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私たちの道徳の検索結果1 - 40 件 / 41件

  • 男性性欲が医療によって管理される未来 - シロクマの屑籠

    この文章は、先週twitterでつぶやいた話をブログ用に書き直したものだ。もっと長文でまとめてみたい、と思ったからだ。 「賢者タイムは生産的」→「というより、男性性欲のあれって認知や行動の障害では?」 「賢者タイム」というインターネットスラングをご存じだろうか。 賢者タイムとは、男性が射精後に性的関心がなくなり、冷静になっている状態を指す言葉だ。賢者タイムがあるということは、いわば愚者タイムとでもいうべき時間もあり、男性、とりわけ若い男性はしばしば、性欲や性衝動によって冷静さを失う。そして生産的でも合理的でもない行動、たとえば普段は欲しいとも思わないポルノグッズを衝動的に買ってしまったり、向こう見ずな行動をとってしまったりする。 だから若い男性のなかには、冷静さを取り戻すために、ほとんどそれが目的でマスターベーションを行う人すらいる。 「睾丸毒」というネットスラングも過去にはあった。これも

      男性性欲が医療によって管理される未来 - シロクマの屑籠
    • 倫理や正義を押しつけるのは悪いことなのか ~ ワートリの倫理とヴィーガンの正義 - 已己巳己ブレイクダウン

      [概要]ある人が倫理的な主張をしたとき、それに対して「押しつけるな」という反応が返されることも多い。このとき、両者のメタ倫理観に違いがあるのではないかと考えてみることで理解が進む可能性がある。 序 何について考えるか 用語整理: 道徳? 倫理? 正義? ワールドトリガーと倫理 倫理とは議論の余地のないものであるか 倫理は「お気持ち」とは違うのか 倫理とは主観的なものであるか 倫理を押しつけるな派と別にいいだろ派はそれぞれ一枚岩なのか 倫理とは相対的なものであるか 倫理に権威はあるのか ヴィーガンと正義 正義を他人に要求するのは悪いことか 正義を要求することは当たり前なのか 正義を要求することは暴力なのか 正義を押しつけと感じるのはなぜか 正義を要求することの是非と正義そのものの是非は別問題か 正義とはヤバいものなのか 正義とは発明するものなのか 正義とは理論化するものなのか 参考書籍 道徳

        倫理や正義を押しつけるのは悪いことなのか ~ ワートリの倫理とヴィーガンの正義 - 已己巳己ブレイクダウン
      • 書評 「広がる! 進化心理学」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

        広がる! 進化心理学 朝倉書店Amazon 進化心理学は基本的にヒトの行動や心理を進化的な視点から理解しようとする試みであり,極めて学際的な営みになる.本書はそのような進化心理学の周辺分野の専門家たち(その多くは同時に進化心理学者でもある)による進化心理学が周辺分野に与えてきた影響,あるいはその親和性を解説する一冊になる.編者は小田亮と大坪庸介. 冒頭の「まえがき」は「なぜ書店の『心理学』の棚には『進化心理学』というコーナーがないのか」という面白い掴みから始まっている.基本的に新しい分野でまだ認知度がなく,そういう書名の本が少ないからだと思われるが,ここでは,進化心理学は他の○○心理学と異なり,○○にあたる内容を研究するのではなく,進化はその視座を表しているからだと説明されている.つまり進化心理学は認知科学,社会心理学,発達心理学のような内容による区分に横串を通すような分野であり,そのよう

          書評 「広がる! 進化心理学」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
        • 回心のパウロか、令和の郭沫若か?橋本愛が文春「読書日記」で綴った”反省の弁”が異様な迫力… - INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

          週刊文春の書評コーナーには「読書日記」があり、朝井リョウ、酒井順子、鹿島茂、瀬戸健、吉川浩満、そして橋本愛が交代で執筆している。 その橋本愛氏がこの前、批判を受けたという。 www.tokyo-sports.co.jp article.yahoo.co.jp nlab.itmedia.co.jp nordot.app thesilentforest-jp.com biz-journal.jp …で、この騒動を受けた後の「読書日記」リレー当番が回り、橋本氏が描いたのが激烈な”自己批判文”。 橋本愛、自己批判す(週刊文春読書日記)これが冒頭。 そして締めくくりは 橋本愛、自己批判す(週刊文春読書日記) 週刊文春 2023年4月6日号[雑誌] 文藝春秋Amazon サウロは地に倒れ、「サウル、サウル、なぜ、わたしを迫害するのか」と呼びかける声を聞いた。 5「主よ、あなたはどなたですか」と言うと、

            回心のパウロか、令和の郭沫若か?橋本愛が文春「読書日記」で綴った”反省の弁”が異様な迫力… - INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-
          • 熊代亨『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』第一章(上)を公開します - シロクマの屑籠

            健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて 作者:熊代 亨発売日: 2020/06/17メディア: 単行本(ソフトカバー) 6月17日発売予定の『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』の第一章を公開する許可をいただいたので、公開します。 第一章では、現代社会に対して私がどういった問題意識を持っているのか、紹介しています。それらを踏まえたうえで、第二章から先は (2)メンタルヘルス・(3)健康・(4)子育て・(5)清潔・(6)コミュニケーションと空間設計 について詳説していきますが、(2)~(6)は興味のある章から読んでいただいても大丈夫だと思います。第七章は、最後にお読みいただく前提で書かれています。 ひとつのブログ記事には長すぎるので、第一章を(上)と(下)の2回にわけてアップロードします。 第一章:快適な社会の新たな不自由 【美しい国と美しい都市】 ときの

              熊代亨『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』第一章(上)を公開します - シロクマの屑籠
            • 第110回:私たちは軍事国家から侵略を受けたときに、それに対してどう向き合うべきか(想田和弘)

