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ブックマーク / www.tachibana-akira.com (147)

  • 第84回 金融リテラシー 高齢者にこそ(橘玲の世界は損得勘定) – 橘玲 公式BLOG

    かんぽ生命保険が、保険の乗り換えで顧客が不利益を被った事例が5年間で2万件以上あると発表した。健康状況の告知などで新契約が結べなかったり、告知書類の記入不備などで保険金が受け取れなかったりしたのだという。契約者からの二重徴収の疑いも発覚し、法令に抵触する可能性も指摘されている。 この問題については、2018年4月にNHK「クローズアップ現代」が、「郵便局が保険を“押し売り”!?~郵便局員たちの告白~」として取り上げている。それから1年以上たち、金融庁からも報告を求められたことで、しぶしぶ実態を認めたのだろう。 NHKの番組は、「高齢の母が、郵便局員に保険を押し売りされた」という1通のメールから取材が始まった。同様のトラブルがないかSNSで情報提供を呼びかけたところ、わずか1カ月で400通を超えるメールが届き、その大半が現役職員など郵便局の関係者からだった。「郵便局というだけで、高齢者の場合

    第84回 金融リテラシー 高齢者にこそ(橘玲の世界は損得勘定) – 橘玲 公式BLOG
  • 知識社会におけるもっとも不愉快な事実(ファクト) 週刊プレイボーイ連載(394) – 橘玲 公式BLOG

    ひとはみな、さまざまな能力をもって生まれてきます。それにもかかわらず、私たちが生きている「知識社会」では、言語運用能力と論理・数学的能力が高い者だけがとてつもなく有利になります。 子どもたちの知的能力を評価し選抜するのが学校システムで、ノーベル賞を取るような天才でなくても、よい大学を卒業すればおおむねよい生活が保証されます。それに対して足が速い(運動知能)とか歌がうまい(音楽知能)とかは、きわだって高い能力をもち、圧倒的な努力をし、なおかつ幸運に恵まれなければ成功できません。 誰もが知っていながら口を閉ざしている事実(ファクト)とは、「知識社会における経済格差は“知能の格差”の別の名前」ということです。 知識社会のもうひとつのタブーは、「すべてのひとが一定以上のリテラシー(知的能力)をもっている」という「虚構」を前提に社会が成り立っていることです。 福祉国家は、身体的・精神的障がいなどで生

    知識社会におけるもっとも不愉快な事実(ファクト) 週刊プレイボーイ連載(394) – 橘玲 公式BLOG
  • そしてすべてが善悪二元論になる 週刊プレイボーイ連載(353) – 橘玲 公式BLOG

    東京オリンピックを目指す女子体操選手へのパワハラ問題で、日体操協会が大混乱しています。一連の経緯をざっとまとめると、こんな感じになるでしょう。 (1) 女子代表候補選手を指導する男性コーチに対して、日体操協会が、暴力行為(体罰)を理由に無期限の登録抹消処分を課した。 (2) 当の女子体操選手が記者会見し、コーチの体罰を「指導」だと受け入れていたことを認めたうえで、調査の過程で体操協会の役員夫婦から、自分たちが運営するクラブに移籍するよう強要されたと「パワハラ」を告発した。 (3) 体操協会が第三者委員会による調査を発表し、役員夫婦は職務一時停止の処分を受けた。 (4) 民放テレビが、体操クラブの練習場で男性コーチが女子選手をはげしく平手打ちする「暴力映像」を公開。 (5) 女子選手が、「自分を貶めるために無断で過去の映像を放映した」とテレビ局に抗議。 こうした出来事が2週間ほどのあいだ

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  • 「保守のジャンヌ・ダルク」はどこで地雷を踏んだのか? 週刊プレイボーイ連載(349) – 橘玲 公式BLOG

    自民党に所属する保守派の女性議員が雑誌への寄稿で、「LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)」に対し、「彼ら彼女らは子供をつくらない、つまり「生産性」がないのです」と述べたことが激しい批判にさらされています。 これまでこのコラムで何回か、「世界の価値観はリベラル化しており、日も半周遅れで追随している」と書きました。しかし今回の事件は、日の「右傾化」を象徴しているのではないでしょうか。 その後の展開を見るかぎり、じつはそうともいえません。 「中国」や「韓国」、「リベラル」には過剰なくらいの批判(しばしば罵詈雑言)をしている右派論壇のひとたちは、この件については奇妙なことにみな沈黙を守っています。私が目にした唯一の「擁護」は「新しい歴史教科書をつくる会」創設メンバーの一人である藤岡信勝氏によるもので、「「『生産性』という言葉は(中略)引用符が施されており、(中略)誤

