『OUT』『グロテスク』など社会に顧みられることのない女性たちと、その“痛み”を圧倒的な筆力で浮かび上がらせてきた作家・桐野夏生さん。最新作『燕は戻ってこない』では女性の貧困と生殖医療を題材にし、相次いで女性誌の特集が組まれています。人や物事をひとくくりにする「『安易なラベリング』に抵抗するために仕事をしている」と語る桐野さん。単独インタビューで、桐野さんが見据える現代社会と“痛み”に迫りました。
作家・ジャーナリスト団体の本格的取り組み 芥川賞を受賞した『ハンチバック』作者・市川沙央さんの告発は衝撃だった。 これまで障害者の問題にはいろいろ関わってきたつもりだったが、私たちが読書という営みから障害者を排除し、しかもそのことに全く無自覚だという告発は、「目からうろこ」でもあった。 この告発を受けて、私が所属する日本ペンクラブの言論表現委員会で、読書バリアフリーの問題に取り組むべきではないかという意見が出て、この何カ月か、日本文藝家協会とも話し合いを重ねてきた。そして、いよいよ11月20日(月)、日本ペンクラブの会議室に桐野夏生会長や文藝家協会の三田誠広・副理事長らが顔を揃え、市川さんもオンラインで参加するという試みを行うことになった。その一部始終はYouTubeで配信を行うので、ぜひ多くの人に視聴してほしい。 ペンクラブでは今、日本推理作家協会にも呼びかけを行っているが、作家・ジャー
オパールの炎 作者:桐野夏生 中央公論新社 Amazon 桐野夏生のインタビューを読んだことをきっかけに、ずっと読みたいと思っていた「オパールの炎」を読んだ。 一気読みしてしまった。 桐野夏生の作品は、何よりまず創作として抜群に面白い。先が気になって、読み終わらないと本が置けない。 「オパールの炎」は五十年前に、中絶を禁止した法律に反対しピル解禁を求めた、女性活動家・榎美沙子(小説では塙玲衣子)をモデルにしたセミフィクションである。 塙に興味を持ったライターの女性が、かつて塙の周りにいた人たちにインタビューをしていく形式で話は進む。 「塙玲衣子」は五十年前は有名だったものの、消息が絶えてから長い時間が経っている。 多くの人は関心も記憶も薄れている。 インタビューを受ける人たちは、性別、年代、学歴、生きてきた環境、性格、物の考え方、塙との関わりかたなどすべてが違う。 思い出して懐かしむ人もい
お久しぶりの更新になりました。 元気にしています。 つくねも元気だし旅行やキャンプも行ってるし ただブログを更新する意欲が減退しています。 同時期にブログはじめた方や、なにかと 絡んで下っていたブロ友さんがひとり またひとりとブログが更新されなくなって 行っているのも理由のひとつなの かもしれないですね。さみしい。 みんなまたぜひブログ書いて。 よねこも書くから。 しかし久しぶりすぎて何を書いたら良いのやら。 毎日楽しく過ごしている報告? 父親の介護の状況? 面白かった本の話? どれも書きたいね。 よし、本の話にしよう! 桐野夏生さんの本を最近続けて 読んだんだけど、”砂に埋もれる犬” のラストがすごく良くて最後だけ 何回も読んでしまった。 砂に埋もれる犬 作者:桐野 夏生 朝日新聞出版 Amazon 続編、ないヤツなんだろうなぁ~。 ていうかたぶん、続編出しちゃダメな やつなんだと思うけ
