疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。それから三年たった春、給湯室に「缶詰課長」の段ボールが復活した。 缶詰課長は総務課の課長である。もちろん本名ではない。年のころなら四十路の半ば、若いころ老けて見えるタイプのようで、わたしが入社して以降、十年ほど同じような容貌のままである。元陸上選手で今でも走るからか、中年太りには縁がない。 缶詰課長は常時半袖である。体温が高いから、というのが本人の言で、ほとんど一年中、襟のついた半袖の、ネイビーブルーのシャツを着て、来客対応や上司との面談があるときにだけスーツを着用する。ジャケットの下はもちろんいわゆるワイシャツである。課長はよほどそれが嫌いらしく、来客が帰るとわざわざ手洗いで着替えて戻ってくる。いつもの服はシャツを七枚、パンツを四枚、スーツは二セット、それぞれ同じものを買うのだと話していた。 それだけ聞くとスティーブ・