまたま図書館の教育書の棚に並んでいたので再読したところ、思っていた以上に現在の私の考え方にそっくりなことを言っていることを発見し、いささかびっくりしています。 ・・・これにたいして、日本の社会においては、人々は潜在的可能性としての「能力」にたいしてよりつよい関心をしめす傾向がみられる。このように、日本の社会には、能力の一般的性格についての、あるぬきがたい信仰のようなものが存在しているために、すぐれた「能力」をもつ人、すなわち「できる人」はなにをやらせてもできるのであり、逆に「駄目な奴」はなにをやらせても駄目なのだと考えられやすい。・・・つまり、日本の社会では、適材適所とは、しばしば一般的能力のレヴェルにかんしていわれる場合が多く、本人の個性・関心・興味を中心にこれが主張されることはむしろ稀である
人事院の人事行政諮問会議が、国家公務員にジョブ型を拡大するとの案を提起したというのですが・・・、 国家公務員、ジョブ型拡大案 国家公務員の人事制度を協議する人事院の「人事行政諮問会議」は9日、中間報告を川本裕子総裁に手渡した。人材確保のため職務内容で報酬を定める「ジョブ型」を拡大する案を提起した。年功序列型の硬直的な制度を改め、専門能力を持つ民間人材の中途採用などを進めやすくする。・・・ 人事院のサイトには詳しい資料も載っていますが、 人事行政諮問会議 でもなまじ公務員法制の歴史をちょっとでも知っていると、今頃になって「ジョブ型拡大」などという台詞の皮肉さがじわじわと感じられてしまうはずです。 なぜなら、今から77年前、1947年に国家公務員法が制定された時には、それはアメリカ直輸入の純粋ジョブ型の制度として設けられたものだったからです。詳細なジョブディスクリプションを作成し、ジョブに基づ
雁林という人が、北村紗衣さんを「ポリコレリベサヨうんこ学者」とツイートした等により220万円の慰謝料を命じられたと報じられています。「うんこ学者」というのが誹謗中傷の類いに当ることは確かですが、「ポリコレ」とか「リベサヨ」というのは、思想的対立そのものの表現であることも確かでしょう。 それよりなにより、わたくしはもともと自分が創った気の利いた言葉のはずだった「リベサヨ」が、世の中を転々流通するうちに、原義とは全く違うただの左翼罵倒用語になって、こうして裁判ネタにまでなってしまったことを、若干の悲しみをたたえつつ、眺めるしかありません。 リベラルサヨクは福祉国家がお嫌い 一昨日のエントリーで紹介した後藤さんの本ですが、なかなか面白い記述があります。1960年代に左派からなされた福祉国家批判なんですが、例えば鈴木安蔵編『現代福祉国家論批判』にこういう叙述が見られるとして紹介しているんですが、福
『情報労連リポート』4月号が「歴史と運動から学ぶ 労働組合はなぜ必要なのか」という特集を組んでいて、そこにわたくしも「公共性を持つヨーロッパの労働組合 日本の労働組合とどこが違うのか」という小文を寄稿しています。 http://ictj-report.joho.or.jp/2404/ http://ictj-report.joho.or.jp/2404/sp02.html 労働組合の存在意義とは何か。それぞれの社会において異なる。欧米の労働組合と日本の労働組合の位置付けはどう異なるのだろうか。ヨーロッパにとっての労働組合の性格を主に解説してもらいながら、日本と比較してもらった。 アングロサクソンの労働組合 労働組合とは社会にとっていかなる存在なのかというのは、国によって異なります。大きく分けて、英米のようなアングロサクソン諸国、独仏のような大陸ヨーロッパ諸国、そして日本では、労働組合の位置
依然としてリスキリングが流行っていますが、世間の言説を見る限り、依然として圧倒的に多くの日本人はスキルをヒトの属性だと考えているみたいです。いや日本社会では現実にそうなんだからそうとしか考えようがないのですが、海の向こうからのはやり言葉として流れ込んできているリスキリングという言葉の語幹であるスキルってのは、海の向こうのジョブ型社会では当然の常識として、ジョブの属性以外の何ものでもない。 そもそもスキルってのは、世の中にあまたあるジョブってものを、これはスキルド(熟練)なジョブ、これはアンスキルド(非熟練)なジョブ、これはセミスキルド(半熟練)なジョブと振り分け、それぞれにふさわしい値札を貼るための概念であり、それがどの程度実体を有するものなのか、それとも社会的に構築されたフィクションに過ぎないのか、といった議論が、とりわけ同一価値労働同一賃金という、異なるジョブの間の賃金格差を問題とする
海老原嗣生『少子化 女”性”たちの言葉なき主張』(プレジデント社)をお送りいただきました。 2022年に出生数が70万人台となり、さらにペースが加速している日本の少子化。 なぜ日本は“底なしの少子化”に陥ったのか? 「日本における最大の雇用問題は女性」と指摘する著者が、少子化問題を日本社会における女性のあり方の変遷から解説。これまで妊娠、出産、育児の負担を押し付けられ、時代の常識に翻弄されてきた女性たちの心の視点から“少子化の原因”をひも解く。 平塚らいてうvs与謝野晶子の「女権×母権」論争から、「働け、産め、育てろ」という三重苦を負わせた女性支援、婚活・妊活ブームの圧力、不妊治療の最前線まで、女性を結婚や出産から遠ざけてきた“正体”に迫る1冊。 いつもの海老原節が全開の女性論ですが、内容は11年前の『女子のキャリア』の延長線上です。ですので、大きな枠組みについては全く同感するところが多い