1933年の焚書1933年(昭和8年)5月10日、ベアリーンの歌劇場広場(Platz am Opernhaus)で、民界社会主義ドイチュン学生協会(Nationalsozialistischen Deutschen Studentenbunds)の成績優秀な大学生たちがエーリヒ・ケストゥナー(Erich Kästner、1899年2月23日~1974年7月29日)の著書を含む有害書の焚書をおこなった。 2023年(令和5年)8月10日、京都で、松井健人(1992年~)著『教養・読書・図書館:ヴァイマル・ナチス期ドイツの教養理念と民衆図書館』(晃洋書房、本体3,500円)が刊行された。 カバー表紙に、1933年(昭和8年)5月10日、ベアリーンでの焚書の写真が使われた。 2000年の『人間の汚点』1998年(平成10年)9月27日、ウェブ検索エンジンのGoogle Serchがウェブ検索サー
低用量ピル(経口避妊薬)の国内解禁から今年で25年――。その承認よりもさらに30年近く前、ピル解禁と中絶の自由を訴えた榎美沙子さんという女性がいた。ピンクのヘルメットをかぶり、女性の権利を訴える姿は一躍世間の脚光を浴びた。だが彼女はある時を境に、こつぜんと姿を消してしまう。時代の先駆者であった榎さんは、なぜ表舞台から去ってしまったのか。作家の桐野夏生さんは、榎さんをモデルにした女性の足取りを追う小説「オパールの炎」(中央公論新社)を6月に刊行した。執筆にあたり、「彼女を消した社会に若干の復讐(ふくしゅう)心があった」と話す桐野さんに思いを聞いた。【松原由佳】 桐野夏生さんが描く「中ピ連」創設者 まずは、榎さんについて確認しておきたい。榎さんは1945年生まれ。京都大薬学部を卒業後、72年に「中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合(中ピ連)」を設立した。ピルの解禁を訴え、経済的理由
『燕は戻ってこない』(NHK総合)の事前番組で、板垣麻衣子プロデューサーが原作者・桐野夏生と脚本家・長田育恵に共通する“公正性”に言及していた。人間の良いところも、悪いところも容赦なく描き出す。第5話は、それが如実に現れた回だと思った。 法律上、基(稲垣吾郎)と夫婦になったリキ(石橋静河)はついに人工授精を受ける。だが、2回目の人工授精も失敗に終わり、心身にかかるストレスでリキは苛立っていたのかもしれない。“依頼主”である基に無断で、6年ぶりに故郷の北海道に帰省する。けれど、リキの暴走とも言える行動はそれだけに留まらなかった。 詮索されると分かった上で、左手の薬指に指輪をはめて帰ったリキ。狙い通り、空港で出会った元同僚が食いつくと、リキはこれ見よがしに夫が有名人であることを匂わせる。それだけならまだしも、家族には基の素性も明かした上で結婚を報告した。この時点でリキは契約書にあった守秘義務に
映画TOP 映画ニュース・読みもの 密輸 1970 キャラクター解体新書で関係性をおさらい『密輸 1970』桐野夏生、こがけん、阪元裕吾監督からの絶賛コメントも! 映画ニュース 2024/6/19 12:00 キャラクター解体新書で関係性をおさらい『密輸 1970』桐野夏生、こがけん、阪元裕吾監督からの絶賛コメントも! 韓国のヒットメーカー、リュ・スンワン監督作『密輸 1970』が7月12日(金)より日本公開される。このたび豪華出演陣が登場人物を紹介するキャラクター解体新書映像、さらに各界著名人の絶賛コメントが解禁された。 2023年の第44回青龍映画賞で最優秀作品賞を含む4冠に輝き、同年サマーシーズンの韓国で500万人以上を動員して、年間興収ランキング3位を記録した大ヒット作『密輸 1970』。キム・ヘス、ヨム・ジョンア、チョ・インソンら豪華俳優陣が集結し、稀代のヒットメーカー、リュ・ス
