《サヤエンドウの香り》 私は料理をするのが好きだ。 これは、必ずしも料理が上手ということにはつながらない。 客観的な評価はともかくとして、自分なりのこだわりがあって満足がいくように同じ料理をちょっとずつ変えては何度でも作る。 だから、実験途中の料理を何度も食べさせられる家族はいい迷惑である。 「いったい、この前のとどう違うのか」ということになる。 今にして思えば、私の料理へのこだわりの原点は、幼い頃に体験した「サヤエンドウの香り」だったのではないだろうか。 私たち家族は、私が小学1年から3年まで東京都国分寺市に住んでいたから、当時は周りに農家が多く、なぜか大量のサヤエンドウとピーマンがしょっちゅう届けられていた。 サヤエンドウの筋取りはいつも私の役目だった。 この単純作業が私は気に入っていた。 筋を取る度にプチップチッという微かな音がする。 そして、その度に緑の香りが立つ。 取れたてだから