              ロシアによるウクライナへの侵略行為は、人道的にも、国際法上も、許されぬものである。 したがって国際法的には、主権国家であるウクライナのゼレンスキー大統領には、ロシアに対する「自衛のための戦争」を遂行する権利があるのだろう。だから彼が自衛戦争を行うと決断したことについて、第三者は基本的に、それを尊重するという立場以外を取ることは難しいのかもしれない。 しかし一方で、個別的自衛権を行使し、ロシアに対して徹底抗戦するという彼の選択が、本当にウクライナの人々を守ることになるのかどうかについては、それとはまったく別の問題として、現実を直視しながら検討せねばならない。 なぜならその問題は、軍事力が支配するこの野蛮な世界に暮らしている私たちにとって、まったく他人事ではないからである。 私たちは軍事国家から侵略を受けたときに、それに対して、どう向き合うべきなのか。 やられたから、やり返す。 それは当然の権

                第110回:私たちは軍事国家から侵略を受けたときに、それに対してどう向き合うべきか(想田和弘)
              • 20世紀の倫理-ニーチェ、オルテガ、カミュ - 内田樹の研究室

                『ペスト』がいきなり売れ出したということで、集英社の伊藤さんからカミュ論の旧稿をウェブに上げたいという提案を頂いたけれど、これがとてもそのままではお目にかけられるようなクオリティではない。その時にHDの筐底から「こんなもの」が出て来た。たぶん1995年くらいに大学のリレー講義の一部で、「20世紀の倫理」というのを3回くらい担当したことがあって、その時に作ったノートである。そのあと大学の紀要に載せたのだけれど、単行本には採録されていないと思う。カミュ論の部分はのちに改稿して『ためらいの倫理学』という論文になって、同名の論集に収録されている。前半の「倫理についての思想史的概説」は学生向けに書いたので、たいへんにわかりやすい。 1・倫理なき時代の倫理 神戸の小学生殺人事件のあと、あるトーク番組で「なぜ人を殺してはいけないんですか?」と発言した中学生がいて、物議をかもしたことがあった。おそらく、彼

                • Cloudflareの不正利用に対するポリシーとその取り組み

                  Cloudflareは12年前に創立されました。現在では、世界100か国を超える275都市以上にネットワークを展開するまでに成長しました。中小企業や個人開発者からフォーチュン500社の約30パーセントに至るまで、何百万ものお客様を抱えています。現在では、Webの20%以上がCloudflareのサービスに直接依存しています。 サービスの立ち上げ以来、時間の経過とともに当社のサービスははるかに複雑なものになりました。このような複雑さの中で、私たちはCloudflareのさまざまな機能が不正使用された場合の扱いについてポリシーを策定しました。Googleのような広範なプラットフォームが、検索、Gmail、YouTube、Bloggerに対して異なる不正利用ポリシーを設けているように、Cloudflareも新製品の導入に伴い、それぞれに不正利用に対するポリシーを策定してきました。 昨年、当社では

                  • 物語における「現代の価値観で過去を裁く」ことについて - THE★映画日記

                    「死んでしまえばそれまで」と言えばそれまでだが…今のお偉いさん達って「自分が後世の漫画家や映画作家に、ずっと悪役として描かれる」ことの恐怖ってないのかしら。百五十年前に「黒人や女に投票権を与える?本気かよ?」と言った米国の政治家達。みんな写真も名前も残ってて、今この有様じゃない↓ pic.twitter.com/KAHqLB6LjP — どう即 (@madanaizo) May 10, 2020 どう即さんのツイートが興味深く、ブクマも50以上と注目されているようなので、思うところをメモ的に書いておく。 ブックマークコメントでは「現在の価値観で過去の人々を裁くことを正当化するのか」的な批判意見が多いようだ。しかし、基本的には id:IkaMaruさんのコメントの方が的確であるだろう。 どう即 on Twitter: "「死んでしまえばそれまで」と言えばそれまでだが…今のお偉いさん達って「自

                      物語における「現代の価値観で過去を裁く」ことについて - THE★映画日記
                    • 公正価格の誤謬、「ホモ・エコノミクス」批判批判(読書メモ:『資本主義が嫌いな人のための経済学』③) - 道徳的動物日記

                      資本主義が嫌いな人のための経済学 作者:ジョセフ・ヒース NTT出版社 Amazon ● 第7章「公正価格の誤謬」から。 あえて私の考えを言えば、左派または人類の味方とすら辞任する御仁にとって、豊かな工業化社会で食住をあがえない人がいるのはいるのは許しがたいことだ。それだけなら問題ない。だが、ここで二つの大きく異なる見方がある。食中をあがえない人がいるなら、問題はこれらが高すぎるか、お金が足りない人がいるかのどちらかだ。同様に、問題の解決法は二つある。一つ目は価格を変えること、二つ目は国民の収入を補うことだ。だが、なぜか二番目の選択肢は見過ごされる傾向がある。そのため「公正価格の誤謬」とでも呼ぶべき論考パターンができあがる。再分配の様式に生じる不公正の直接の原因は価格だからと、給付金の効果を無視するものである。 (p.175) この章でヒースが指摘するのが、左派による「公正価格の誤謬」は電

                        公正価格の誤謬、「ホモ・エコノミクス」批判批判(読書メモ:『資本主義が嫌いな人のための経済学』③) - 道徳的動物日記
                      • 「普遍的な道徳」は存在するか?(読書メモ:『道徳性の発達と道徳教育』) - 道徳的動物日記