    「保守のジャンヌ・ダルク」はどこで地雷を踏んだのか? 週刊プレイボーイ連載(349) – 橘玲 公式BLOG
  • 死刑制度は存続するが執行しないという選択 週刊プレイボーイ連載(348) – 橘玲 公式BLOG

    麻原彰晃らオウム真理教事件の確定囚7人が死刑執行されたのにつづいて、残る6人の確定囚の死刑も7月26日に執行されました。1カ月のあいだに2度、13人もの死刑執行は日だけでなく世界に波紋を広げています。 前提として、民主国家において量刑は有権者の総意によって決められるもので、国民の8割が死刑制度を容認している日で、人権団体や欧州諸国からの批判を根拠にいますぐ死刑を廃止するのは現実的ではないことを確認しておきましょう。政治家が国会で死刑制度を議論できるようになるためには、現在1割以下しかいない廃止派がせめて4割に近づかなくてはなりません。 しかしそれにもかかわらず、今回の大量死刑執行に納得しがたいものを感じたひとも多いのではないでしょうか。 死刑を支持する背景には、「重罪は死をもって償うべき」という道徳観があるとされています。犯罪被害者が極刑を望んでいることや、死刑があることで犯罪が抑止さ

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  • 女児虐待死事件でメディアがぜったいいわないこと 週刊プレイボーイ連載(343) – 橘玲 公式BLOG

    目黒区で5歳の女児が虐待死した事件では、「きょうよりか もっともっと あしたはできるようにするから もうおねがい ゆるして」などと書かれたノートが発見され、日じゅうが大きな衝撃に包まれました。このような残酷な事件が起きないようにするために、いったいなにができるでしょうか。 この事件について大量の報道があふれていますが、じつは意図的に触れていないことが2つあります。 女児を虐待したのは義父で、母親とのあいだには1歳の実子がいました。じつはこれは、虐待が起こりやすいハイリスクな家族構成です。 父親は自分の子どもをかわいがり、血のつながらない連れ子を疎ましく思います。母親は自分の子どもを守ろうとしますが、それ以上に新しい夫に見捨てられることを恐れ、夫に同調して子どもを責めるようになるのです。なぜなら進化論的には、ヒトは自分の遺伝子をもっとも効率的に残すよう“プログラム”されているから……。 こ

    女児虐待死事件でメディアがぜったいいわないこと 週刊プレイボーイ連載(343) – 橘玲 公式BLOG
  • 日本企業は「体育会系」大好き、日本社会は「運動部カルト」 週刊プレイボーイ連載(339) – 橘玲 公式BLOG

    すこし前のことですが、ヘッドハンティングを仕事にしているひとの話を聞いたことがあります。新しい部署や事業部を任せられる幹部を、年収1000万円から3000万円で探すよう頼まれるのだといいます。 ヘッドハンターによると、日企業と外資系企業では採用基準がちがうそうです。 外資系企業が評価するのは学歴・資格・職歴・経験、そしてなにより実績で、男女の別や国籍・人種は問いません。それに対して日企業は「男性」「日人」が当然の前提で、女性や外国人はそもそも検討の対象にもなりません。 こういうところに日企業の差別的な体質が現われていますが、それは容易に想像できます。興味深いのは、外資系企業がまったく関心を示さないのに、日企業にとってきわめて重大な属性があることです。それが「体育会」です。 「いつも不思議に思うんですけど」と、ベテランのヘッドハンターはいいました。「大学の運動部出身というと、どこも

    日本企業は「体育会系」大好き、日本社会は「運動部カルト」 週刊プレイボーイ連載(339) – 橘玲 公式BLOG
  • シリア内戦―過去の失敗に学ぶと子どもたちが死んでいく 週刊プレイボーイ連載(329)  – 橘玲 公式BLOG

