性別役割分業を批判する立場にいながらも、「専業主婦」を安易に否定できない理由はいくつかあるだろうけれども、一つは「専業主婦」の否定が、育児や家内労働(以下、再生産労働)の価値を矮小化し、それが生身の母を敵に回してしまうのみならず、市場労働中心の価値規範に絡めとられてしまいがちなことにあると思う。 フェミニズムはよく誤解されているが、女性に男性と同様の働き方を推奨する思想ではない。とにかく働いて賃労働の中に自分の生きがいを見つけなさい、それこそが自立で「自己実現」なのだなどど主張するフェミニストはまずいないだろう。 とはいえ、現在の実社会の中で、家父長制や性別役割分業に回収されることなく、それでいてマージナルな領域にも価値を認めるような生き方を模索することは、並大抵のことではない。 教壇に立って、「専業主婦」を夢見る女子大生と対峙するとき、再生産労働やその他の賃金に還元されないマージナルな活