孫正義と二人で世界中を飛び回って… 〈ヤフーはすべて井上さんが作ったサービスなんです〉 そう評したのは、現・ヤフー社長の川邉健太郎だ。 ‘96年1月に誕生した「ヤフー・ジャパン」は、ソフトバンクの孫正義が米ヤフーと業務提携を結んで始めた日本法人だ。しかし、実際に孫はヤフーの事業にほとんどタッチしていない。事実上の創業社長であり、ヤフーを巨大IT企業に育てあげた人物こそ、井上雅博だった。その井上の知られざる半生を綴った『ならずもの 井上雅博伝――ヤフーを作った男』を、ノンフィクション作家・森功氏が上梓した(以下、〈 〉内はすべて同書からの引用)。 〈「ねぇこの会社、どう思う?」「いいと思います」〉 米ヤフーへのソフトバンクの投資は、孫と井上のそんな会話で即決された。当時、井上はソフトバンクの社長室長を務めており、将来性がある投資先を求め、孫と二人で世界中を飛び回っていた。そんな二人が目を付け