ビジネスインサイダーに、「アメリカでは、大卒者の半数近くが飲食サービスや小売業といった「高卒レベルの仕事」に就いている —— 最新報告」という翻訳記事が載っていて、たぶん途中までは日本の読者もそれほど違和感を感じずに読んでいくのだろうと思うのですが、そこはやはりジョブ型社会のアメリカの話なので、こういう当たりで「あれ?」と感じるはずです。 アメリカでは、大卒者の半数近くが飲食サービスや小売業といった「高卒レベルの仕事」に就いている —— 最新報告 2つの調査会社が共同でまとめた最新報告書によると、アメリカでは大学で最近学位を取得した人の約52%が卒業後1年以内に大卒資格を必要としない仕事に就いているという。・・・ では、大学卒業後に高卒レベルの仕事に就いた新卒者は5年後にどうしているかというと、一般事務(109万人)や販売監督(100万人)、小売販売員(75万9000人)、営業(61万10
古屋星斗+リクルートワークス研究所『「働き手不足1100万人」の衝撃』(プレジデント社)をお送りいただきました。 https://presidentstore.jp/category/BOOKS/002514.html 2040年には働き手が1100万人足りなくなる―― テレビ、新聞、ネットで大反響の衝撃の未来予測シミュレーション、待望の書籍化!! 2040年には働き手が1100万人足りなくなる――。 2023年3月にリクルートワークス研究所が発表した未来予測シミュレーションは、テレビ、新聞、ネットで数多く取り上げられ、大きな反響を呼んだ。 これまで「人手不足」は企業の雇用問題として報じられてきたが、これから起ころうとしている「人手不足」は、まったく様相が異なるという。 業種別にシミュレーション結果を見ると、2040年には ・介護サービス職で25.2% ・ドライバー職で24.1% ・建設職
これはほんとに雑件です。 『労働経済判例速報』の令和6年1月30日号に「中央労働基準監督署長事件」(東京地判令和5年3月30日)が載っています。労災に関する裁判例ですが、事案が(労働法学的な意味ではなく、世間的な意味で)興味深いのでちょっと紹介。 本件の原告は、ファミレスに勤務する普通のサラリーマンなんですが、深夜帰宅途中、山手線車内で女性客に迷惑行為(要するに痴漢行為ですな)をしていた中年男に注意したところ、逆恨みしたそいつから跳び蹴りを受けて負傷したという事案です。もちろんそれはそれで刑事事件になるわけですが、警察が治療費を払ってくれるわけではない。問題はこの負傷が労災-正確には通勤災害-になるかです。通勤災害も労災と同様手厚い補償を受けられるのですが、その認定基準では、通勤とは関係のない逸脱や中断があると認められません。通勤の帰りに関係ないところに立ち寄ったりすると認定されないわけで
なんだか某方面から「おばさん」という用語が差別的で不適切だという声があり、それなら「おじさん」も不適切じゃないか云々という声もあるようですが、いささか違和感があり、2年半ほど前にこんなことを書いていたな、と思い出したので、再掲しておきます。 「働かないおじさん」は年齢差別か? 一昨日、慶應義塾大学産業研究所HRM研究会の35周年シンポジウムに参加し、報告と討論をしてきましたが(zoomで)、その中身はそのうち中央経済社から出版されるとのことなので、詳しくはそちらをどうぞなのですが、その最後あたりでややトリビアな、というかトリビアに見えるエピソードがあり、たぶん本には出てこないと思うので、ちょっと紹介しておきます。 https://www.sanken.keio.ac.jp/behaviour/HRM/ 私は例によって「ジョブ型VSメンバーシップ型と労働法」という話しをしたのですが、そのなか
本日の毎日新聞プレミアに、「給料が下がる 「60歳の壁」をどう乗り越えるか」というわたくしのインタビュー記事が載っています。 給料が下がる 「60歳の壁」をどう乗り越えるか 定年を過ぎて働き続けた時に、給料が下がる慣行があります。どう考えるべきでしょうか。 労働政策研究・研修機構労働政策研究所長の濱口桂一郎さんに聞きました。【聞き手・須藤孝】 ◇ ◇ ◇ ――定年を過ぎて継続雇用になると給与が大幅に下がる場合があります。 ◆建前としては現在の賃金制度は能力給とされています。60歳で給与が大幅に下がるのは論理的にはおかしいことです。 ――訴訟も提起されていますが、一方で受け入れる人も多くいます。 ◆本音では生活給だと思われているからでしょう。 年功序列的な賃金では、就職してから定年までの間の貢献度と総人件費が対応しています。若い時は低く、その分、中高年になると高くなります。 しかし、定年後も
