フアン・ユパンキ氏は、1年前に購入し、まだビニールにくるまれたままのマットレスの山をじっと見つめた。そして「これらが役に立つ日は来るのだろうか」と思わずつぶやいた。 マットレスが積まれているのは、ユパンキ氏が2020年、自分の農園に建てたわらぶき屋根のゲストハウスの中だ。彼のゲストハウスはペルー南東部、世界遺産の都市クスコからほど近いパタカンチャ村にある。小さな窓があり、素朴な家具が置かれたゲストハウスは、ユパンキ氏が家族で経営する体験型ツーリズムビジネスを、さらに盛り上げてくれるはずだった。でも、今はそれもかなわない。 客の数は、2019年になってようやく増え始めていた。ユパンキ氏はそれまで、何年もかけて施設を整えてきた。平均でひと月に5組ほどのグループがやってきて、アルパカの世話、村のトレードマークになっている赤いポンチョの織り方、地元の踊りなどを習いながら、1〜2日ほど滞在していった