資本主義は死んだと経済学者で元ギリシャ財相のヤニス・バルファキスは言う。だが、いかにして死んだというのか? われわれはどうなるのか? 英論壇メディア「アンハード」でバルファキスが挑発的に論ずる。 一昔前、高齢のフリードリヒ・フォン・ハイエクが小粋に自分の経験談を語り、そこから社会主義の計画経済に対する厳しい批判を始めるのを聴いたことがある。 ハイエクは茶目っ気を効かせてこう語った。 「先日、ある店に入りましてね。で、店を出たとき私が手に持っていたのは、それまで自分が欲しいとは夢にも思ったことのないモノだったんですよ」 ハイエクは資本主義を擁護する人のなかでも、きわめて頭が切れる論者のひとりだ。市場を慈愛にあふれた創造主とみなし、その働きを人間が作ったシステムで再現するのは無理だと考えていた。 冒頭の小話のポイントは、市場に入るまで人は自分が何を求めているのかも知らないというところだ。それな