「2.5%だってさ」 居酒屋で鍋をつついていた。大手メーカーで企画開発をしている彼は、どこか投げやりな口調だった。 「何が?」 「イノベーターと呼ばれる人の割合だよ」 「ああ、『イノベーター理論』の」 マーケティング理論の1つだ。新製品を世に出すと、まずは「新しいもの好き」な消費者が飛びつく。彼らを〈イノベーター〉と呼び、全消費者の2.5%だと言われている。 「だけど、これって多すぎると思わないか」彼はビールジョッキを置いた。「たとえば潜在的に100万人の需要が見込める市場に向けた製品なら、最低でも2万5000人は買うことになるだろ」 「単価4,000円の製品なら、それだけで1億円の売上だよね」 「どう考えても楽観的すぎる。モノを作って、定常的なプロモーションをするだけで、そんなにたくさんの消費者が飛びつくなんて……今の日本ではありえないよ」 わずか10年前と比べても、モノを売りづらくなっ