レイ・ブラッドベリ 重力と恩寵 ジョン・ル・カレ Brilliant Trees 内田善美 太陽を盗んだ男 ヴィム・ヴェンダース 泥の河 24 村上春樹 カリフォルニア物語 ケイト・ブッシュ Close to the Edge カラマーゾフの兄弟 刑事ジョンブック目撃者 スティング ディーバ 砂の惑星 松岡正剛 Hotel California デビルマン 刑事コロンボ ファントム・オブ・パラダイス 萩尾望都 トマス・ハリス 猫 A Night at the Opera ノスタルジア ブライアン・フェリー 日出ずる処の天子 井上陽水 セブンスター 森田芳光 Melt (PG3) 風の谷のナウシカ ジェイムス・エルロイ 砂の惑星 パッション フェーム NHKスペシャル 橋本治 Ⅳ (Zep) デミアン ブレードランナー 淀川長治 ノスタルジア 笠井潔 Scarlet’s Wal
「バブル時代は、格差社会と言われる今の日本につながっている」 撮影=中村琢磨 作家 桐野夏生/78 作家デビュー30年。桐野夏生さんは小説の多くで、追い詰められ社会から逸脱していく女性の姿を描いてきた。最新作は、さまざまな矛盾を内包しながら狂乱していた、あの時代の物語だ。(聞き手=北條一浩・編集部) >>連載「ロングインタビュー情熱人」はこちら 「バブルと今の格差社会はつながっているのでは」 今年2月に刊行した『真珠とダイヤモンド』(毎日新聞出版)の上下巻 ── 今年2月に発売された『真珠とダイヤモンド』(毎日新聞出版)は、バブル時代を背景に、証券会社に勤める2人の女性の生涯を描いた作品です。小説のテーマとして、今なぜバブルなのでしょう。 桐野 日本は今、経済的にも社会情勢においても、厳しい環境にあります。そのことを考える中で、ふと思ったんです。あのバブル時代とは何だったのか。そこで日本人
色物扱い 消えた中ピ連 桐野夏生さん、小説で再考 今から約50年前、時代に先駆けて女性の性と生殖に関する自己決定権を求めて行動した活動家がいた-。1970年代に活動した「中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合(中ピ連)」代表の榎美沙子さん。当時は「色物」として扱われ、消えたその主張が再び注目されている。なぜ今、中ピ連なのか。 作家の桐野夏生さんは小説「オパールの炎」で榎さんをモデルにした女性活動家の半生を描いた。「当然の主張だったのにキワモノ扱いされ、バカにされて消えていった。榎さんはどうなったんだろう、という疑問と(彼女に代わって)復讐[ふくしゅう]をしたいという思いがあった」と執筆理由を語る。 中ピ連は72年結成。女性が月経周期や妊娠を自ら管理できるピルの解禁を訴えたが、世間の注目を集めたのは不倫をした男性の職場にピンクのヘルメット姿で押しかけるデモだった。「派手で面白いとこ
ネタバレに注意。しょうもなブログなので、読まないほうがいいかもしれない。少し長い記事になるかもしれない。桐野夏生さんの「日没」。 去年の11月頃、どこかの本屋で衝動買いして一気読みした本。桐野夏生作品と初めて接する。「OUT」と「魂萌え!」は映画化されていて鑑賞している。 今回の「日没」は過去の明るい女性というキャラから少し離れ、エンタメ小説家という主人公をおそらくだが自分(桐野夏生さん)自身に重ねて描いているのではないかと思わせる。 主人公は「マッツ夢井」 ドラマの始まりで、主人公の姿勢が示される。この部分だけ読んで小説の中に入り込む。作家の立場を明確に示す書き出しだ。 私は基本的に世の中の動きに興味がない。というのも、絶望しているからだ。(略)すべてがお国優先で人はどんどん自由を明け渡している。 このひとことで、この小説の全てを示している。このあと主人公になぞの「召喚状」が届き、逃げ場
