アカデミー賞に出た気分だった。2019年11月3日、国際教養大学4年の榎田剛志とジョシュ・ウェストブルックは都内ホテルのパーティ会場にいた。国際統括団体のワールドラグビーが優秀選手やチームなどを表彰するワールドラグビーアワードに出るためだ。 秋田の公立大学のラグビー部員である2人がこの式典に出たのは、前日までのワールドカップ日本大会で優勝した南アフリカ代表のリエゾンを務めていたからだ。リエゾンとは大会に出るチームの生活をサポートする世話役で、榎田、ジョシュの順に応募。審査の末、世界的強国の通称「スプリングボックス」に配属されたのだ。 チームが来日してからの約2か月間は大会組織委員会から支給された水色のポロシャツで汗をかき、最後の最後は気慣れぬフォーマルな装いでレッドカーペットを踏み、オーロラビジョンの光を浴び、世界的なスター選手を目にすることができた。2人は、チームスタッフからこう声をかけ