    ひとは過去の失敗に学ぶことがあるのでしょうか? 5年ほど前に「シリア内戦―誰にも止められない殺し合い」という記事を書きました。宗教的少数派であるアサド政権は権力を失えば“皆殺し”にされることがわかっているので、神経ガスでもなんでも使って敵を“皆殺し”にするしかないという話で、実際、その後の展開は予想どおりになりました。 とはいえ、これは私に先見の明があったということではありません。中東に詳しい知人は、「専門家ならみんな知っていること」といっていました。 ところが不思議なことに、中東の専門家がたくさんいるはずのEUやヨーロッパ諸国は、「シリアを民主化する」という大義を掲げて自由シリア軍などに大量の武器を渡しました。これに対してロシアのプーチン大統領は、「権力の空白より独裁の方がはるかにマシだ」と警告しましたが、ヨーロッパの理想主義者たちはまったく耳を貸しませんでした。 その結果、混乱に乗じて

    シリア内戦―過去の失敗に学ぶと子どもたちが死んでいく 週刊プレイボーイ連載(329)  – 橘玲 公式BLOG
  • 「働き方改革」の第二章は「解雇自由化」 週刊プレイボーイ連載(325) – 橘玲 公式BLOG

    「働き方改革」で政府は、同一労働同一賃金の実施を当初案から1年遅らせて、大企業は20年度、中小企業は21年度からにする方針とのことです。同じ仕事をしているのに待遇が異なるのは「身分差別」で、それを解消するのになぜ2年も3年も待たなくてはならないのかわかりませんが、「差別」の存在すら認めなかったことを思えば大きな前進です。それに対して、専門職に成果給を導入する「高度プロフェッショナル(高プロ)制度」は予定どおり19年4月からになりそうです。 ほとんど理解されていないようですが、これらの法律が厳密に適用されると「日的雇用」は根底から覆ります。 いまは「正社員への特別手当を非正規にも払え」というレベルの話ですが、すぐに「なぜ正社員は社宅に入居できて非正規は拒否されるのか」「親会社からの出向と子会社の社員で給与がちがうのは違法だ」という話になっていくでしょう。「一般職」を女性限定で募集するとか、

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  • 文庫版『国家破産はこわくない』まえがき – 橘玲 公式BLOG

    文庫版『国家破産はこわくない』のまえがきを、出版社の許可を得て掲載します。 ****************************************************************************************** 書は2013年3月に発売された『日の国家破産に備える資産防衛マニュアル』(ダイヤモンド社)を文庫化したものです。 親の発売当時はギリシアが国家破産寸前に追い込まれ、地中海の島国キプロスはそのギリシアに多額の融資をしていたことで財政破綻し、実質的な「金融封鎖」に追い込まれました。島内の銀行は2週間にわたって閉鎖され、顧客は預金を引き出すことができなくなり、EUによる支援の条件として10万ユーロ超の預金に9.9%、それ以下の金額に6.7%が課税されることが発表されて大騒動になりました(その後、修正のうえ大口預金者のみが負担)。 その一

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  • 安倍政権はますます「リベラル化」していく 週刊プレイボーイ連載(320) – 橘玲 公式BLOG

    「女性が活躍する社会」や「一億総活躍」を掲げる安倍政権は「リベラル」だとこれまで何度か指摘しましたが、いまや首相自らが「私がやっていることは、かなりリベラルなんだよ。国際標準でいえば」と周囲に解説しているそうです(朝日新聞2017年12月26日朝刊)。 しかしこれは、驚くようなことでありません。安倍政権がリベラル化する理由は、次の2つで説明できます。 ひとつは「右」にライバルがいないこと。一時は小池都知事が「日ファースト」を掲げて右派=ネオリベ層を奪取するかに思われましたが、昨年の総選挙で見事に失速したことで、「右」のひとたちは多少の不満はあっても安倍政権を支持するほかなくなりました。その一方で、民進党の分裂で「左」に広大なフロンティアが開けたのですから、憲法改正の悲願を達成するためにも、リベラルな政策で支持層を拡大していくのは当然の戦略です。 もうひとつは、「リベラル」以外に政策の選択

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  • 日本は世界でもっとも格差の小さな社会? 週刊プレイボーイ連載(311) – 橘玲 公式BLOG

    なんのためにやったのかよくわからない総選挙の結果は、事前の予測どおり与党が安定多数を確保し、いささか賞味期限の切れかけた安倍政権で2020年の東京オリンピックを迎えることになりそうです。変化があったとすれば民進党(衆院)が分裂し、小池東京都知事が率いる希望の党が失速、立憲民主党が大きく票を伸ばしたことでしょうか。 今回の選挙で明らかになったのは、ひとびとが“右傾化”しているわけではなさそうだ、ということです。安倍政治にうんざりした有権者は、現状が大きく変わらないのであれば、右(小池新党)でも左(枝野新党)でもどちらでもかまわなかったのです。嫌われていたのは民主党=民進党で、政権党時代のスティグマがこれほど深く刻印されていては解党以外に道はなかったでしょう。 立憲民主党の枝野代表は自らを「リベラル保守」と述べており、日政治は“共産党以外ぜんぶ保守”という奇妙な状況になってしまいました。こ

