2つのエピソードを思いだしている。 1つは歌い方についてのものだ。 忌野清志郎は、歌うときにマイクを左手に持っていた。その理由は、心酔していた黒人ソウルシンガー、オーティス・レディングがそうやっていたからだと言った。 もちろん本物を見てそうしたのではない。雑誌に載っていた数少ない写真の真似(まね)だった。 ただ、後になって確かめたときには、普通の人のように右手でマイクを持っていた。彼が見た写真が、編集者のミスで反転されて印刷されたものだった、というのである。 彼はその話をしながら「オーティスの写真なんて当時、どこにも載っていなかったんだよ」と苦笑いした。 もう1つは、1972(昭和47)年に出たRCサクセションのデビューアルバム「初期のRCサクセション」にまつわるものだ。 記念すべきアルバムにはバンドのメンバー以外にもミュージシャンが加わっている。彼は、「出来上がって初めて知った」と言った