最前列まで行った風船とバナーは、不思議なことに地上十数メートルまで上昇していた。おそらく、人の熱気によってその周辺だけ気温が上がっていたのではないかと思う。無数のカメラとスマートフォンが、その巨大な「安倍やめろ!」を撮影する。 ハスラー・アキラのところには翌日、友人からこんなメールが来たという。 「あの” ”は貴方たちが作ったんだね。スバラシイ」 少なからぬ人が、それを「雲」と認識した。ツイッターには「空に虹がかかる前に必ず湧き上がる黒雲、権力者をannoyする暗雲、参集した怒れる民衆という雲」「虹をかけるための怒りの雷雲。空に浮かぶ黒と白のパワー」といった言葉が並んだ。 ハスラー・アキラは「黒いTシャツたち」の一人であり、この風船バナーのアイデアを出した一人でもある。この3×5メートルの巨大バナーの製作は、ハスラー・アキラが所属する六本木のギャラリー、オオタファインアーツで行なわれた。し