タグ

ブックマーク / charis.hatenadiary.com (6)

  • 東京新聞の書評 - charisの美学日誌

    [読書] 渡辺由文『時間と出来事』(中央公論新社、8月25日刊) 9月26日(日)の東京新聞(中日新聞)の読書欄に、以下の書評を書きました。私、中島義道氏、大森荘蔵先生など、一刀両断にバッサリ批判されていますが、なかなか面白いでした。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー [評者]植村 恒一郎(群馬県立女子大教授) ■隠喩としての時間を論じる 時間は古来、哲学の大きなテーマであった。アリストテレス、アウグスティヌス、カント、そして二十世紀には、ベルクソン、フッサール、ハイデガーなどが、精緻(せいち)な時間の哲学を展開した。 しかし著者によれば、こうした哲学者の時間論は「もの」と「出来事」の区別をしておらず、時間は隠喩(いんゆ)的にしか表現され得ないことを見落としているという。 我々は、未来の出来事が現在になったり、現在の出来事が過去になったりする「時間の流れ」を当然のこととして疑

    東京新聞の書評 - charisの美学日誌
  • 有名小説の冒頭部分を比べる - charisの美学日誌

    [読書]  有名小説の書き出し部分を比べてみた (右の写真は、若き日のスコット・フィッツジェラルド) 村上春樹訳『グレート・ギャツビー』を読んでいたら、その冒頭の書き出しの素晴らしさに、あらためて感嘆した。小説の書き出しといえば、『アンナ・カレーニナ』などが有名だが、やはり作家は実によく考えている。ためしに、手元にあるいくつかの小説の書き出しを眺めてみた。どれもいい。 スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』(村上春樹訳) >僕がまだ年若く、心に傷を負いやすかったころ、父親がひとつ忠告を与えてくれた。その言葉について僕は、ことあるごとに考えをめぐらせてきた。 「誰かのことを批判したくなったときには、こう考えるようにするんだよ」と父は言った。「世間のすべての人が、お前のように恵まれた条件を与えられたわけではないのだと」 アンドレ・ブルトン『ナジャ』(巌谷國士訳) >私は誰か? め

    有名小説の冒頭部分を比べる - charisの美学日誌
  • 古市剛史『性の進化、ヒトの進化』(1) - charisの美学日誌

    [読書]  古市剛史『性の進化、ヒトの進化』(朝日選書 1999) (写真はボノボ。チンパンジーに近いが別種。20世紀の発見で、アフリカのコンゴに約2万匹が生息。生殖と無関係なコミュニケーションとしての多様な性行動が、人間とよく似ている。そのことが、ヒトの起源について重要な示唆を与える。) 新刊ではないが、とても興味深いだったので、重要な論点をメモしてみたい。ヒトの起源についての探究は、アフリカにおける化石の発見や、たんぱく質分子の構造分析によって進化の系統樹が確定するなど、20世紀の最後の20年間に大きく進展した。著者は、京大霊長類研究所のボノボやチンパンジーの生態観察にもとづいて、「性」という視点からヒトの起源を説明する。化石やたんぱく質の分析、そして動物行動学の知見から、ヒトの起源や進化についてどの程度の見通しが得られるのか? また、性行動の観点から、チンパンジー/ボノボ/ヒトの違

    古市剛史『性の進化、ヒトの進化』(1) - charisの美学日誌
  • 『崖の上のポニョ』 - charisの美学日誌

    [映画] スタジオ・ジブリ『崖の上のポニョ』 熊谷シネ・ティアラ (写真左は、海の中のポニョと妹たち。ポニョの当の名前は「ブリュンヒルデ」。宮崎駿はワーグナーの『ワルキューレ』から採った。写真右は、ポニョを救う男の子、宗助。) 宮崎駿の最新作を見てきた。評価の分かれる作品だと思う。彼の最高傑作だという意見がある一方で、よく分からない作品という印象を持つ人も多いのではないか。CGを使わない手書きの絵の美しさ、動く波や海のダイナミックな迫力、魚の女の子ポニョの生命の輝き、音楽と画面の見事な融合、全篇に溢れる何ともいえない優しさなど、この映画には優れた美点がたくさんある。(写真は、魚の女の子ポニョが陸地にやってくるところ。) だが作は、これまでの宮崎作品とはかなり違う。物語の展開する次元が一つではなく、次元の大きく異なる諸要素が混交して物語を作っているので、分かりやすそうに見えて、実は分かり

    『崖の上のポニョ』 - charisの美学日誌
  • 「出生率」を考える(4) - charisの美学日誌

    [読書] 河野稠果『人口学への招待』(中公新書 2007年8月) (写真は、Henry Heringの「走るダイアナ」。ギリシア神話のアルテミスは、ローマでは「ダイアナ」と呼ばれた。こちらもアスリート美少女で、母性的ではない。) 今日は、合計特殊出生率と、女性の未婚率が15年遅れで男性の未婚率に追いつくというデータについて考えてみたい。 河野氏は、合計特殊出生率について次のように述べている。 >[合計特殊出生率は] ちょうど大木の幹を真横に切断してその年輪を見るように、人口の流れをある時点で切断しその横断面に現れた年齢別出生率の合計を示すものである。(p77) >しかし、このようにして得た出生率は、見かけの数値である欠点がある。異なったそれぞれのコーホート[=ある年に生まれた人口集団]の15歳から49歳までの年齢別出生率を、あたかもある特定のコーホートが順次経験したかのように見せているから

    「出生率」を考える(4) - charisの美学日誌
  • ミリカン『意味と目的の世界』(1) - charisの美学日誌

    [読書] ルース・ミリカン『意味と目的の世界』(信原幸弘訳、勁草書房、'07年1月刊) (写真は著者近影。コネティカット大学名誉教授。) 非常に興味深いだったのでコメントしたい。バクテリアから人間の意識に至る進化の過程を、「表象」という一貫した構図で捉える実に雄大な構想だ。書のポイントは、自然主義の記号論にあり、人間の言語をモデルに記号を考える従来の発想に対して、著者は、原始的な生物もまた記号を用いて生命活動を営んでいると考える。たとえば、ある種のバクテリアは酸素の多い海水が苦手なので、細胞内の磁石が示すN極の方向へ動くことによって、酸素の少ない深い海へ移動できる。この場合、磁石のN極の方向と、酸素の少ない海水とは、因果関係で繋がっているわけではないので、この磁石は酸素の少ない海水のありかを「表象する(表現する、指示する)」原始的な自然記号として機能している(p61)。我々は人間のいな

    ミリカン『意味と目的の世界』(1) - charisの美学日誌
  • 1