                        道徳性の発達と道徳教育 作者:ローレンス・コールバーグ,アン・ヒギンズ 麗澤大学出版会 Amazon 「ケアの倫理」を最初に提唱したキャロル・ギリガンの『もうひとつの声で』の批判対象として有名な……というか、哲学・倫理学界隈では「ギリガンに批判された人」というイメージしか抱かれていないおそれもある、教育心理学者兼哲学者のローレンス・コールバーグさんの本。 この本には1980年代にコールバーグが廣池学園(モラロジー研究所の関連機関)で行なった講演と、1971年に彼が執筆した代表的な論文(「道徳教育の基盤としての道徳性の発達段階」)などが収められている。講演に関してはモラロジー研究所や廣池千九郎へのヨイショ的な文言も差し挟まっていて、割り引いて読まなければいけない感じがある。また、別々の機械になされた複数の講演と論文とが収められているため、一冊の本のなかで同じ話題やトピックが何度も繰り返された

                          「普遍的な道徳」は存在するか?(読書メモ:『道徳性の発達と道徳教育』) - 道徳的動物日記
                        • シリコンバレー101(812) 「TikTokから消えたヒューストン・ロケッツ」が意味すること

                          来年、米国は大統領選挙の年だ。さすがに4年前と同じような情報操作の影響は避けられるだろうと多くの人が信じている。だが、予備選まで4カ月を切った待ったなしの状況なのに、米国ではネットにおける政治広告の取り扱いを巡って紛糾している。 今年の7月に、トランプ陣営がFacebookで配信した政治広告動画が問題視された。「フロリダ州のTraceyさん」「ワシントン州のThomasさん」といった一般の人達が登場してトランプ大統領の功績を褒め称える。今の米国に満足する"支持者"を集めたビデオに見えるが、実は有料の動画素材を使った映像だ。つまり、出演者は全て俳優であり、映像の「フロリダ州のTraceyさん」は実在しない。コメントは本物だというし、画面左下の方に小さく「俳優による描写」と注意書きされているからフェイクではない。だが、見た人の多くが実際の支持者がコメントしていると思ってしまう演出に批判の声が上

                            シリコンバレー101(812) 「TikTokから消えたヒューストン・ロケッツ」が意味すること
                          • 「怒り」はよくて「嫌悪感」はダメなのか?(読書メモ:『感情と法』②) - 道徳的動物日記

                            感情と法―現代アメリカ社会の政治的リベラリズム 作者:マーサ ヌスバウム 慶應義塾大学出版会 Amazon 前回の記事でも触れたように、『感情と法」の第2章と第3章では、おおむね「嫌悪感は不適切で理に適っていない感情だから法律に組み込んではいけないが、怒りは適切で理に適った(ものになり得る)感情であるから法律に組み込むべきである」という議論が展開される。 この議論はかなり興味深いものではあるが、わたしとしては、ヌスバウムは「怒り」という感情を過剰に高く評価したり理想化したりしているように思えたし、逆に「嫌悪感」という感情を低く評価し過ぎて貶めているように思えた。 わたしがまず疑わしく思ったのは、嫌悪感(disgust)について、「汚染源を拒否したいという感覚」であるとしているだけでなく「自分の死や有限性を思い起こさせるもの」とか「アニマル・リマインダー(自分が動物であることを思い起こさせる

                              「怒り」はよくて「嫌悪感」はダメなのか?(読書メモ:『感情と法』②) - 道徳的動物日記
                            • 【翻訳】「追悼のコンパスーー暴力と暴力を非難することについて」(ジュディス・バトラー)|カフェ・フスタート

                              本稿は、10月13日にLondon Review of Booksで公開された"The Compass of Mourning Judith Butler writes about violence and the condemnation of violence"の全訳です。太字強調は訳者によるものです。 10月7日から続くハマースとイスラエルの紛争に際して、ジュディス・バトラーが書いた論考です。Compass は羅針盤を意味すると同時に、範囲・限界を意味します。アメリカやヨーロッパの政府・メディア・社会の対応や反応に対する批判であることを意識して読むと、わかりやすいかもしれません(そもそも訳の日本語がよくないかもしれませんが……)。 悲しみと怒りと絶望で、何も言葉にできない今、せめて出来ることをと思い、訳しました。誤訳の訂正・改訳の提案はコメント欄かTwitterにお寄せください。 社

                                【翻訳】「追悼のコンパスーー暴力と暴力を非難することについて」(ジュディス・バトラー)|カフェ・フスタート
                              • つれづれなるままにポリコレ(加筆修正) - はてブの出来事

                                ※10/10 08:3514:30  10/11全体に加筆した。 何周遅れかわからないが、今さら温泉むすめの炎上元になったツイートを見る機会があり思ったことをつれづれなるままに書く。主にポリコレについて書く。 もともとは以下の記事に温泉むすめについての反射的な感想を書いていたのだが、 shin-fedor.hatenablog.com 書いてるうちに思考が膨らんできたので別記事として、今の考えを雑多に書き残す次第だ。 起承転結も何もない垂れ流しなので悪しからず……。 テーマは ポリコレってなんなんだ? そもそもポリコレに正当性はあるのか? ポリコレはこれからどこに行くのか? 俺のポリコレ感覚は? 金カムで一番好きなキャラはチンポ先生 といったところ。結論めいたものに着地することはない。わりと行ったり来たりする。つれづれだからね。 ポリティカル・コレクトネスとは何か? 「ゴールデンカムイ」は

