ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、台湾有事への懸念が高まっている。民意と権力の関係を研究している京都大大学院教育学研究科の佐藤卓己教授は、戦争で「総力戦」をイメージする日本人の古い感覚が、安全保障についての議論の足かせになっていると指摘する。その上で、感情的な民意に流されずに議論できる枠組みの構築を求めている。【聞き手・鈴木直】 戦時の方が「民主主義的」? ――著書「ファシスト的公共性」の中で、「ヒトラーは民衆に『黙れ』といったのではなく、『叫べ』といったのである」と指摘しています。この指摘は、ファシズムは民衆を弾圧し、戦争に巻き込むという「常識」とは異なります。 ◆戦後教育を受けた私たちは「ファシズム対民主主義」「専制国家対民主国家」という枠組みで物事を考えます。しかし、独裁国家が民意を無視しては成り立たないことは、ドイツでナチスが台頭した歴史が教えています。逆に、民意が離れた時に