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  • 左右の”コピー戦略”で自民党は消滅する? 週刊プレイボーイ連載(309) – 橘玲 公式BLOG

    *10月6日執筆10月16日発売号に掲載された記事を、選挙結果を受けて若干加筆しました。 1週間ほど海外にいたら、民進党(衆院)が希望の党に吸収され、「選別」から落ちた議員が立憲民主党を設立して、日政治の景色はすっかり変わってしまいました。国内は大騒ぎですが、CNNやBBCなど海外メディアではまったく報じられていませんでした。もはや日政治は、国際的なニュースにはならないのでしょう。 以前、このコラムで「自民党支配を終わらせるのは小池東京都知事の“保守vs保守”戦略」と書きましたが、その小池氏が希望の党を立ち上げたことで、民進党の前原党首は、選挙での確実な敗北か、希望の党に救済してもらうかの究極の選択に立たされました。いまは強い批判にさらされていますが、あのまま民進党で選挙に挑んでもなんの可能性もなかったのですから、これは合理的な判断でしょう。 小池都知事が都議会選で自民党を圧倒した

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  • 国民の7割が生活に満足しているのに政権交代はある? 週刊プレイボーイ連載(307) – 橘玲 公式BLOG

    *9月22日執筆、10月2日発売号の記事です。その後、日政治状況は大きく変わりましたが、論旨に変更はないのでオリジナルのまま掲載します。 安倍首相が臨時国会冒頭での解散を決めたことで、政界は選挙一色になりました。これについては、「森友・加計の疑惑隠しだ」との批判があり、それはたしかにそのとおりなのですが、それが許されないことであれば有権者がそう判断するでしょう。「北朝鮮がミサイル発射を繰り返しているときに政治の空白をつくるな」との意見もあるようですが、そうなると日政治を金正恩が決めていい、ということになってしまいます。国会を解散させたくないなら、ミサイルを撃てばいいのですから。 すでに指摘されているように、首相が解散総選挙を決断したのは、(1)野党第一党の民進党が党首交代で混乱し離党者が相次いでおり、(2)政治的脅威になり得る小池東京都知事の「ファースト勢力」の準備が整わず、(3)

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  • 第71回 「内部留保で賃上げ」は誤り(橘玲の世界は損得勘定) – 橘玲 公式BLOG

    企業の労働分配率が43.5%に低下し、1971年以来46年ぶりの低水準になったという。その一方で内部留保は増えつづけ、2016年末で375兆円と過去最高を更新した。これを見て、「企業は内部留保を取り崩して賃上げすべきだ」と怒るひとがいまだにいる。 紙の読者には釈迦に説法だろうが、この理屈はものすごくおかしい。 株式会社は1年間の企業活動を決算し、利益に対して税金を払って、残った純利益を株主に分配する。このやり方には2つあって、ひとつは現金を配当することで、もうひとつは「株主資」に組み込むことだ。 こうして会社内に留められた純利益が「内部留保」だが、それは来株主のものだ。しかし日の経営者のなかには、純利益の半分を株主に配当すれば、残りの半分は会社にもの、すなわち「自分のもの」と思っているひとがものすごく多い。 株式会社の原則からいえば、純利益は全額、(会社の所有者である)株主に配

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  • 教育無償化の”不都合な真実” 週刊プレイボーイ連載(308) – 橘玲 公式BLOG

    「人づくり革命」を打ち出した安倍首相は、消費税の増税分を教育無償化や社会保障制度の充実にあてるとして解散・総選挙に踏み切りました。「コンクリートから人へ」を掲げて高校無償化を実現したのは民主党政権で、「保守・伝統主義」であるはずの安倍政権はますますリベラル化して、もはやかつての民主党と区別がつかなくなっています。 ところで「教育無償化」は、アメリカ経済学者でノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマンの研究を根拠にしているとされます。 1960年代に、3歳から4歳の子どもたちに就学前教育を行ない、その結果を40年にわたって追跡するという大規模な実験が行なわれました。ヘックマンはこの実験を詳細に検討し、教育支援を受けたグループは、高校卒業率や持ち家率、平均所得が高く、婚外子をもつ比率や生活保護受給率、逮捕者率が低いことを明らかにしました。社会全体の投資収益率は15~17%で、100万円

