浅井ラボ@されど罪人は竜と踊る24(2023年2月17日発売) @AsaiLabot2 日本の犯罪が2002年から五分の一となったそうで、他の先進国はどうかなと法務省資料を見たら、件数は人口差があるにしても率がひでえ。アメリカにいたっては、日本の百倍も強盗が発生。なおそのアメリカでも世界治安度ランキングだと真ん中より上という。人類っ! pic.twitter.com/0QiRD3l31G 2022-02-04 08:48:29
※本記事では、機関紙「神奈川近代文学館」161号(2023年7月15日発行)の寄稿を期間限定で公開しています。〈9月30日17:00まで〉 嶽本野ばら・作家 少女小説とは何某なにがしかが少ない、又は足りない女子が登場する小説――まるで大喜利ですが、若い女子が登場する、若い女子が読む平易な文体で書かれたものを悉ことごとく少女小説と呼ぶのではありませんし、その独自性の定義は無理にでも作った方がいい気がします。 例えば川端康成が中里恒子と共に携わった『乙女の港』を僕は少女小説だとは思えない。だけど後期の長編『古都』は少女小説に分類出来ると思う。だって、境遇を違えた双子の姉妹が最後、同じお布団で眠るんですよ! 少女小説家の部分のみをクローズアップするのは良くないと解っていますが、昨年、今野緒雪おゆきの『マリア様がみてる』全三十七巻を一気読み、その度に号泣した僕にとって、やはり吉屋信子といえば『花物
【プロフィール】 【はじめに】 江戸川乱歩+夜汽車「人でなしの恋」 江戸川乱歩+しきみ「押絵と旅する男」 江戸川乱歩+ホノジロトヲジ「人間椅子」 夢野久作+ホノジロトヲジ「死後の恋」 夢野久作+ホノジロトヲジ「瓶詰地獄」 坂口安吾+夜汽車「夜長姫と耳男」 荻原朔太郎+しきみ「詩集『青猫』より」 泉鏡花+ホノジロトヲジ「外科室」 谷崎潤一郎+夜汽車「刺青」 芥川龍之介+げみ「蜜柑」 【プロフィール】 プロライターの海燕です。書評や映画評などを掲載しています。 現在、マルハン東日本さまのウェブサイト「ヲトナ基地」で定期的に記事を掲載中。ランキングを席捲! お仕事の依頼、個人的な連絡などは以下のページからどうぞ。 ボタンをクリックするとこのブログを継続して購読できます。よろしくお願いします。 それでは、記事へどうぞ。 【はじめに】 〈乙女の本棚〉をご存知だろうか。 一度くらいは書店の店頭で見かけ
近代文学を代表する作家で詩人の佐藤春夫が学生時代に書いて文芸誌に掲載された詩の直筆の草稿が見つかりました。専門家は「文学を志す若者だった佐藤の自負がうかがえる貴重な資料だ」としています。 見つかったのは佐藤が1918年に小説「田園の憂鬱」でデビューする前に文芸誌に掲載された「同時代私議」という詩の直筆の草稿です。 佐藤の遺族が保管していた資料の調査を行った東京大学の河野龍也 准教授が、佐藤が慶應義塾大学在学中だった1912年に和歌山県の父親に送った手紙の中に同封されていたのを見つけました。 「同時代私議」は明治天皇に殉じてみずから命を絶った軍人の乃木希典をテーマにした詩で殉死という行動に対する複雑な心情を表現したとされています。 草稿は、同じタイトルですが、評論の文体で書かれていて、乃木の死を、信念を貫くための行動だったと率直に評価したうえで「国士乃木大将の殉死に就いて異常なる興味を感ずる
日本近代文学の研究してるんだがこっちは小規模の影響しか出てないな。どこの研究分野にもコロナの影響はあるみたいだが、その規模は大小様々だから苦労のシェアができなくて研究者間に溝がうまれそうw 無論、文学研究も原典や資料が大事なので図書館が使えなくなってた期間は全員死んでた。時代にもよるが近代以前の文学資料ってそこまでデジタル化されてねえからさ。あ、でも一定期間遡ると逆にNDLが公開してたりもする。ただ論文がわりと紙ベースで同人誌も多いんだよな〜 でも図書館が予約制なりで使えるようになってからはわりと大丈夫だ。図書が消毒中だから借りれないとか、長時間図書館に居るなとか、図書館間の貸し借りは取り止めとかはあるけど。人によってはどこどこの資料館がつぶれたとか私立図書館が閉鎖になったとかあるみたいだから一概に大丈夫とも言いきれないが… まあお互い頑張ろうな。ここで研究を止めたら積み上げてきたものがゼ
