白井聡氏(C)朝日新聞社 新型コロナウイルスの感染者が激増する中、開幕が迫る東京五輪。日本はどこへ向かおうとしているのか。気鋭の政治学者・白井聡氏が本誌に緊急寄稿した。 【表】国対の形成と崩壊の歴史的反復 * * * 本年3月に上梓した著書『主権者のいない国』(講談社)で、筆者は新型コロナ禍の下の日本では「統治の崩壊」が進行していることを指摘した。それから約4カ月を経て、東京オリンピック・パラリンピック中止の決断はついに下されず、「統治の崩壊」はその深刻度をいよいよ増してきた。デルタ株による感染拡大第5波は、半ば冗談として囁かれていた「緊急事態宣言下の五輪」を現実のものとしてしまった。そのようななか、朝令暮改は常態化し、数え切れないほどだ。金融機関を通じた飲食店への「圧力」事件は、その最新版である。 政府が頼みの綱としていたワクチン接種の弾切れは、とりわけ衝撃的だった。河野太郎ワ