                                  つれづれなるままにポリコレ(加筆修正) - はてブの出来事
                                • 足音を殺して歩く癖が有る。

                                  昔からの癖で、ついつい足音を立てずに歩く。 いつ頃からそうするようになったのか自覚は無いが、気づいた時には既に習性と云うかクセが身に付いていた。どうせ、パイナップルARMYとかMASTERキートンとか、漫画の影響であろう。 とにかく、履物を身に付けていても脱いでいても、そうなってしまう。 そのせいで自宅では、妻の背後に気づかれないように立つ形になってしまい、結果的に彼女をビックリさせてしまうことが度々ある。妻よ、すまぬ。 職場でも似たようなことは度々あるが、これは別にすまぬとは思わない。一度も思わない。 別に殺し屋稼業を目指していた訳でも、ましてや開業している訳でも無いので、このクセが役に立つことは特に無い。 その逆に、損をすることは、まま有る。 私は一度、街中を歩いていた時に、見知らぬ女性から裏拳を顔に当てられた経験が有る。その女性が一緒に連れ立って歩いていた子供―――おそらくは彼女の子

                                    足音を殺して歩く癖が有る。
                                  • 生物学者に「道徳」は語れるか?(『社会はなぜ左と右にわかれるのか』+『社会はどう進化するのか』読書メモ) - 道徳的動物日記

                                    社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学 作者:ジョナサン・ハイト 紀伊國屋書店 Amazon 〔ジョシュア・グリーンによる「カントの魂の密かなジョーク」論文に関して〕 これは統合知の格好の例である。ウィルソンは一九七五年に、「倫理学はすぐに<生物化>され、脳における<情動センター>の活動を解釈するものとして再構築されるだろう」と予言したが、この考えは、当時の支配的な見方に真っ向から逆らうものだった。何しろコールバーグらの心理学者によって、倫理学の中心は情動ではなく嗜好であるとされていた頃のことだ。当時の政治的な風潮は、進化思考が、人間の行動を探求するための妥当な方法だとあえて示唆するウィルソンのような人物に対し、きわめて辛辣だった。 しかし、それから三十三年後にグリーンの論文が執筆される頃には、すべてが変わっていた。多くの研究分野の科学者は、情動を含めた無意識的なプ

                                      生物学者に「道徳」は語れるか?(『社会はなぜ左と右にわかれるのか』+『社会はどう進化するのか』読書メモ) - 道徳的動物日記
                                    • たった1杯のお酒で道徳的判断が変わるという研究結果 : カラパイア

                                      みんなでわいわいお酒を飲んで、大いに盛り上がった翌日、自分の行動や言動を思い出して恥ずかしくなる、罪悪感に襲われる、そんな経験はあるだろうか? ポーランドの大学では、アルコールが私たちの道徳心に与える影響をについての研究を行っており、普段なら絶対やらないようなことでも、お酒が入るとついやってしまう理由を説明している。 『Psychopharmacology』(2023年8月9日付)に掲載された研究によれば、たった1杯お酒を飲んだだけで、道徳心が緩み、通常なら絶対にしないようなことでも、やってしまうようになるのだそうだ。

                                        たった1杯のお酒で道徳的判断が変わるという研究結果 : カラパイア
                                      • 「ナオミ・クライン的なるもの」に対するジョセフ・ヒースの解毒剤 - 道徳的動物日記

                                        「経済学101」では、政治や経済について論じるカナダの哲学者、ジョセフ・ヒースのブログも訳されている。 econ101.jp econ101.jp 上記の記事ではどちらもかなり重要なことが書かれていると思うが、その一方で(特に日本の読者にとっては)さして重要でないことや時節が過ぎたことも書かれていたりするし、なにしろ長い。というわけで、残念ながら、訳者(わたしや青野さん)が期待したほどには読まれていないようだ。 どちらの記事も訳してから数年経過していることだし、「有益であるな」と特にわたしが思う部分を、こちらのブログに引用してしまおう(読みやすくなるように改行も加えている)。 私が最終的に辿り着いた答えは、価格付けシステムは大半の人々が持っている道徳的直感に反するということであり、そしてクラインはその道徳的直感を物事に対して徹底的に当てはめているということだ。 彼女は「汚染者支払い」の原則

                                          「ナオミ・クライン的なるもの」に対するジョセフ・ヒースの解毒剤 - 道徳的動物日記
                                        • 冤罪から陰謀論まで 〈道徳感情〉で世界を読み解く【管賀江留郎×橘玲 特別対談】|Hayakawa Books & Magazines(β)

                                          冤罪、殺人、戦争、テロ、大恐慌――すべての悲劇の根本原因は、私たちの〈道徳感情〉にあった! 冤罪事件の考察を通じて人間本性を抉る話題作、管賀江留郎『冤罪と人類――道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)。本書の刊行を記念し、著者の管賀氏と、『言ってはいけない』『上級国民/下級国民』などの著作をもつ作家・橘玲氏との特別対談を公開します。 冤罪と道徳感情橘 『冤罪と人類』を読ませて頂きましたが、よくここまで調べたものだと驚きました。なかでも目から鱗だったのは、〈二俣事件〉最高裁の判事の話。一審二審とも死刑判決だったのを破棄して差し戻すというリベラルな判断ができたのは、実は自分たちが過去に同じような「冤罪体験」をしていたからだという。 管賀 道徳感情を掻き立てられると人々は真実が見えなくなり、無実の人を犯人だと思い込んで非難したりすることがあると理解するには、自分が体験

                                            冤罪から陰謀論まで 〈道徳感情〉で世界を読み解く【管賀江留郎×橘玲 特別対談】|Hayakawa Books & Magazines(β)
                                          • 江戸時代、混浴禁止に女性から非難轟々のわけ 明治時代には有馬温泉で伊藤博文が混浴禁止令、その顛末は | JBpress (ジェイビープレス)

