ロミーのソロ・デビュー・アルバム『Mid Air』は、彼女が10代のときに通っていたクィア・クラブでの経験や記憶がインスピレーションになっているという。それで僕も、アルバムを聴きながらはじめてゲイ・クラブに行ったときのことを思い出していた。 忘れもしない。大学浪人が決まったあとの18歳の春だった。クラブ・イヴェント自体慣れていなかった自分には刺激が強かったけれど、それよりも何よりも、自分が住んでいる街にこんなにもゲイがいることに驚いた。それは普段の生活のなかではまったく見えないものだったからだ。よく身体を鍛えた薄着のお兄さんたちが光に照らされて楽しそうに踊っていた。ドラァグクイーンやゴーゴーボーイのショーにも目を丸くした。ディスコ・クラシックやハウス・ミュージックがかかっていたような気がするけど、当時の自分には何もかもが衝撃的だったので音楽についてはあまり覚えていない。あのときの経験がなか