人は何故、「悪」に惹きつけられるのか。昨今、ドラマや映画、小説などで、悪役は時に主人公を凌ぐほどの魅力をはなつことが少なくない。そして江戸を生きた人々も、すでにこの「悪」の持つ底知れぬ魅力に気付いていたようである。 例えば、世間を騒がせた大盗賊が市中引き回しになると、その姿を一目見ようと街道は群衆で埋め尽くされた。また、「元禄赤穂事件」などの大事件はすぐに芝居にも移され、吉良上野介は稀代の悪人としてのイメージを定着させていく。幕末には、盗賊が登場する「白浪物」の芝居が流行し、盗賊や小悪党が人気を呼んだ。当時の人たちは現実、虚構を問わず、「悪」の持つ魅力に好奇心を抱き、時に酔いしれたのだ。 さまざまな悪人たちのイメージを描かれた浮世絵から探る本展覧会は、2015年に開催して好評を博した同名の展覧会のパワーアップ版。盗賊や侠客、浪人に悪の権力者、悪女、悪の妖術使いなど、実在した悪人から物語に登