                                            人間の歴史が始まって以来、いつの時代でも、どこの場所でも、不義、密通、不倫、背徳の男女関係は顕在し、性行為は躬行(きゅうこう)されてきた。 かつては「性道徳」という言葉が人々の性欲を縛っていた。 いまも、その言葉は細々と生き続けているものの、既に死語に等しいものになっているのが実情ではないだろうか。 私自身、性道徳という言葉に縛られる硬直した社会の風潮よりも、誰もが自由に解き放たれた嫋(たお)やかさを備えた世の中の方が、人間は基本的に幸せになのではないかと思うのである。 性道徳とは明治時代以降の西欧的近代主義と、キリスト教や儒教などの思想を混ぜ合わせた不合理で偽善的な如何物(いかもの)で、そこで強調されるのは、未婚の男女の「禁欲」と「純潔」を守ることだった。 誘惑に負けて禁欲を破ったりした若い男女は性道徳の前で罪悪感に苦しむことになる。そこから「性を恥ずべき罪だ」とする歪んだ意識が生まれ、

                                              江戸時代、混浴禁止に女性から非難轟々のわけ 明治時代には有馬温泉で伊藤博文が混浴禁止令、その顛末は | JBpress (ジェイビープレス)
                                            • 【第五福竜丸の記述も教材から削除】『はだしのゲン』に続き…広島市教育委員会の愚行が止まらない。 - ioritorei’s blog

                                              『はだしのゲン』に続き 第五福竜丸の記述も教材から削除 第五福竜丸の記述も教材から削除 広島市教育委員会の愚行が止まらない 記録より記憶 広島市教育委員会の愚行が止まらない 広島市教育委員会が市立の小中高校を対象にした「平和教育プログラム」の教材から漫画『はだしのゲン』を削除する方針を決めた問題で、米国のビキニ水爆実験で被爆した静岡県焼津市のマグロ漁船「第五福竜丸」の記述もなくすことが2023年3月1日、分かった。 教員用の指導資料には記述を残し、生徒に概要や参考文献を紹介するという。 第五福竜丸は69年前の3月1日、太平洋マーシャル諸島ビキニ環礁での水爆実験に遭遇し、乗組員23人全員が被爆した。 日本で反核運動が高まるきっかけとなった事件である。 平和教育プログラムで使う市教委作成の「ひろしま平和ノート」では、第五福竜丸は核兵器を巡る世界の現状を学習する中3の部分に掲載されている。 乗組

                                                【第五福竜丸の記述も教材から削除】『はだしのゲン』に続き…広島市教育委員会の愚行が止まらない。 - ioritorei’s blog
                                              • 謙虚さは重要だよ、年齢や時代に関係なく。

                                                きっついお話を先月のbooks&appsで見かけた。 実力も謙虚さもない年配者は、もう居場所がない。 結局のところ、実力に関わらず「素直さ」、「学ぼうとする意欲」、「ちょっとしたチームへの貢献」というのは、年齢関係なく、歓迎されるといえる。 要は年配になっても「謙虚さ」を保てるかどうか、という話に帰着する。 だが「そんなの無理」という年配者もいるだろう。 だが、こう考えてみてほしい。謙虚にふるまえるかどうかは「死活問題」だと。 シニアになってからのQOLに直結する話なのだと。 冒頭リンク先のお話をワンセンテンスにまとめるなら「実力もなければ謙虚さもない、そんな無能で鼻持ちならないシニアは忌避されるぞ」といった内容だし、たぶんそのとおりだと思う。 そして年上には謙虚さや徳の高さが(年下に比べて)期待されがちで、それもまた能力のうちなので、無能なうえに謙虚も欠如したシニアは二重に無能だ、とさえ

                                                  謙虚さは重要だよ、年齢や時代に関係なく。
                                                • 『システム正当化理論』内容紹介

                                                  なぜ隷従するのか? 迫害され不利益を被る人々が,不公正や搾取を引き起こす現存の社会システムを擁護し正当化するのはなぜか。自分自身や犠牲者を非難し,社会変革への抵抗を示すのはなぜか。社会科学に多大な影響を与えてきたシステム正当化理論について,理論的考究から実証研究,今後の展望までを詳述する待望の一冊。 目次 第1章 新たな「自発的隷従論」 第2章 社会的正義とは何か 第3章 システム正当化理論の知的源流,主要仮定,実用的関連性 第4章 ステレオタイプ化と虚偽意識の生成 第5章 システム正当化の心理――現状の合理化,劣位の内在化,自己・集団・システム正当化動機間で生じうる葛藤に関する18の仮説 第6章 勢力をもたない感覚は権力と階層の正当化を促進するのか 第7章 「貧しいけれど幸せ」――相補的ステレオタイプのシステムを正当化する可能性 第8章 少女と女性の従属と自己従属 第9章 公正「神」信念

                                                    『システム正当化理論』内容紹介
                                                  • 公務員がパチンコな…気に入らんね - 死体を愛する小娘社長の日記

                                                    世間では中国ウイルス騒ぎで パチンコ店の営業活動が問題だと騒いでいる これら休業要請は「感染を広げる可能性があるから」と云う事 でも私はそんな健康問題などどうでも良い。 パチンコ店が利益を上げる事自体が気に入らない そもそも私はパチンコ パチスロは大嫌いで、中国ウイルスなど無関係 社員のパチンコを全面禁止にしたい位だけどそうもいかないから、尚更、腹が立つ…(;¬_¬) 皆さんパチンコ店の全ては韓国朝鮮人(帰化も)が経営してる事はご存知の通り。 因みに純粋な日本人が経営するとメタメタに潰される。 まぁ…私がウチの近所で葬儀屋を始めた在日韓国人を、徹底的に叩き潰したのと同じ事。 私は常に道徳的な良い判断や、行動を選択して来たわけじゃ無いし、これからも自社、自社社員ファーストだ 在日韓国人や朝鮮人、帰化韓国朝鮮人にとって、一番の出世はパチンコ店のオーナーになる事。 パチンコ店も日本人の雇用に役立