日本近代文学の文豪でラスボスの“夏目漱石”――その攻略法を漫画にひもづけて読む:ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(1/2 ページ) 1000円札の絵柄になった漱石、教科書に載った漱石、弟子が見た漱石、家族が見た漱石、全て同じ漱石だが、それぞれにイメージは違ったものとなる。漱石というイメージを孫の夏目房之介さんが読む。 ライブ配信で開催されているITmedia エグゼクティブ勉強会に、日本近代文学の文豪の1人である夏目漱石の孫であり、マンガ評論家でエッセイストの夏目房之介氏が登場。「孫が読む漱石 ~夏目漱石というイメージ~」をテーマに講演した。セミナーの冒頭で夏目氏は、次のように語っている。 「まず申し上げておかなければならないのですが、僕は漱石に会ったことはありません。うちの父が9歳のときに亡くなってますんで、会いようがないのです。まあ、会わなくて良かったと思ってますけどね。あ
平成の時代とともにその生涯を終えた橋本治が、令和6年春、横浜に帰って来ます――― 橋本治(1948~2019)は、1977年に高校生の日常を描いた「桃尻娘(ももじりむすめ)」で小説家としてデビューし、それまでにないスタイルと内容で世間に衝撃を与えました。すでにイラストレーターとして活躍していた橋本は、以後、小説執筆と併行して、恋愛や性、家族、時代を論じ、舞台やイベントを演出し、セーターの編み方を教え、古典をひもとくなど、八面六臂の活躍を繰り広げました。どんな未知の分野にもひるまず分け入った橋本の原動力は「わからない」ことを解明したいという思いだったといいます。その成果は膨大な数の著作となって、我々に大きな〈恵み〉をもたらし続けています。 当館は、2019年以降、橋本治の直筆原稿をはじめとする資料をご家族、ご関係の方々から寄贈いただき〈橋本治文庫〉として保存しています。本展は、時代を先取りし
只今、駒場公園内「日本近代文学館」にて『芥川龍之介展』が開催されています。 今回の展覧会は、日本近代文学館の刊行物『芥川龍之介文庫目録 増補改訂版』の刊行を記念しての展覧会です。 部門構成としては、第一部「原稿と初版本でたどるその軌跡」第二部「旧蔵書に見る知の宇宙」第三部「書画と来簡に見る交友」第四部「生涯」の四部構成。 特に第二部では、芥川の蔵書の中の書き込みや、挟まれていたメモ、押し花などの展示もあり、芥川がその本を読んで何を思い、考えていたかの軌跡をたどることができる、興味深い展示となっています。 同時開催は『川端康成の名作Ⅰ』。 川端康成の文壇デビューから戦中までの前期作品を、原稿や同時代の作家から寄せられた書簡などからクローズアップしていきます。 展示を見たあとは、1階カフェBUNDANで一休み。 いただいたのは、もちろん「ブラジルコーヒーAKUTAGAWA」。 スイーツは、展示
京王井の頭線駒場東大前駅からほど近い、駒場公園内にある「日本近代文学館」。 明治以降の日本文学の資料を、収集・保存・展示する資料館です。 所蔵品は、9万3千点余りの原稿や草稿、日記、遺品、48万冊を超える書籍、2万8千タイトル60万冊を超える雑誌という膨大な量を誇り、芥川龍之介文庫や太宰治文庫、志賀直哉コレクションや有島武郎・生馬コレクションなどなどの、文庫・コレクションも160を超える豊かさです。 資料のほとんどが、作家や遺族、出版社からの寄贈によるものなのだそうです。 一般向けの公開講座や、文学館職員・大学院生対象の文学館演習などの教育活動も盛んで、展示室は通年開設。季節によって展示内容が変わり、春と秋には特別展も開かれています。 近代文学館の開館は昭和42年。同公園内の旧前田侯爵邸洋館も、近代文学博物館として同時開館し、展示を行っていましたが、残念ながら現在博物館は閉館。展示は近代文