トップレビュー80年代バブル期、夜中まで営業電話をかけ続けた証券会社の企業戦士たち。桐野夏生が描く成り上がりの物語『真珠とダイヤモンド』 『真珠とダイヤモンド』(桐野夏生/毎日新聞出版) 1974年生まれの筆者は、バブル経済の恩恵にあずかった記憶がまったくない。1970年生まれの社会学者/詩人・水無田気流も言っていたが、私たちの世代は、バブルのツケを払わされ、その後処理をさせられた。桐野夏生の新刊『真珠とダイヤモンド』(毎日新聞出版)は、そんなバブルの狂騒と絶頂と衰退までを描ききった大作である。 物語はバブル前夜の86年春、福岡にある中堅の証券会社だ。怒号の飛び交う社内で、朝7時から夜中まで営業の電話をかけまくる「企業戦士」たち。彼らは、実現不可能としか思えないノルマを課せられ東奔西走する。へとへとになって社員寮に帰ると、今度は竹刀を持った寮長のその日の反省をさせられる。睡眠時間は3時間く
桐野夏生「燕は戻ってこない」の登場人物 桐野夏生「燕は戻ってこない」のあらすじ 桐野夏生「燕は戻ってこない」の感想 まとめ 桐野夏生「燕は戻ってこない」の登場人物 桐野夏生著「燕は戻ってこない」は、2022年3月に集英社から発売された小説。 初出は「すばる」2019年3月号~2021年5月号。 全445ページ。 リキ 本名・大石理紀。29歳の主人公。 草桶基 バレエダンサー。43歳。 草桶悠子 基の妻。イラストレーター。44歳。 草桶千味子 基の母。バレリーナ。 青沼薫 生殖医療クリニックのスタッフ。 寺尾りりこ 悠子の友人。 テル リキの同僚。25歳。 ソム太 テルの恋人。 ダイキ セラピスト。 日高 リキの元上司。 桐野夏生「燕は戻ってこない」のあらすじ 都内の病院で、派遣社員として働くリキ。 同僚のテルから「エッグドナー」のバイトに誘われる。卵子を提供するための登録を行うのだという。
貧困家庭に生まれ、いじめや不登校を経験しながらも奨学金で高校、大学に進学、上京して書くという仕事についたヒオカさん。「無いものにされる痛みに想像力を」をモットーにライターとして活動をしている。第70回は「生殖は究極の不平等」です。 現実でも起こり得るとてもリアルな話 日本で法整備がされていない「代理出産」をテーマにしたドラマ『燕は戻ってこない』は最後まですさまじいカオスっぷりで、久々にゾワゾワ・ゾクゾクする作品だった。 フルタイムで働いても手取り14万。コンビニでおにぎりを買うことすらためらうほど困窮した主人公の理紀が、生殖医療エージェントに登録、代理母として子どもができない裕福な夫婦と契約するストーリーは、現実でも起こり得るとてもリアルな話だった。 このドラマ、とにかく人物の描き方がすごい。すっごい嫌なやつがちょっとまともに見えてきたり、唯一のまともキャラだと思った人がサイテーな人間にな
名門女子高に渦巻く女子高生たちの悪意と欺瞞。「ここは嫌らしいほどの階級社会なのよ」。 「わたし」とユリコは日本人の母とスイス人の父の間に生まれた。
今週のお題「懐かしいもの」 お題ブログだけど読書感想 バブル時代を描いたものだから。 真珠とダイヤモンド 上 作者:桐野 夏生毎日新聞出版Amazon真珠とダイヤモンド 下 作者:桐野 夏生毎日新聞出版Amazon 福岡の証券会社に新入社員として入社した二人の女性を軸に物語は進みます。 一人は短大卒、美人で上昇志向が高くフロントレディとして採用された佳那。 もう一人は高卒、地味で堅実、事務職員として採用された水矢子(みやこ)。 何もかも違うような二人だですが、社内の多数派からは少しずつ浮いていることと、地元を捨てて東京に出たいという思いは共通していたことから仲良くなっていきます。 美しい佳那は、同じく同期の男性社員である望月に気に入られます。 この望月が、上昇志向だけは非常に強いものの、ただそれだけの男。まだ何者でもない若者。自分を客観視できず、また緻密な戦略を練ることもできないため、空回
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