                                                      公務員がパチンコな…気に入らんね - 死体を愛する小娘社長の日記
                                                    • 小学校における学習支援コンテンツ (令和2年3月11日時点):文部科学省

                                                      小学校における学習支援コンテンツ (令和2年3月11日時点) 臨時休業期間における各教科等の家庭学習の教材及び工夫例(小学校) (1)国語 (2)社会 (3)算数 (4)理科 (5)生活 (6)音楽 (7)図画工作 (8)家庭 (9)体育 (10)特別の教科 道徳 (11)外国語・外国語活動 (12)総合的な学習の時間 (13)特別活動 キャリア教育 <各教科等において共通して活用できるリンク集> ○NHK for School(スマートフォン向けアプリあり) 「おうちで学ぼう!NHK for School」 https://www.nhk.or.jp/school/ouchi/ (1)国語 <工夫例> ○「話すこと・聞くこと」の学習については、教科書に掲載されている教材を基本とした上で、例えば、スピーチやプレゼンテーション、インタビュー、話合いなどの内容や構成、表現の仕方などについて考え

                                                        小学校における学習支援コンテンツ (令和2年3月11日時点):文部科学省
                                                      • 「あなたのために、してあげたのに!」は、自分軸の心の現れ!? - うつ夫とパニコの人生いろいろ

                                                        うつ夫がよく言われてしまうセリフ。 「あなたのために、してあげたのに!」 このセリフは、うつ夫がよく言われてしまうセリフである(汗) これも、彼を悩ます要因の一つであり、彼自身なぜそう言われてしまうのか、ずっと疑問に思ってきた。 おそらくその理由は、彼の持つ、ほんわかとした雰囲気によるものなのだと思う。 うつ夫は、ほんわかしている上に、(前回の記事でも触れたとおり)人と少し観点が違っている。 そのため、周りの人に「わかってない人」という印象を持たれてしまう。だから、多くの人は、うつ夫にアドバイスをしたくなるのだ(汗) しかし、うつ夫としては、アドバイスを求めていないし、答えを急いでいるわけではない。マイペースに、あれこれ考えてみることを楽しんでいるのだ。 だから、アドバイスを受け取っても、それをそのまま実行するとは限らない。(もちろん、一つの意見として、受け止めはするのだけれど…) その結

                                                          「あなたのために、してあげたのに!」は、自分軸の心の現れ!? - うつ夫とパニコの人生いろいろ
                                                        • 江戸になかった“江戸しぐさ”が教育現場に残る理由 “偽史”指摘から10年後も「学校だより」で存在感(ABEMA TIMES) - Yahoo!ニュース

                                                          江戸時代の人々のふるまいとして、教科書にも掲載された「江戸しぐさ」。10年前にその存在を否定する声が歴史家などから相次いだが、現在も教育現場でたびたび登場することに、疑問の声が上がっている。 【映像】“江戸しぐさ”の矛盾 あなたは気づける? 「江戸しぐさ」とは、江戸の町で人々が互いに気持ちよく暮らすための知恵だということで、次のようなものがあるという。 傘かしげ=傘をさした人同士がすれ違う時に、相手をぬらさないよう互いの傘を傾けること。 こぶしうかせ=一人でも多くの人が座れるよう、みんなが少しずつ腰を上げて場所をつくること。 江戸しぐさはかつて複数の教科書で紹介されたほか、現在も文科省が教員向けに「道徳教育アーカイブ」として公開している教材の1つ、「私たちの道徳」に掲載されている。 これに対し、歴史家の原田実氏は10年前、著書『江戸しぐさの正体』(星海社新書)の中で、江戸しぐさのさまざまな

                                                            江戸になかった“江戸しぐさ”が教育現場に残る理由 “偽史”指摘から10年後も「学校だより」で存在感(ABEMA TIMES) - Yahoo!ニュース
                                                          • こなみひでお on Twitter: "「統一教会」から「世界平和統一家庭連合」への名称変更を認めた時の担当大臣が話題になっていますが 江戸時代にありもしなかった偽史「江戸しぐさ」を文部科学省発行の道徳教材に掲載したのが,『私たちの道徳 小学五・六年生』 この時の文部… https://t.co/tCERX3On1h"

                                                            「統一教会」から「世界平和統一家庭連合」への名称変更を認めた時の担当大臣が話題になっていますが 江戸時代にありもしなかった偽史「江戸しぐさ」を文部科学省発行の道徳教材に掲載したのが,『私たちの道徳 小学五・六年生』 この時の文部… https://t.co/tCERX3On1h

                                                              こなみひでお on Twitter: "「統一教会」から「世界平和統一家庭連合」への名称変更を認めた時の担当大臣が話題になっていますが 江戸時代にありもしなかった偽史「江戸しぐさ」を文部科学省発行の道徳教材に掲載したのが,『私たちの道徳 小学五・六年生』 この時の文部… https://t.co/tCERX3On1h"
                                                            • 「現実と幻想の区別」が全地球単位で失われたコロナとワクチン後の世界 - In Deep

                                                              ブログ記事の引用・転載はすべて自由です。その際、ページのリンクを示していただけると嬉しいです。以下でキーワード記事検索ができます。 さらに「新しいディストピア化」が進む中で コロナワクチンのさまざまなことを知った中で、最もショックだったのは、「毒性 0.5%問題」を知った時でした。以下の記事にあります。 [記事] 願望の実現 In Deep 2022年1月9日 引用したのは海外の以下の分析データでした。 > VAERS (米国CDCワクチン有害事象報告)では、200回に1回のワクチンロット(約0.5%)が「毒性が高く」、短期的には入院、障害、死亡などの重篤な副作用が多数(ベースライン率の1000〜5000倍)あることを示している。 > > 70%は、短期間の有害事象が1つだけ報告されていた。80%は、1つまたは2つの短期的な有害事象のみが報告されていた。 (hillmd.substack.