庄野潤三(1921~2009)は、1961年から亡くなるまで半世紀近くを川崎・生田で暮らした神奈川ゆかりの作家です。庄野は、1955年「プールサイド小景」で芥川賞を受賞後〈第三の新人〉のひとりとして注目され、家族や知己との日常を細やかに記した小説や随筆、市井の人々への取材に基づく聞き書き小説など多くの作品を残しました。すべての文学は人間記録(ヒューマン・ドキュメント)であるという信念のもと作り出された作品は、人生の根本に潜む〈切なさ〉を表現し、生きていることの〈懐しさ〉と感動を読者の心に呼び起こします。 本展は、庄野とそのご遺族から受贈した「庄野潤三文庫」資料に加え、貴重な遺愛の品などにより、その文学と生涯を振り返ります。 ※同時開催=常設展「文学の森へ 神奈川と作家たち 第1部 夏目漱石から萩原朔太郎まで」→ 詳細【会期】2024年6月8日(土)~8月4日(日) 休館日:月曜日(7月15
記事:じんぶん堂企画室 1978年の柄谷行人さん 書籍情報はこちら ――様々な言語に翻訳されている『日本近代文学の起源』についてお聞きします。自分の書いた本は読み返さないという柄谷さんですが、これはちょっと例外のようですね。 柄谷 外国語版が出る度に序文を求められたから、僕としては珍しく何度も読み直したんだけど、今はもうだいぶ忘れているよ(笑)。 ――まず、どういう本か、というところからですが、日本の明治文学についての論考が収められた本です。「風景の発見」、「内面の発見」、「告白という制度」と、“風景”“内面”“告白”など当たり前のものになっていることが、実は近代化のなかで生まれた装置だということを、夏目漱石や森鷗外、国木田独歩に田山花袋などの明治文学を引きながら、次々に指摘していきます。例えば、人間の“内面”を描くために言文一致が確立されたのではなく、言文一致が確立される過程で“内面”が
知られざるライバル―鏑木清方(かぶらき・きよかた)と鰭崎英朋(ひれざき・えいほう) 2019年、「築地明石町」が再発見されたことが話題となった鏑木清方(1878~1972)。日本画家として今でも広く知られていますが、明治30年代後半から大正5年頃にかけては、文芸雑誌や小説の単行本の口絵というジャンルで活躍していました。その時、清方と人気の双璧をなしていたのが、鰭崎英朋(1881~1968)です。清方と英朋は、月岡芳年の系譜に連なると共に、烏合会という美術団体に属した友人同士でもありました。清方と英朋による、明治の美しい女性たちを描いた口絵の名品を紹介します。
横浜港の見える丘公園奥にある「神奈川近代文学館」では、只今『「おまけ」と「ふろく」展ー子どもの夢の小宇宙』開催中です。 (おまけ展情報)神奈川近代文学館では7/29~9/24まで「『おまけ』と『ふろく』展-子どもの夢の小宇宙」を開催します。 ポケットにグリコのおまけを詰め込んでいた子供の頃が懐かしいな。チラシをゲット。 会期後半に北原照久氏の講演会も開催予定。#おまけ #ふろく #北原照久 #グリコ pic.twitter.com/8bc3CR0ICO — かなぶん@神奈川近代文学館 (@Kanabun84) June 10, 2023 子どもにとって、身近でささやかな宝物であるお菓子や雑誌の「おまけ」や「ふろく」。 本展では、明治半ばに創刊された幼年雑誌の紙の組み立て付録から、戦後の野球カードや仮面ライダーカード、別冊の漫画や探偵グッズなどなど、子どもの夢や憧れの詰まった「おまけ」と「ふ
「桃尻娘」で作家デビューし、続いて少女漫画評論集「花咲く乙女たちのキンピラゴボウ」を世に問うた橋本治は突然気が付いた─「平安朝の女流文学は少女マンガである」。 映像プロデューサー・浦谷年良は橋本が「をかし」は「カッコいい」、「あはれ」は「ジーンときちゃう」と解説するのを聞いて衝撃を受け、「枕草子」の現代語訳を熱望した。〈大胆不敵〉でありながら〈精緻〉な「桃尻語訳 枕草子」はこうして生まれた。 〈大胆不敵〉とは桃尻語という橋本の生み出した言葉に訳したこと。大島弓子らによる1980年前後の革新的少女漫画と平安時代に花開いた女流文学とは、男社会における女の表現の姿勢として同質だと橋本は看破した。清少納言はナウいキャリアウーマンだったのだから、少女漫画に取材した桃尻娘の言葉で訳せるはず、との仮定からスタートする。 〈精緻〉とは原文を厳密に一字一句、桃尻語に置き換えたこと。勢いで意訳したのではなく、