近頃世界的に無責任な言説をまき散らすポピュリストが蔓延して困ったものだ、・・・と感じている人は多いだろう。しかし、これは階級闘争なのだ。知的エリート階級に経済的のみならず知的にも抑圧されているノンエリート労働者階級の「反乱」なのだ。 「階級闘争」という言葉は時代錯誤に見えるかも知れない。かつて産業革命時代に資本家階級と労働者階級の間で闘われた熾烈な階級闘争は、20世紀中葉に労働組合による団体交渉と福祉国家を基軸とする階級平和に移行し、マルクスの教えを古くさいものとした。だが20世紀の末期、再び階級闘争の幕が切って落とされた。先制攻撃を加えたのは経営管理者と専門職からなる知的上流階級だ。経済停滞の元凶として労働組合と福祉国家が叩かれたことはよく知られている。しかし、ネオ・リベラリズムによる経済攻勢と手に手を取って粗野な労働者階級文化を攻撃したのは、左派や進歩主義者たちによる反ナショナリズムと
「桐島、逃亡生活やめるってよ」というニュースが駆け巡った一日でしたが、彼が関わっていた「東アジア反日武装戦線」の爆弾事件はちょうど私の高校生時代で、あれからほぼ半世紀が経ったんだな、という感慨が湧いてきます。 そして、この頃のこういう動きが、左翼というのをそれまでの近代的、科学的な指向のイデオロギーから、それとはむしろ真逆の、反近代的、反科学的な指向のものと受け止める考え方の構えが一般化していったのだな、と思い返されます。 このあたり、もう10年以上も前に、演歌の本をめぐってこんなことを書いたことがありました。 新左翼によって「創られた」「日本の心」神話 わたくしの観点から見て、本書が明らかにしたなかなか衝撃的な「隠された事実」とは、演歌を「日本の心」に仕立て上げた下手人が、実は60年代に噴出してきた泥臭系の新左翼だったということでしょうか。p290からそのあたりを要約したパラグラフを。
『法律時報』2月号には、ローマ法学者の木庭顕さんが「労働市場改革」というエッセイを寄せていますが、もちろんそんじょそこらにあるような生やさしい中身ではありません。 https://www.nippyo.co.jp/shop/magazines/latest/1.html ●論説 「労働市場改革」……木庭 顕 ローマ法のlocatio conductioの話がえんえんとなされて、多くの読者にはいささかちんぷんかんぷんではないかとも思われますが、それ以外も深い皮肉に満ちた文章が次々に繰り出され、人によっては木庭節に酔いしれるかも知れません。 たとえば、ローマ法の視角から見れば、こういう議論になります。 ・・・労働時間規制がかからない「正規」というabsurdな形姿が、雇用関係が一種の丸抱えになっていることから導かれる、ということに疑いはない。正規労働者は福利厚生からあのおぞましい大宴会付き温泉
ついでにもう一つEUネタ。EUobserverの記事で、「EU Parliament will see far-right surge at election, study says」(欧州議会選挙では極右が台頭する) EU Parliament will see far-right surge at election, study says According to the ECFR's predictions, anti-European populists are expected to top the polls in nine member states: Austria, Belgium, France, Hungary, Italy, Poland, the Netherlands, Slovakia and the Czech Republic, while they ar
さて、『経営労働政策特別委員会報告』とおなじ1月16日付で、経団連は「労使自治を軸とした労働法制に関する提言」というのを発表しておりました。 労使自治を軸とした労働法制に関する提言 これが、読めば読むほど興味深い記述に満ち満ちており、どこまで本気なのか突っ込みたくなる文書になっています。 大きな方向性としては、労働時間法制の規制緩和を求めるものであって、その点に変わりはないのですが、そのための手法として、次の二つを打ち出しているのです。 ① 【過半数労働組合がある企業対象】労働時間規制のデロゲーション#6の範囲拡大 ② 【過半数労働組合がない企業対象】労使協創協議制(選択制)の創設 これまでの議論では過半数組合と過半数代表者を同列においてデロゲーションの要件とするものだったのですが、ここにきて労働者の自発的結社である労働組合と、そうでない過半数代表者を分けて、前者のみをデロゲーションにかか
焦げすーもさんが、トリビアのように見えてなかなかディープな問題提起をしています。 おっちゃん「地方公務員の1/4くらいが年休5日/年取れてないという調査知っとるかい?」 ワイ「知らんけど、実感とズレるなあ。」 おっちゃん「地方公務員の大部分が労基署の調査対象外やけど、そもそも、年休取得が義務化されてない。」 ワイ「嘘やん、地方公務員法第58条第3項・・・ほんまや。」 地方公務員法第58条第3項(他の法律の適用除外等) “労働基準法第二条、(中略)第三十九条第六項から第八項まで、(中略) の規定並びにこれらの規定に基づく命令の規定は、職員に関して適用しない。” 改正労基法の年次有休休暇の取得義務の箇所がすっぽりと適用除外に。 どうしてこうなった。。 おっちゃんのこの問いは、なぜ地方公務員の労働基準が守られないかという根源的なものであった。 回答としては、 1.民間と比較して、監督機関が機能し
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