                                                              • 押し付けないで! - ピラビタール

                                                                ビーガニズムにせよ反出生主義(アンチナタリズム)にせよ、何らかの倫理的なism(イズム)を主張する者は、ほぼ必ず「価値観を押し付けないでほしい」という反発に直面する。ビーガンならば、「自分が肉を食べないのは勝手だが、他人に肉を食べないように押し付けるべきではない」という反発を食らったことが一度はあるのではないか。アンチナタリズムも同様であろう。「自分が子供をもうけないのは好きにしたらいいが、他人の決定に口をはさむべきではない」という反発は頻繁に見かける。 今回の記事では、何らかの倫理的なismの主張に対して、「その価値観を押し付けるな」と反発することが不可能であること、不当であること、そして的外れであることを、3つの観点から解説する。(書き終わってから気が付いたが、ビーガニズムの話題がメインで、反出生主義の話はほとんど出てこない。しかし反出生主義にも以下の議論はまったく同様に適用できる)

                                                                  押し付けないで! - ピラビタール
                                                                • 書評 「Rationality」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

                                                                  Rationality: What It Is, Why It Seems Scarce, Why It Matters 作者:Pinker, StevenAllen LaneAmazon 本書はピンカーによる「合理性」についての一冊.ピンカーは「The Better Angels of Our Nature(邦題:暴力の人類史)」,「Enlightenment Now(邦題:21世紀の啓蒙)」において,世界がより良い方向に向かってきたこと,そしてそのコアには啓蒙運動があることを語ってきた.その啓蒙運動の大きな柱が合理性ということになるが,合理性をめぐって近年様々な懐疑論がはびこっている現状を受けて今回「合理性」を取り上げたということになる.そのあたりの背景は「What it is, Why it seems scarce, Why it matters 」という副題によく表されている.本

                                                                    書評 「Rationality」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
                                                                  • 倫理学の入門書 | 江口某の不如意研究室

                                                                    前にも書いたんですが、学生様に倫理学の入門書ガイドを出す必要があって作ってみました。あんまりよい本がない…… ジェームズ・レイチェルズ『現実を見つめる道徳哲学』。お勧め。これ一冊で倫理学入門卒業も可。 しかし読みきるのはけっこう骨なので、同時に数冊読む必要があるかもしれない。柘植尚則『プレップ倫理学』。超初歩。レイチェルズ読む前に。児玉聡『功利主義入門』。倫理学がなんであるのかというのはこういうのの方がわかりやすいかもしれない。品川哲彦『倫理学入門』。よい入門だが、ちょっとクセがある。ジュリアン・バジーニ『ビッグクエスチョンズ・倫理』。まあ入門。『倫理学の道具箱』。事典みたいに読む。サンデル『これからの正義の話をしよう』。定番。エドモンズ『太った男を殺しますか?』。トロッコ問題に興味ある人に。ジョナサン・ハイト『しあわせ仮説』、『社会はなぜ左と右にわかれるのか』。倫理学というよりは道徳心理

                                                                    • 近代哲学の祖、カントが唱えた批判主義と道徳とは?【四聖を紐解く②】

                                                                      東洋大学 法学部 法律学科 教授 博士(文学)。関東医学哲学・倫理学会運営委員、日本医学哲学・倫理学会、日本哲学会、日本カント協会所属。哲学、倫理学を専門とし、討議倫理・討議理論やケア倫理、ターミナルケアなどを研究。主な著書に、『討議倫理学の意義と可能性』(法政大学出版局)、『21世紀の人間論的課題 医療と人間』「医療におけるコミュニケーション」「健康と病気 医療と文化」(ナカニシヤ出版)、『哲学をしよう』Ⅲ―5「死」(大成出版社)など。 遅咲きの哲学者、カントの生涯 ▲東洋大学の全キャンパスに設置されている四聖のレリーフ カントと聞いて、『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』の三批判書を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。彼は18世紀を代表する哲学者にして近代哲学の祖といわれています。 というのも、「コペルニクス的転回」と呼ばれる認識論上の革命を起こした『純粋理性批判』、普

                                                                        近代哲学の祖、カントが唱えた批判主義と道徳とは?【四聖を紐解く②】
                                                                      • 正義恐怖症のみなさんへ|青識亜論

                                                                        インターネットの空間において、正義という言葉は実に嫌われ者である。「正義アレルギー」が蔓延していると言ってもいい。 出典:パワプロクンポケット7(黒野博士の台詞より)「正義の反対は悪ではない。別の正義だ」 「のび太のパパ」や「野原ひろし」など、様々なキャラクターの口を借りて、繰り返し語られてきたこの名言は、そのたびにインターネットの民から喝采をもって肯定されてきた。 正義の御旗を掲げて、誰かを炎上させ、表現物を燃やし、社会から排除する。SNSの炎上からオープンレターに至るまで、そうした動きを嫌というほど見せられてきたのだから、正義に対する不信感を超えて、嫌悪につながったとしても、むべなるかなという気持ちは否めない。 下記の漫画も、そのような正義に嫌気がさした人々が、インターネットで好んで引用してきた作品である。 磨伸映一郎『氷室の天地』第12巻より その一方、そんな正義アレルギーへの異議申

                                                                          正義恐怖症のみなさんへ|青識亜論
                                                                        • 佐々木拓「非難の倫理学は何を説明しようとしているのか」(『哲学・人間学論叢』8号、2017年、1-14頁)についてのコメント|山口尚