「定本 日本近代文学の起源」柄谷行人 岩波現代文庫 2008 明治期の「言文一致」の本質は「漢字御廃止」にある。これは形象よりも音声を重視する、文字は音の従属であるという音声中心主義にもとづく。「言文一致」と「内面」の発見は連関する。 漢字においては、形象が直接に意味としてある。それは、形象としてに顔が直接に意味であるのと同じだ。しかし、表音主義になると、たとえ漢字をもちいても、それは音声に従属するものでしかない。同様に、「顔」はいまや素顔という一種の音声的文字となる。それはそこに写される(表現される)べき内的な音声=意味を存在させる。「言文一致」としての表音主義は「写実」や「内面」の発見と根源的に連関しているのである。 54-55頁 めちゃ面白い。おおっ!ってなった。こういうのが批評というのですね。 あとこれは注で紹介されてゐるのだけれど、吉本隆明の「初期歌謡論」はかなりすごいっぽいな。
■写真クリックで精彩表示に■ ■[学長ブログ]一覧を表示■ (09/01)中之島の新古典塾平安文学のチラシが出来ました (08/31)颱風が近付く宇治にて (08/30)集会所で高齢のみなさまと会話を楽しむ (08/29)今週末の日比谷図書文化館での講座は休講です (08/28)颱風10号の動きに気をもんでいます (08/27)京洛逍遥(879)間之町通を四条まで散策 (08/26)清張復読(72)『砂の器』 (08/25)明後日8月27日に各国語訳『源氏物語』のことが放映されます (08/24)キャンパスプラザ京都で尾州家河内本「桐壺」を読む(第2回) (08/23)清張復読(71)「濁った陽」「草」 (08/22)お盆に甘露門のお経をあげてもらったこと (08/21)京洛逍遥(878)矢田寺の御詠歌とソバ屋の変体仮名 (08/20)清張復読(70)「証言」「寒流」「凶器」 (08/19
『太宰治の辞書 』 北村 薫 (著) 創元推理文庫あらすじみさき書房の編集者として働く「私」は、太宰治の「女生徒」の謎に出会う。 太宰は「ロココ料理」で何を伝えようとしたのか?円紫さんの言葉に導かれ、「私」は謎を探るための旅に出る。 膨大な知識から太宰の足跡をたどる息をするように本を読み、本から本へと連想が広がり、作家が書いたその背景へと想いを寄せている「私」。 膨大な知識量にはただ目を見張るばかり。 かといって堅苦しい解説だけでなく、太宰の人間臭い部分も多く綴り、本人の生きていた気配を身近に感じるような、不思議な感覚に陥ります。 まとめ落語家、円紫さんとのやりとりも仲の良い親戚の叔父と姪のような、温かなものを感じます。 人が綴った文字が、人の気持ちを動かし続けている。 そんな文学作品の良さを口語形式の論文のように、ていねいに教えてくれる物語です。 <こんな人におすすめ>太宰治のファン
※本記事では、機関紙「神奈川近代文学館」166号(2024年10月1日発行)の寄稿を期間限定で公開しています。〈2024年12月8日まで〉 恩田陸・作家 安部公房の小説には、しばしば写真、書類、新聞記事、地図といった、ビジュアル素材が登場する。それはまさに、近年よく聞くようになったモキュメンタリー(mockumentary・フィクションをドキュメンタリーの手法で描く)を先取りしていた、ともいえる。 彼のカメラ好き、写真好きとも少なからず関係しているだろう。ぎりぎりまで寄ったレンズの捉える細部の生々しさと、引いたカメラの、フレームが消えた空間の茫漠とした虚ろさ。その著しい落差が彼の小説を作っているのだ。 近くで見る限り、彼の小説世界はそれらしい事実が提示され、リアルであるように見える。 『砂の女』で、主人公が目にする小さなハンミョウや、八分の一ミリメートルという砂そのものの粒。しかし、彼が閉