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  • ミサイルはこれからもどんどん飛んでくる 週刊プレイボーイ連載(305) – 橘玲 公式BLOG

    北朝鮮の金正恩委員長が「日人を驚愕させる」として打ち上げた中距離弾道ミサイル「火星12」が、北海道を通過して太平洋に落下しました(北朝鮮は9月15日にも北海道上空を通過するミサイルを打ち上げていますが、このコラムは8月29日の打ち上げ後に書いたものです)。 これを受けて安倍首相はトランプ米大統領と電話会談を行ない、国連安保理の緊急会合で北朝鮮非難の声明が出されました。しかし、度重なる北朝鮮のミサイル発射で明らかなように、「国際社会の圧力」は何の効果もありません。 もうひとつはっきりしたのは、北朝鮮が日の足元を見ていることです。グアムに向けてミサイルを発射すればアメリカはなにをするかわかりませんが、日列島を超えるだけなら、「キャンキャン」騒ぐだけでなんの実害もないのです。 これはゲーム理論における、古典的な「相互確証破壊」の問題です。相手への攻撃を控えるのは、そのあとの報復が怖いからで

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  • イスラーム原理主義より深刻な問題は「若い男」? 週刊プレイボーイ連載(304) – 橘玲 公式BLOG

    ヨーロッパでもっとも人気のある観光地のひとつバルセロナで、観光客ら15人が死亡、120人あまりが負傷するイスラーム過激派のテロが起きました。その後の捜査で、世界遺産サグラダ・ファミリア教会の爆破を計画していたこともわかり、世界じゅうに衝撃が広がっています。 実行犯グループはモロッコ国籍などのムスリムの若い男性12人で、イスラーム原理主義のイマーム(指導者)に洗脳され、ガスボンベを使った爆弾を製造していたとされています。そのイマームが実験中の爆発事故で死亡したため、捜査の手が及ぶのを恐れ、観光客であふれる歩行者天国に車で突っ込む凶行に及んだのです。 繰り返されるテロは「イスラームの問題」とされ、それがムスリムの反発を招き、双方が憎みあう悪循環に陥っています。 この隘路を抜けるには、白人主流派がムスリム移民への「暗黙の差別」を理解するとともに、ムスリムの側もイスラームの教義に「自由で民主的な市

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  • トランプはリベラル? レイシスト? 週刊プレイボーイ連載(303) – 橘玲 公式BLOG

    アメリカ南部のバージニア州シャーロッツビルに「白人至上主義」団体が集結し、極右の若者が集会に反対するひとたちに車で突っ込んだことで、死者1名と多数の負傷者が出ました。事件のきっかけは、南北戦争で南軍の英雄だったロバート・リー将軍の銅像を市内の公園から撤去しようとする計画に白人の極右団体などが反発したことです。 2015年6月に南部サウスカロライナ州チャールストンの黒人教会で極右の青年が銃を乱射し9人が犠牲になった事件を機に、南部連合の軍旗やリー将軍の銅像などを「奴隷制の象徴」として撤去する動きが広がりました。一部の白人がそれに反対しているのですが、ややこしいのは、リー将軍自身は奴隷制に反対しており、南北戦争後はバージニア州のワシントン大学学長に就任して南部復興に尽力するなど、人格者として高く評価されていることです。極右とその周辺のひとたちにとっては、奴隷制に反対した人物を「奴隷制の象徴」に

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  • 言ってはいけない真実が示す、親と子の幸福なあり方 – 橘玲 公式BLOG

    ジュディス・リッチ・ハリス『子育ての大誤解〔新版〕』のために書いた「解説」を、出版社の許可を得て掲載します。 *********************************************************************** 『子育ての大誤解』は掛け値なしに、これまででわたしがもっとも大きな影響を受けたのひとつだ。なぜなら長年の疑問を、快刀乱麻を断つように解き明かしてくれたのだから。 いまでいう「デキ婚」で24歳のときに長男が生まれたのだが、その子が中学に入るくらいからずっと不思議に思っていたことがあった。親のいうことをきかないのだ、ぜんぜん。 13~14歳のガキと30代後半の大人では、経験も知識の量も圧倒的にちがう。どちらが正しいかは一目瞭然なのに、それを理解できないなんてバカなんじゃないのか、と思った。 しかしよく考えてみると、自分も親のいうことをまったく

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