                                                                          佐々木拓「非難の倫理学は何を説明しようとしているのか」(『哲学・人間学論叢』8号、2017年、1-14頁)についてのコメント 2017年春に先輩の倫理学者・佐々木拓の論文「非難の倫理学は何を説明しようとしているのか」(『哲学・人間学論叢』、8号、2017年、1-14頁)を読んだ。そのさいに書いたコメントがあるので、以下でアップロードしておく。ちなみにこの論文は次のリンク先で読むことができる。 https://core.ac.uk/download/pdf/196700990.pdf あらかじめ述べておくべき注意点がひとつある。2017年と2020年の間で「非難の哲学」や「非難の倫理学」の状況は若干変化した。わが国においてもそれを論じるひとが少し増えだ、ということだ。一昨年あたりから佐々木が勤める金沢大学で非難の哲学・倫理学の研究会も催されている。 >>>>> 先日、佐々木拓さんから頂いた「

                                                                            佐々木拓「非難の倫理学は何を説明しようとしているのか」(『哲学・人間学論叢』8号、2017年、1-14頁)についてのコメント|山口尚
                                                                          • テクノロジーがヘイトの温床になるとき

                                                                            2019年3月に起こったクライストチャーチにおけるテロは私たちに、白人至上主義が現実に存在すること、そしてテロリストは社会の周縁ではなく、私たちにとってもっとも神聖な信仰の場にも現れるということを思い知らせました。人々はネットユーザーに、彼の地で起こった大量殺人を記録した動画や、白人至上主義のテロリストが書いた悪意に満ちたマニフェストを拡散しないように求めています。自分が残したヘイトメッセージを世界の果てまで広げることこそが、テロリストの望みなのです。 いまの時代、私たちは自宅に居ながらにして、大量殺人やヘイトクライムの様子を動画で見ることができます。子どもたちさえ、こうした動画にアクセスすることができるのです。 ムスリムではない、この出来事からは遠い場所にいるような私でも、事件の犠牲になったムスリムのコミュニティの人たちのことを考えると胸が痛みます。だからこそ、このような出来事に対して私

                                                                              テクノロジーがヘイトの温床になるとき
                                                                            • 怠惰への賛歌

                                                                              私たちの世代は多くがそうだと思うが、私もまた「怠け者のところにはサタンがやってきて悪事をさせるぞ」と言われて育った。私はとても道徳心の強い子供だったので、言われたことは全て信じた。そのおかげで、私の良心は昔から今にいたるまで、私を勤勉な人間に律している。しかし、良心は私の行動こそコントロールしているが、私の思考は反逆を企てている。世界になすべき仕事が多くあることは、私も認めよう。しかし同時に、労働は美徳であるという信念は甚大な被害をもたらしており、現代の産業国において説くべきことは、これまでずっと説かれてきたこととは異なると思うのだ。ナポリの旅人の話はみんな知っているだろう。彼は日向ぼっこしている12人の乞食を見て(この話はムッソリーニが政権をとる前の話だ)、「この中で一番の怠け者に1リラやろう」と言った。乞食のうち11人は先を争うように彼に飛びついてきたので、彼は残る一人に金を渡した。こ

                                                                              • グローバル化とテクノロジー革命によって国境がなくなり「上級国民(適正者)」と「下級国民(不適正者)」に二極化していく【橘玲の日々刻々】(ダイヤモンド・ザイ) - Yahoo!ニュース

                                                                                グローバル化とテクノロジー革命によって国境がなくなり「上級国民(適正者)」と「下級国民(不適正者)」に二極化していく【橘玲の日々刻々】 昨年末に話題の翻訳書が相次いで刊行された。前回はスティーブン・ピンカーの『21世紀の啓蒙』(草思社)を紹介したが、今回は世界的ベストセラー『サピエンス全史』で知られるイスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの『21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考』(河出書房新社)を見てみよう。 [参考記事] ●「世界がどんどん悪くなっている」というのはフェイクニュース。先進国の格差拡大にも関わらず「公正なルール」のもとでの不平等は受け入れられる この順番にしたのにはじつは理由がある。ピンカーとハラリは、産業革命以降の“テクノロジー爆発”によって世界がどんどんゆたかで平和になっており、ひとびとはより幸福になった(はず)という事実(ファクト)を共有している

                                                                                  グローバル化とテクノロジー革命によって国境がなくなり「上級国民(適正者)」と「下級国民(不適正者)」に二極化していく【橘玲の日々刻々】(ダイヤモンド・ザイ) - Yahoo!ニュース
                                                                                • 黒人暴行死事件で軍出動を宣言したトランプ米大統領 これでは香港国家安全法を強行する習近平氏と同じだ(木村正人) - エキスパート - Yahoo!ニュース

                                                                                  人種間の分断がもたらした混乱の渦にのみ込まれた米国[ロンドン発]白人警察官による黒人暴行死事件への抗議デモが拡大し、一部で暴徒化している問題で、アメリカのドナルド・トランプ大統領は1日、ホワイトハウスで市や州が暴力阻止に向け行動をとらないのなら全米に軍隊を展開することも辞さないと宣言しました。 新型コロナウイルス・パンデミックへの対策が遅れ、10万人を超える死者を出したアメリカは今度は、人種間の分断がもたらした混乱の渦に完全にのみ込まれています。時代に置き去りにされた白人の怒りに火を放ち、分断を広げてきたトランプ大統領が演説した内容は次の通りです。 「私の最も大事な責務は偉大な国とアメリカ人を守ることだ。われわれの政権は被害者ジョージ・フロイド氏と家族のために正義が行われることを約束している。暴動の最大の犠牲者は最も貧しい地域の平和を愛する市民だ」 「多くの州および地方自治体は、住民を保護

                                                                                    黒人暴行死事件で軍出動を宣言したトランプ米大統領 これでは香港国家安全法を強行する習近平氏と同じだ(木村正人) - エキスパート - Yahoo!ニュース