日本近代文学の登場人物の中でもっとも謎めいた女性として語られるのが、夏目漱石『三四郎』に登場する美禰子だ。 三四郎を弄んだのか?三四郎を好きだったのか?美禰子の真意は謎として語られる。 しかし、斎藤美奈子さんによると、美禰子の行動原理は「いたってわかりやすい」。 *本記事は斎藤美奈子『出世と恋愛 近代文学で読む男と女』を抜粋・編集したものです。 三四郎と美禰子、衝撃の出会い で、ようやく問題の女性、美禰子である。 両親を早くに亡くした美禰子は、兄の恭助と二人暮らし。この兄が広田先生や野々宮と友人だったことから、彼女はサロンの一角に加わっている。英語を解す才媛で、(三四郎的には)美貌の持ち主である。 以下、三四郎と美禰子の関係をざっと見ておこう。 1. 衝撃の出会い 彼女を三四郎がはじめて目にしたのは、上京してまもなくの暑い夏の日であった。 大学のキャンパスの、池(現在「三四郎池」と呼ばれて
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日本の近代文学。そこにKという特定のイニシャルを加えれば、脳裏には絞り込まれた無数の作品がぽんぽんと浮かんでくる。 タイトルからして明らかな梶井基次郎の「Kの昇天」か、現代文の教科書でおなじみ夏目漱石の「こころ」か、はたまた太宰治の「秋風記」か。もちろん、他にもたくさんあるだろう。 私の場合、それらを差し置いてまっさきに瞼の裏へと映し出されるのは、ひとりの少女の面影だ。彼女の名前はKで始まる。いわゆる友人、いや、それ以上の存在。 互いに本をこよなく愛していたけれど、手に取るものの傾向はことごとく異なっていた。彼女は主に日本の近代文学を愛好し、私はその横で、主にヨーロッパの物語の翻訳を読む……といった具合に。 どんな風にして知り合ったのかはまったく覚えていない。けれど、小学校に入学する頃にはすでに異様なほど固い絆で結ばれていた。当時、幼いなりにどこかへ遊びに行く際には大抵の場合一緒だったと思
みなとみらい線の元町・中華街駅で電車を下り、港の見える丘公園を抜けた。 今は七十二候で「蚯蚓出(みみずいずる)」の時期。 薔薇が見頃を迎えた5月中旬、とにかく右を見ても左を見ても、草花の鮮やかな色だらけだった。風が吹くとなんとなく土の匂いも漂ってくるから適当に歩いているだけでも楽しい。それにだんだん夏が本格的に迫ってくれば、こんなに過ごしやすい日にはもう遭遇できないかもしれない、と思うと尚更……。 ローズガーデン中央にある円形の噴水が今日も綺麗だった。水面が、太陽の光を受けて輝いている。 そこから霧笛橋を渡った先にある県立神奈川近代文学館には、特にお目当ての特別展が開催されていない時期にも、たまに足を運ぶ。 単純に横浜市内在住だから存在が身近というのもあるけれど、何よりここの常設展示室には夏目漱石が暮らした「漱石山房」の書斎を再現した空間があって、いつ来てもそれを鑑賞できる……のが一番の訪
ほっんんんっとおお~~~に久しぶりに横浜へ出たらすっかり土地勘がなくなっていた。とはいえ、地下鉄のおかげで近くなった神奈川近代文学館へ(それでも結構歩く)。マンガ史研究上も非常に興味のある「新青年」展。これまた非常に充実していて、館所有の全雑誌展示は圧巻で、その表紙の変遷で歴史がよく伝わる。新漫画派集団との関係も少し示唆されており、横山隆一がやたら小説の挿絵に登場するのに驚いた。結局3時間かけて見て回った。中華街駅から館までにはバラ園があり、今年は異常なほどにバラが見事で、生まれて初めて「バラの香りがむせかえる」という小説みたいな経験をした。中華街で点心を買って帰宅。「新青年展」は5月16日で終了してしまうのだが、このコロナ禍でもったいなかった。どこかで巡回してもいいのでは。
金達寿(キム,タルス/キムダルス 1920~1997)は在日朝鮮人としての経験を核に、作品を通して人間とはなにか、どうあるべきかを問い続けた作家でした。 日韓併合下の朝鮮・慶尚南道(キヨンサンナムド)に生まれ、10歳で日本へと渡った金達寿は貧しい家計を助けながら文学を志し、戦後「玄海灘」「太白山脈」などを発表、在日朝鮮人作家の先駆けとして活躍します。また、戦中戦後の約10年間を横須賀に暮らした、神奈川に縁の深い作家でもあります。後半生では朝鮮と日本の関わりについて古代にさかのぼって追究、ライフワーク「日本の中の朝鮮文化」に結実させて行きました。 当館では、金達寿資料を2003年(平成15)に受贈し、「金達寿文庫」として保存してきました。2020年(令和2)が金達寿生誕100年にあたるのを機に、日本人と朝鮮人の相互理解を希求したその生涯と作品を「金達寿文庫」資料を中心に紹介します。 ※同時開
日本の文学史上に大きな足跡を残し、昭和を代表する作家・大岡昇平(1909~1988)。若き日に小林秀雄、中原中也らと出会い、スタンダール研究家として知られた大岡は、1944年、35歳で出征し、九死に一生を得て帰還します。戦後、実体験をもとにした「俘虜記」で小説家デビュー、戦争文学の最高峰といわれる「野火」、ベストセラー「武蔵野夫人」を発表。その後もさまざまなジャンルの作品を手がけ、研究・評論・翻訳にも多くの業績を残しました。1967年には「レイテ戦記」の連載を開始、高い評価を得ています。本展では、ご遺族から当館に寄贈された「大岡昇平文庫」の資料を中心に、生き残った者としての責任を負いながら、一文学者として戦後日本を歩み続けた、その生涯を辿ります。 知識人である大岡が、一兵卒として体験した戦争。その透徹したまなざしが描き出した作品は、人間の根源的な問いを内包する、優れた世界文学として読みつが
江戸川乱歩「D坂の殺人事件」、小栗虫太郎「黒死館殺人事件」、夢野久作「押絵の奇蹟」、横溝正史「八つ墓村」……。日本ミステリー史上に燦然と輝く傑作の数々を生み出した雑誌「新青年」は、1920年(大正9)に創刊され、1950年(昭和25)までに400冊が刊行されました。創刊当初、「新青年」は地方の青年たちの啓発を目指した雑誌でしたが、歴代の編集者の手腕により、ミステリー・ファッション・スポーツの最先端を誌面に展開し、昭和初年には時代を牽引する雑誌へと躍進を遂げました。その精神は、現代の出版界にも大きな影響を与えています。 創刊101年を記念する本展では、「新青年」を舞台に活躍した作家たちの軌跡を約600点の資料によってたどり、日本の大衆文化史上に一時代を築いた「伝説の雑誌」に迫ります。 【会期】 2021年3月20日(土・祝)~5月16日(日) 休館日:月曜日(5月3日は開館) 【開館時間】
橋本治が1977(昭和52)年に初めて書いた小説が、のちの代表作「桃尻娘」だった。女子高校生の一人語りで若者が日ごろ抱える社会への不満や悩み-妊娠や同性愛といったテーマに分け入り、それまでにないスタイルと内容で世間に衝撃を与える。同作はシリーズ化され、単行本6冊を刊行。桃尻娘・榊原玲奈と、3人の同級生-木川田源一、磯村薫、醒井(さめがい)凉子を主人公に、彼らが成長していく様子を、橋本は登場人物に寄り添いつつ書き進めた。 シリーズ6冊目「雨の温州蜜柑姫(おみかんひめ)」の主人公は醒井凉子。橋本が「うっとりするような美しいトンチンカン」と設定する凉子は、大学1年の夏、先輩の滝上圭介を好きになり妊娠、木川田が滝上に思いを寄せているとも知らず、滝上と仲のいい木川田に相談を持ちかける。衝撃を受け、傷つきながらも、木川田は凉子のため奔走するのだった(第2冊「その後の仁義なき桃尻娘」)。 「雨の温州蜜柑
知られざるライバル―鏑木清方(かぶらき・きよかた)と鰭崎英朋(ひれざき・えいほう) 2019年、「築地明石町」が再発見されたことが話題となった鏑木清方(1878~1972)。日本画家として今でも広く知られていますが、明治30年代後半から大正5年頃にかけては、文芸雑誌や小説の単行本の口絵というジャンルで活躍していました。その時、清方と人気の双璧をなしていたのが、鰭崎英朋(1880~1968)です。清方と英朋は、月岡芳年の系譜に連なると共に、烏合会という美術団体に属した友人同士でもありました。清方と英朋による、明治の美しい女性たちを描いた口絵の名品を紹介します。
三浦哲郎(みうら・てつお)は1931年(昭和6)、青森県八戸市に生まれました。早稲田大学文学部在学中から創作を手がけ、卒業後、1960年に「忍ぶ川」を発表、翌年第44回芥川賞を受賞し、文壇デビューを飾ります。その後も代表作「白夜を旅する人々」をはじめとする長短篇の数々で、自身と家族、名も無き庶民の姿を描き、人生の苛酷さや安らぎ、人間の哀しみや愛おしさを浮彫りにしました。一字一字刻むように築き上げたその作品世界は、壮大な歴史小説から連作小説、児童文学、エッセイと多岐にわたります。 当館では、ご遺族から「白夜を旅する人々」「少年讃歌」などの原稿や、生涯の師・井伏鱒二からの三浦あて書簡など貴重資料を多数ご寄贈いただき、「三浦哲郎文庫」として保存しています。本展は、同文庫資料を中心に、近年八ヶ岳の山荘で発見された原稿など初公開となる初期資料を加え、三浦が文学に込めた思いと作品の魅力を紹介します。
駒場公園内「日本近代文学館」では、秋季特別展「プロレタリア文化運動の光芒」開催中です。 【秋季特別展開催中】本日9/18(月)は祝日につき開館しております。展示室では「プロレタリア文化運動の光芒」、「川端康成が見出した作家たち」を開催中。残暑厳しい中ですが、ぜひご覧ください。 京王井の頭線「駒場東大前」駅徒歩7分 開館・9時半~16時半(最終入場16時)https://t.co/qbrV3mFyT2 pic.twitter.com/nyn9Yienb8 — 日本近代文学館 (@bungakukan) September 18, 2023 (小林多喜二) 同時開催は、「川端康成が見出した作家たち」。 1970年の9月15日、川端康成は、後輩作家の藤沢桓夫に随筆集『人生師友』を贈られ、その礼状に「私秋口はいやでさびしく心細くなります さういふ時に御著を二三夜読ませていただきました」と書いていま
横浜港の見える丘公園奥にある「神奈川近代文学館」では、只今コーナー展示「没後50年 大佛次郎展ー戦後の仕事」展開催中です。 (大佛次郎展)神奈川近代文学館では12/2から常設展と併設で「没後50年大佛次郎展―戦後の仕事―」を開催。 チラシをゲット。「天皇の世紀」を読むと命とは何なのか。考えさせられます。えっ?そこで切腹しちゃうの?事実は壮絶です。#大佛次郎 #天皇の世紀 #パリ燃ゆ pic.twitter.com/rCZjVQkpCC — かなぶん@神奈川近代文学館 (@Kanabun84) November 23, 2023 「鞍馬天狗」シリーズでお馴染みの大佛次郎(明治30.10.9~昭和48.4.30 小説家)は、横浜で生まれ、昭和4年から終生鎌倉で過ごした、神奈川にゆかりの深い作家です。 本コーナー展示では、その没後50年を記念して、隣接する「大佛次郎記念館」の所蔵品も合わせ、約1
能登半島地震で被災した公益財団法人「石川近代文学館」(金沢市広坂)が各地を巡回しながら展示を続けている。県庁19階の展望ロビーでは「広津里香記念 高校生による創作詩」の入賞作品展を開催中。学芸員は館外で展示する難しさに苦慮しつつ、文学館を多くの人に知ってもらう機会にもなると展示を工夫する。 (井上靖史) 石川近代文学館は国重要文化財の石川四高記念文化交流館に入居する。能登半島地震で壁にひびが入ったといい、修繕工事が必要となった。現在は休館中だ。 それでも地震後は県立歴史博物館や県立図書館を間借りし、企画展示などをしてきた。宮本知穂学芸員は「古い資料の運搬が難しく、資料を配置する距離感も変わるので悩むことが多い」と「ホーム」を離れて展示する難しさに触れる。
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